俺も男 バーントも男
第一宿場町で一泊。
室内には、簡素なベッドとデスクが一つ。前世の記憶で言うところのビジネスホテルに近い気がする。木製の粗末な物であるが、素泊りとしては十分過ぎるだろう。そもそも僕はお金を持ってない。全てラチェアたちの好意に甘えている状態。
ラチェアに言うと、世話になったと思うなら、生き残って後輩ができた時に助けてやれと言われた。
『pay it forward』そんな言葉を思い出す。
帝都の一部しか知らなかった僕だけど、世界は意外と優しいのかもしれない。
「思春期の男子諸君、俺は行ってくる。お前等は一人部屋でシコシコやってろよ。バイバ~イ」
晩飯の後、程好く酔っ払ったバーントが一人でフラフラと宿を出ていった。
バーントは酔うといっつもアレだ、ヘンリスはそんな事を言いながら、ラチェアと酒を傾けている。
早々と部屋に帰ったジャクダウとカリハ。
僕も部屋に帰る。
することもなく、窓から見える町並みを眺める。
帝都とは違う町並み。
帝都では見る事がなかった獣人の姿もチラホラと現れてくる。帝都にも奴隷として獣人がいるというのは聞いたことがあったが、僕は見たことがない。スラムに行けば、いたのだろうか?
ふと気が付けば『一人』。
帝都のエンファ家にいた時も大抵一人だったが、それでも、死んじゃう前までは母もいたし、意地悪をしてくる人達もいた。良くも悪くも僕を気にする人がいたのだ。
でも、今は一人だ。
ラチェアもヘンリスもバーントも良い人、ジャクダウもカリハも何だかんだとかまってくれる。でも、本来は僕と関係ない人。いつか別れの日がきたら、僕は忘れられるのだろう。
独り…………。
例えようのない寂しさに締め付けられた時、お腹から込み上げてくる物があった。
肉。
胃液に混ざった肉の脂が口まで返る。
奴隷だった頃は、肉なんて食べることはなかった。
エンファ家の一員になってからも、肉が出ることはなかった。もっぱらが薬草料理。高い魔力値の僕は、より魔力を高める為と薬草ばかり食べさされていた。おそらく、敷地内の雑草も多く使われてたのだろう、食事は苦いものだと思っていた。
味気なくも、一日中魔法を使わされ、魔力のすり減った身体に魔力が満ちてくるのが分かる、そんな食事。体を作ることはなく、ただ魔力を回復する為だけの食事。
あ〜、夢にまでみた肉なのに………。
温かくって熱くって、口の中でとろける柔らかさだったり、ガツンと顎にくる硬さだったりする肉。
生命を食べてるって身体中で感じる肉。
それなのに…………。
「草ばかりで造られた僕の身体が、今更肉を消化することなんてできるはずがないよな……」
そんな事が口から漏れた時、扉をノックする音が聞こえた。
「俺、もう済んだから……コレ」
顔を伏せながら一冊の薄い本を差し出したジャクダウ。
何か分からずに、とりあえずお礼を言うと、彼はサッと自分な部屋に帰っていった。
ベッドに座って本を見ると、各ページに裸の女の人が色んなポーズ…………。
僕も男なんだな…………って、夜だった。
【昊ノ燈です】
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