スーパーボールはどこへ行く
彼の家で、くつろいでいる私達。
まだギタリストと、ドラマーが来ていない。
彼の方を見ると、先週からいる巨大花に水をあげていた。
スーパーボールを弄っているボーカル。
ベースの調整をしているベーシスト。
そんな風景を私が把握している時、突然玄関のドアが開いて誰かが飛び込んできた。
「やったっ」
強い音を出して閉まるドアに、背中をあずけ、ずるずると虚脱していくギタリスト。
「お帰り~」
「どったの?」
「まいてきたっ・・・」
「どったのよ?」
「魚が歩いた」
『「は?」』
「魚が道路、歩い、て、たっ」
「何言ってるの?」
「ちょっといいですか、って声かけられたっ」
「ファン?」
「魚がっ?」
「ほほ~・・・とうとう魚まで」
「なんで冷静やねんっ」
合図をしてスーパーボールを床に投げるボーカル。
床に跳ねたボールを掴むベーシスト。
「それよりね、このスーパーボール、いつも二階の窓辺から顔を出して外見てるここの近所のおばぁちゃんからもらったの。なんかイベントしてるってさ」
「イベントって?」
「坂の上から万単位のスーパーボールとカラーボール転がしたんだってさ。見たかった」
「で、その時のボール?」
「みたいよ」
「え、二階の窓辺から投げられの?」
「追いかけてる間に、ここまでの道のり半分は走った気がするよ」
「は~・・・スッキリした」
トイレから出てきたのは、足の生えた魚。
「こーいーつーだぁーーーーーーっ」
足の生えた魚を指差して、叫ぶギタリスト。
「ん?ああっ、さっきのっ。どうも、どうも」
へこへこと頭をさげる足の生えた魚。
腕も生えていて、何を照れているのか頭をかいている。
「ひとに指差したらいけないよ」
「あっ、すまんっ・・・・」
指を隠すギタリスト。
そして数秒の間。
「ひとやないーーーーっ」
「わたくし、人魚です」
『「何ーーーーーっ?」』
みんなが足の生えた魚を見る。
「嘘です」
『「なにーーーっ?」』
すぐに冷静になるギタリスト。
「仕事何してるの?」
「あ。営業です」
「なんや」
「なに、その反応っ?」
「なんでそれでホッとできるっ?」
「僕達職種聞いた時が一番驚いたのに・・・」
数秒の間。
ギタリストの叫び。
「何でここにおんねんっ?」
「え、偶然です。トイレしたくなって」
「ああ、なんだ・・・」
「何をそんなにドギマギしているの?」
「皆の冷静さの意味が分からない・・・ってか、何の用で俺に話しかけたっ?」
「ああ、スーパーボールあげようと思って。近くでイベントやってたんですよ」
「なんで五百メートルくらい追いかけたっ?」
「ひ・み・つ」
近くに置いてあったハリセンを手にして、ツッコミ的攻撃をしようとするギタリスト。
「あ、誰か来ますよ」
「俺、無視っ?」
チャイムが鳴る。
「わたくしが・・・出ましょうか?」
「いいっ」
一番玄関に近いギタリストが玄関のドアを開ける。
そこにいたのは、取っ手用の穴が開いている木箱を持ったドラマー。
「どうやってベル鳴らしたん?」
「頭突き」
「ほ~・・・」
「ここらへん通ってたら、なんかのイベントでカラーボールとスーパーボールがやたら落ちてた。みんなで遊ぼ」
『「おぉ~」』
「魚人、おるで」
「何っ?」
ドラマーが部屋に入ってくる。
「あ、先鋒さん・・・」
「あっ、その節はどうもっ」
『「しーりーあーいーっ?」』
「僕達に目ぇ、かけてくれてるところのひとだよ」
『「ええっ?」』
「いやぁ、どうもどうも」
魚人は何が照れくさいのか、頭をかいた。