エス・エス・エス
深呼吸。
意を決して、とある部屋のチャイムを押す私。
「はいはーい。なんだ、いつもよりちょっと早め・・・あれ?」
出てきたのは、美青年。
彼は一拍後、ああ、という顔をした。
「さっきの」
「はいっ、あの、さっきはありがとうございました」
「見ない顔だけど?」
「今日、この棟に引っ越してきたんです。よろしくお願いします。これ・・・」
「ん?」
持っていた菓子折りを差し出す。
「ありーがーとー。ちょうどおやつにしようと思ってたんだ」
受け取ろうとする彼。
しかし、菓子折りがひょいと宙に浮いて消えたかのような錯覚。
「これ、タオルじゃないよね?」
「え?」
うしろを振り向く私。
そこには、いつの間にか四人の青年。
「これ、タオル?」
「違います。お菓子です」
「やったー♪いただきまーす」
「はい。入って~」
「うわっ」
背中をぽんと押され、よろめく。
彼に支えてもらう。
「大丈夫?」
「あはは・・・」
彼の家に次々と入ってくる青年四人。
「このこ、どこの子?」
「今日、この棟に引っ越してきました」
「ああ、僕達は通いで来てる」
「そうなんですか」
四番目に側を通り過ぎるひとが言った。
「目がハートになってるよ~」
「えぇっ?」
目を隠す私。
ニヒルな笑みを浮かべ、四番目に通ったひとは言う。
「さては、『ホ』の字ですな?」
「えっ・・・いや、あのっ・・・そうです今、命の恩人さんを目の前に、ドッキドッキしてます」
「どういうこと?」
彼が答える。
「さっき階段で転びそうになってたとこに遭遇したんだ」
「ああ、それで助けた、と」
「はいっ。なので、引越しの挨拶をかねて、お礼に、と・・・」
「なるほどね~」
「早く座れば?」
「そうそう」
彼が言う。
「よかったら、一緒にお茶なんてどう?」
「えっ・・・」
「入って、入って」
腕をぐい、っと引っ張られ、私がターンしている間にドアを閉める彼。
「この棟は芸術家志望多いけど、君もなの?」
「はいっ」
「よろしくね~」
「よろしくお願いします。先輩」
彼は口元を上げる。
「この部屋が僕の家で、週に一回くらいのペースで、彼らとおやつをしてるんだ。時々不思議なお客さんがくるから、こういう出会いは大歓迎なのさ」
「不思議なお客?」
「そう。君みたいな、ね?」
CGで現れた胸元のハートに、矢が刺さる。
その矢を引き抜き、恋心を隠したいがばかりに勢いを付けてどこかに投げる私。
砲丸投げの祈念のように、叫ぶ。
無理やり、自分の方に向かせる彼。
「さて、一緒にお茶をするにあたり、君が何者なのか知りたい」
「あ、自己紹介ですか?」
「ご趣味は?」
「テレビの上にこけし的なものを乗せることです」
「まだアナログ?」
「まさか、デジタルです」
動揺した彼がデジタルテレビのだいたいの薄さを手で再現。
私もだいたい同じ幅をつくって、うなずく。
「そ・ん・な・こ・と・よ・り♪」
「あ、おやつの時間っ」
「はーやくぅ~」
「そうだった。その前に、オープニングコールをしようっ」
「賛成☆」
「どこで?」
「部屋の真ん中」
「オーケー」
彼がこちらを向く。
「君ももう、おやつメンバーね?」
「はいっ」
部屋にいる全員が、部屋の真ん中あたり・・・一台のカメラにおさまるように立つ。
私が言う。
「オープニング・コールっ」
全員で視聴者に向かって声を合わせる。
『「スペシャル・スウィート・ソングっ」』
スタッフさんが、画面にアップでいきなり出てくる。
「この番組タイトルの別の呼び方は~?」
『「エス・エス・エスっ」』
スタッフさんがはける。
カメラアングルが、斜め上になる。
いつの間にかスタッフさん全員くらいが、画面の中にいる。
『「はーじまーるよーっ」』
オープニング・メモリアル・メロディーが鳴る。
(※【わざとNG集】の回のために、第一話から別撮り欲しいです。
たとえば、「はーじまーらーなーい(笑)」とか。)
はじまっちゃいました!
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