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3.真相

 それから10分後。どうにか拝み倒して悠璃さんから横内氏に連絡をとってもらえることになった。


 もちろん悠璃さんは「何故そんなことしなきゃならないんですか」と渋ったし、紅美さんも「どうしてもと言うなら理由を説明してください」と悠璃さんを援護した。


 しかし、南山田先輩が「瀬川君が言うからには必要なことなんじゃろう。ここはどうにか協力してもらえんじゃろうか」と2人を説得してくれた。

 毎度思うんだけどこの先輩の熱意や信頼が人を動かすんだろうなあ。


「あ……すみません、横内先輩、ですか……」


「ああ、何かあったの、悠璃ちゃん」


 音声はスピーカー状態にしてもらっているので2人の会話は僕らにも聞こえている。


「あの、えっと、私の友達のお兄さんの友達が先輩に聞きたいことがあるって……」


「は?え?」


 相手が戸惑っている間に悠璃さんからスマホを受け取る。


「初めまして、瀬川と申します。突然に済みません。実は今日、悠璃さんがバイトの帰りに10万円ほど拾ったんですが、貴方が帰る際にその10万円を見かけてないかお伺いしたかったんですが」


「さあ、見てませんけど」


「何を見てないんです?」


 喰い気味の横内氏の返答に更に疑問をぶつけた。


「ハア?貴方が今言った10万円……」


「10万円って10枚の万札がむき出しでそこら辺に落ちてたとでも?お札って財布やバッグや封筒とかに入っていると思うのが普通じゃないですか?僕はその入れ物について何も言ってませんが。貴方は『何を見なかった』んです?


「!……」


「悠璃さんが見つけたのは10万円金貨1枚と他の小銭が数枚でした。10万円金貨って普通小銭と一緒にしないですよね。専用のケースに保管したりとか。でも例えば、そう、募金箱に寄付金として入れた場合には一緒になりますね」


「……」


「レジの中間点検でお金が不足していることに気付いたんでしょうか。

 しかし、たまたま今日の貴方の持ち合わせでは不足分に丁度合う金額の小銭が無く、ポケットマネーでの埋め合わせはできなかったのでしょう。

 そこで募金用のペットボトルから小銭を出してそれで不足分を補おうとした。

 あの店の募金用ペットボトルはカウンターの端にあり、恐らく防犯カメラのフレームから外れているでしょう。

 シフトの終了間際に一人になった際、ペットボトルから小銭を出して手に持ち、レジの最終点検をする際に体で監視カメラから死角をつくり、レジに不足分の小銭を足した」


「……」


「ペットボトルは入金口が狭く、必要な小銭だけを取り出すのは難しい。

 だからペットボトルを斜めに傾けて多めに小銭を出し、不足分をレジに足す作業を優先して、余った小銭は取り敢えずポケットに入れた。

 余程大きな音を立てなければBGMでかき消されて防犯カメラの記録にも残らないと踏んだのでしょう。

 しかし、次のシフトの店員が来てしまい、余りをペットボトルに戻せなくなってしまった。

 ところで、貴方はその余った小銭の中に10万円金貨らしきものが混ざっているのに気付いていた。

 あのペットボトルには募金趣旨説明の紙が貼り付けられていて、取り出す前はそんなものが入っていることを知らなかった。

 小銭程度ならともかく、10万円を超える不正の証拠なんて早く処分してしまいたい。

 しかし、お客さんは少なくても、店の周辺は往来も多く、硬貨を隠すような不審な行動は取りにくい。

 だから貴方は店の側面の自販機でドリンクを購入し、その際に余りの硬貨も投入することで周囲の不審を買うことなく証拠を手放した」


「……」


「僕らはこれからこの硬貨を警察に届けなきゃなりません。

 僕が今の推測を口にいしなくても、状況から警察も同じ疑いを持つでしょう。

 そして、本来釣銭として自販機内に準備されてない金貨、5円玉、1円玉は当然貴方の投入したものが直接釣銭受けに落ちてきているわけですから、警察であればそれらに付いた貴方の指紋を採取することも可能です。

 また、貴方がレジの最終点検をした際の映像も確認されるでしょう。

 肝心な部分は隠しているでしょうが、全く不審に見えない演技ができていた自信はありますか?」


 ここで南山田先輩にスマホを渡す。先輩は一瞬『え!?ワシ?』みたいな顔をしたが、すぐに自分が求められている役割に気付いて話し出した。


「あ~、悠璃ちゃんの友人の兄で南山田という者じゃ。横内君、じゃったか。レジの金額が合わずに焦ってしまったんじゃろ?オーナーさんは君の親戚だそうじゃし、優しそうな人じゃった。正直に話せば分かってくれるんじゃなかろうか?警察が入ってしまえばどうしても話が大きくなってしまう。これも乗りかかった船、ワシらの証言などが必要ならできるだけの助力はしようと思っておる。今からでもオーナーさんに打ち明けて相談してみてはどうじゃろうか」


「…………はい、今から店に連絡してオーナーに話してみます。済みませんでした」


 長い沈黙の後に彼はそう返答した。


 ◇◆◇


 その後、店に到着した横内氏と南山田先輩と僕とで硬貨を見せながら説明した。


 店に入る前に僕から横内氏に「事実がバレてしまったからじゃなくて自主的にオーナーに話しにきたことにしてはどうか」と提案したのだが、彼は正直に全て話し、謝罪することを選択した。


 謝罪した横内氏にオーナーの五代さんは『お客様の善意を踏みにじってはいけない』と注意はしたが、これまで真面目に勤めてくれてもおり、お金が合わないことに焦った気持ちも解ると言って、これまで通りバイトを続けることを許してくれた。


 なお、悠璃さんの分のお釣りである20円を除く100277円をオーナーさんに返却したわけだが、「この金貨どうするんですか?」と聞いたら「偽物かもしれないし、とりあえず警察に届けるよ」とのことだった。


 話が済んだ後、表で待っていた悠璃さんと紅美さんに結果を伝えると2人とも喜んでくれた。


 横内氏は2人を巻き込んでしまったことをしきりに謝っていたが、2人とも「気にしないでください」と笑顔で返していた。

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