ゴーレムと少年
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砂煙を上げ、兵達が進む。
進路をトラルディン半島に向ける帝国所属のカルナバ領軍である。
『ゲルン人による民族浄化』を旗頭に進んでいく隊は、大馬を駆る騎馬隊、光り輝く重装歩兵隊、身の丈の倍はあろうかという槍を持った歩兵隊、豪奢なローブを纏った魔法兵団諸々が列をなし、街道沿いの町々、村々に威力を見せつけていた。
民家を見なくなって久しい。
トラルディン半島への入口であるアズレア峡谷を通過すれば、トラルディオ国の領域は間もなくである。
兵達は、これから始まるであろう戦闘という名の虐殺に武器を持つ手に力を込める。
隊を預かるマックマーラも同様であった。
異民族の町をニつ程落として帰れば良いだけ、威光を見せるための進軍である。他国領と言っても、前線となるのはまだ先。兵の損害も予想されない、略奪し放題の簡単な仕事。
これから奴隷となるであろう数多の異民族の女達を想像すると、マックマーラの下半身に自然と力が込み上げてくる。
「隊長。前方に人がー」
部下からの声は、峡谷の出口付近に敵兵とみられる鉄騎士が現れたと言うものであった。
「人数は?」
「それが……一人です」
マックマーラの口角が上がる。
異民族の蛮勇か。我が隊に一人で挑もうとは、身の程知らずが。
「蹴散らせ。我が隊の残虐さを異民族に教える前哨戦だ」
「はっ!」
部下は敬礼し、各部隊に隊長の言葉を伝える。
暫くの時間が流れた。
前方からの剣戟の音は消えることなく聞こえてくる。
この暫くの時間の内に、長細い隊列は渋滞を極め、峡谷内に丸く収まってしまっていた。
「異民族一人に何をしている!魔道具士、鑑定だ」
隊長マックマーラの怒号に、ローブを纏った小柄な男が望遠鏡に似た、幾つものコードが繋がれた筒のような道具に金属プレートと魔石をセットし、人梯子の上から異民族の鉄騎士をターゲットに据えた。
「外部魔力ー無し。保有魔力ー十二万。生体反応無し。─────ゴーレムです」
声と共に金属プレートを手渡されたマックマーラは、飾りの付いた豪奢な望遠鏡を取り出し、ゴーレムと呼ばれた鉄騎士を見る。
鉄とも、ミスリル銀とも、アダマンタイトとも違う滑らかで鏡面の如く輝く軽装騎士が凄まじい速さで兵達の攻撃を受け止め、流している。
そして、手にするのは、特異な盾。小型な円盾の上下から伸びる真直な動物の角。
「マドゥ…………」
マックマーラは、その盾の名を呟いていた。
そして、それはあのゴーレムの通り名でもあった。
「や、奴がいると言う事は…………はっ…………総員退避!罠だ。に──」
瞬間、峡谷内を無数の蒼白い線が走った。
至る所に現れた小さな魔法陣より蜘蛛の糸のような細く蒼白い光線が張り巡らされていた。
マックマーラの身体にも夥しい線が貫通している。
「皆、動くな!」
そう言った横では、動いてしまった兵が線により切断され、無数の肉塊となっていた。
幸いにも動きを止めて、細切れを免れた者達は、さらなる地獄を見ることになる。
「も、燃える……か……体が…………」
──ボフッ
「あ……手……手が…………」
──ボトッ ──ボフッ
「ア……アアァ…………」
──ボフッ
マックマーラの前で、後ろで、横で兵達が切り刻まれ、蒼白い炎に包まれていく。
動きを止めた彼の身体も、線により焼かれている。
「こ、これは火魔法なのか?」
呟いた彼の前に、一人の少年が。
「御名答」
少年の伸ばした左手には、手の平ほどの魔法陣が浮かぶ。
──シュッ
蒼白い光がマックマーラの眉間を貫いた。
少年は背伸びをすると、笑顔をゴーレムのマドゥに向ける。
少年の名は、ジャム。
額の左から伸びる細長い角、鮮血のような真紅の眼球結膜(白目)と、橄欖石のような金色がかった鮮やかな黄緑色の瞳を持つ、魔族である。
ジャムは、近寄ってきたマドゥの胸に軽く拳を当てると、目を細めながら言った。
「さぁ行こう、相棒」
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