リャンシャンテとステータス
貿易都市リャンシャンテは、大きかった。
ゴツい城壁に囲まれた都市内には、様々な建築様式の建物が所狭しと建ち並び、その隙間を色んな種族のな老若男女が行き来している。少し広めにとられた道には荷車が往来し、カラフルな屋台が色合いを増やす。
そして、その向こうには海。
港に船、船、船。
面積だけを言ったら、帝都の方が広いのかもしれない。でも、ここは何と言うか、大きい。
もしも、多様性が大きさに関係するとしたら、帝都よりも大きく、そして深い。
そんな感覚の街である。
「ジャム、私らは商会に顔を出してから、ギルドに行く。ジャクダウらと先に冒険者ギルドに行っといてくれ。後でまた合流しよう」
そう言われて、ラチェア、バーント、ヘンリスの三人と別れ、ジャクダウ、カリハとの三人で冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドは、都市内に三ヶ所あり、そのうちの港地区というのが、皆のメインギルドらしい。
ちなみに、ラチェアらが向かった『マイコス・グランバートル商会』も港地区にあるので、そう離れていることはない。
冒険者ギルドは、やけに入口が広い、煉瓦造りの建物。
中は、正面奥に長いカウンターがあり、右手には酒を出す飲食スペース。左手の入口近くには色んな紙が貼り付けられた数枚のパーテーション。パーテーションの横、カウンターとの間には、奥に続く通路がある。
「よう、ジャクダウ。久しぶりだな」
「ジャクダウ、マドゥが寂しそうにしてたが、合ったのか?」
「ジャクダウ、ラチェアはどうした」
「カリハ、胸は大きくなったか?」
飲食スペースからテンプレな声がかかるが、ジャクダウは、無視してカウンターへ。
ギルド員と思しき真面目そうな牛の獣人男性に声をかける。
「魔石と討伐部位の換金。それとコイツの新規登録願うわ。あっ、コイツ文無しやから、コイツの魔石も換金して登録料に充てたって」
ジャクダウの言葉に続くように、カリハがバックパックから大量の魔石とゴブリンの耳やら、コボルトの犬歯やらの討伐部位を出したので、僕も魔石の詰まった腰袋をカウンターに置いた。
「ほな、ウチは石を下ろしたいさかい、貸倉庫の鍵貸してや」
カリハはギルド職員の出した鍵を手に、奥に続く通路の向こうに行ってしまった。
俺等がマテリアル、鉱石を集めてるの知ってるよな。重いし、場所もとるからギルドの貸倉庫の一室借りてんのや。と、換金待ちの間にジャクダウが教えてくれた。
牛獣人のギルド員がお金を持ってくると、ジャクダウは貸倉庫の方、僕は職員に促されるまま、左の受付カウンターに移動する。
「お嬢ちゃん、冒険者登録は十二才以上なのよ」
愛想の良いお姉さんが、カウンター越しに衝撃(笑撃)の一言を発した。
僕は男。十五だ。
何となく、こんな事になるとは思っていた。
確かに僕は、童顔で小柄だ。女の子に見えないこともない事を知っている。
ジャクダウかカリハがいてくれれば、説明してもらえるのに……って、奴ら、通路の影からこっち見てるじゃないか。
そういえば、カリハが貸倉庫に行く時、ちょっと薄ら笑いしてたし、ジャクダウも急いであっちに行った。確信犯!確信犯だあいつら、僕が年少の女の子に勘違いされるって分かってたんだ。くそっ、あの笑顔を殴りたい。
まてよ、奴らがあそこで見てるって事は…………。
いたっ!
飲食スペースの奥、変装してやがる。
いつの間に……?
って、その変装、付け髭付けただけじゃん。
バーントはまだ分かる。
ラチェア、貴女まで髭を付けるだけの変装って、何?
ヘンリス、貴方、髭オン髭。それ、ただのスゴイ髭の人。
「悪い、やっぱりそういう反応になるよな、アンナ」
近寄ってきたラチェアが、受付の愛想の良いお姉さんに声をかけた。
お姉さん、アンナっていうのか。って、ラチェアさん髭付けたまま。
「って、えっ、ラチェアさん?変装してるから分かりませんでした」
えっ?
あの変装で?
髭付けただけですよ。
ラチェアさんも、何?そのドヤ顔。
という、僕の驚きは、そのままスルーされて、話が進んでいく。
「いやぁ、この子が男ってのは間違いないんだが、正直、年齢については自信がない。私が出すから、ステータス確認してもらえるか?」
ラチェアは、そう言って、銀貨を一枚カウンターに置いた。
あ〜、まだ僕の年齢を信じてくれていなかったんですね……。という、僕の驚きは、又もそのままスルー。
アンナは銀貨を受け取ると、カウンター奥から一枚の板を取り出すと、黒く塗った四角い紙の上に、硝子のようなその板をセットした。
「はい、この板の上に手を置いてください」
話では聞いたことがあった。人の能力を数字化して表す『ステータスオープン』という魔道具があるという。確か、転生者の一人が開発したという噂。
僕は、流行る心を抑えながら、ゆっくりと右手を置いた。
【昊ノ燈です】
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