動き出した■■■
「こちらに急に魔法が使えなくなった方がいらっしゃるとお聞きしたのですが」
エンファ家の門を叩く者がいた。
執事から報告を受けたチクナルデルが話を聞いている。
「そのお方は、何処に?」
旅装束の男だ。質の高い生地、手の込んだ飾り具から、高位の冒険者?何れかの貴族か豪商に連なる者だろうか?
後ろに控える、鮮やかな桃色の前閉じのローブを羽織った女を見て、冒険者という可能性を消す。
あのように目立つ色を着た冒険者など存在するはずがない。
「そもそも、お前達は何者だ」
チクナルデルの苛立ちを含んだ質問に、男は一歩近寄り、声を顰める。
「商会です」
「商会?」
「そう、商会です。これ以上言わせますか?」
「い、いやいい。そうか商会か……」
「はい、ハルと申します。そして、後ろに控えるのがナツ。それで、お尋ねしている件ですが?」
「私の義弟だ。ジャリムスという。奴は死んだ。四日前だ。病─」
「病死ではないですよね」
言葉を遮ったのは、ナツと呼ばれた女。
すいませんねと、ハルが言う。
「すいません、ナツは少々鼻が良いもので」
「病死ではないですね。噂では魔力値が六千オーバーと聞いています。ですが、この邸からそんな魔力の残滓が匂ってきません」
「魔力の残滓?匂い?」
「ええ、ナツはその場に残る魔力の跡を嗅ぐことができるんですよ。特に、死んだ後に残る匂いを。魔力が高い者程、匂いが強いらしく、六千も有れば、十日程は消えないらしいんですよ」
「あ、あぁ…………」
チクナルデルは言い淀んだ。
彼にとっても気になる点があったので、正直に言う事にする。
「──で、ヒナギ山に家の者が遺体の回収に行ったのだが、ジャリムスの死体は無かった」
通常、魔力の高い遺体を食べると、高確率で変異する。獣は魔獣へ、魔獣は高位の魔獣へと。しかし、ヒナギ山にそのような目撃例は上がっていない。もし、縦穴に落ちていたとしても、ダンジョンの変化も聞いていない。
ジャリムスは生きているのではないか?
それが、彼の思うところであった。
「その山に行ってみませんか?」
ハルの誘いにチクナルデルが乗り、ヒナギ山へとむかう。
「やっぱり。ここに残る魔力の残滓からして、せいぜい百程度。死後四日経ってるといっても、魔力値六千の化物は、ここで死んでいない」
ナツは、きっぱりと言い切った。
チクナルデルの疑問は確信に変わる。
ジャリムスを見つける!
自分の左目が見えなくなったのも、執事長か死んでしまったのも、全てジャリムスのせい。
チクナルデルは、自身の心をシフトした。
それが逆恨みだとしても…………。
◇◇◇◇◇
チクナルデルと別れた、ハルとナツ。
「ところで、ハル。商会って何?」
「さぁ、とりあえず、それっぽいだろ」
「ふ〜ん。やっぱり『とりあえず』か」
「だって、あのボンボン、プライドだけの馬鹿っぽかったし」
「確かに〜〜」
◇◇◇◇◇
やっぱりチクナルデルも思っていた。
商会ってなんだろう?
【昊ノ燈です】
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