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先輩ネタ多すぎです  作者: 阿垣太郎
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ラフティング

自然の力はすごいです。

大学三年の時であった。私は、利根川の上流で行われるラフティング(ゴムボートで激流を下る)の大会の練習のために探検部のメンバーと群馬県水上町にやってきた。

 その年は降雪量が多く、雪解け水で一、二年の時よりも川の水量が豊かであった。当然、例年であれば何でもない場所でも波が高く、川下りの難易度が増していた。

 練習用のボートは四人乗りで、私はファーストアタックで左の前衛として搭乗した。左の後衛はOBのSさんだった。

 実際に川に入ってみると、その荒々しさは予想以上であった。例年はざぶんざぶんと難なく乗り越えられた石畳の波は、ボート前に壁のように何重にも立ちはだかっていた。

 そして、何とかいくつもの難所を突破して、最大の難所である諏訪峡にたどり着いた。大岩によって川幅が狭まり滝のようになった諏訪峡は、圧倒的なパワーでボートを勢いよく一段下の水面に叩きつけた。私は大自然の強烈な洗礼に弾き飛ばされ、ボートから川の中に転落した。

 私はライフジャケットを着ていたが、川底にぐいぐい引きずり込まれた。きらきら光る水面に浮かび上がろうと、必死にもがいていると、手がギリギリ届くところにSさんのパドルが杜子春の蜘蛛の糸の如く現れた。私は水中に差し入れられたSさんのパドルに両手でしがみついた。

Sさんが、あまりの重さにバドルを手離してしまえば万事休すである。だが、Sさんはパドルを手離さなかった。川底に引きずり込もうとする力と、ボートを押し流す川の流れの攻めぎ合いの狭間で、ボートに引きずられるように私は水底から釣り上げられた。私は、間一髪で川から生還できた。

だが、次のアタックで私と同じポジションに乗船した同期のK村は、諏訪峡の前の石畳の波で、一人だけ落水してしまった。そしてボートより先に、ライフジャケットだけで諏訪峡を落下して、川に飲み込まれてしまった。十分ほどして三十メートル程下流に浮かび上がったので、岸辺に上げて心配蘇生をしたが帰らぬ人となった。

 私を川底に引きずり込もうとした力は、一人の人間では抗えないパワーだった。もし、目の前にパドルが現れなかったら、私はK村と同じ運命をたどっていたことだろう。先に落ちた私が死んでいたら、次のアタックは中止になり、K村が死ぬことはなかっただろうが、私はここでも死ななかった。



心霊写真で川から手が伸びているのがあるらしいけど、本当に引き込まれる感じでした。

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