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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第4章再会とライバルの秋
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第75話本当のライバル 前編

「おかあさんはあの日、わたしが真相を知ったことにすごく怒っていました。経緯はどうあれ、私にだけは知ってほしくなかったって」


「それはさいしょの時言っていたね」


「でももうひとつりゆうがあったんです」


「りゆう?」


「わたしが未熟だから。教えたところでどうせ理解できないと」


「それは……」


俺も同じことを思っていたから何とも言えない。だからユリエル様の気持ちも理解できるし、それに反発したいユイの気持ちも分かる。


「たしかにわたしはまだまだ小さい子供です。ですが、こどものままではないところをおかあさんに見せたいんです」


「べつにそれが明日ではなくてもいいのに」


「じかんがないんですよ。おかあさんだってそれを分かっているはずなのに」


「あっ」


「この言葉のいみわかりますよね。おかあさんに時間がないんです」


『だからわたしも戦いにまぜてください』ユイはそう言った。


「おねがいしますセフィちゃん。わたしに協力してください」


「……ユイがそこまで言うならわかったよ。ただしわたしもアリエッテもどこまでやるか分からないから、保証だけはできないよ」


「もちろんその覚悟です」


という経緯で二人だけの予定だった決闘はユイも参戦することとなったのだが。


「そんなの反対に決まっているじゃないですか」


肝心の判断を頼もうとしたスイカさんにやはり断られてしまう。


「そんなどれくらいの怪我をするかも分からない戦いの許可なんて、できるわけないじゃないですか」


「そう、ですよね」


かなりの無茶なのは分かっていたけど、アリエッテやユイの気持ちを汲むとどうしても引き下がれない。


「どうしても引き下がらないんですか?」


「アリエッテやユイの気持ちを知っちゃったし、ここで逃げることはできないんです」


「ほんき、なんですね?」


「はい。ただ大怪我とかはしない範囲でやりますので、どうか許可してくれませんか?」


俺とユイで頭を下げる。スイカさんはそんな俺達をしばらく見つめ、少し考えた後やれやれとため息吐いた。


「このまま私が反対し続けても、無理矢理やりそうですし分かりました。許可をします。その代わりもし私が危険を感じたら止めますからね」


「ありがとうございます、スイカさん」


「......本当、怪我だけは絶対にしないでくださいね。ユシスさんに後から絶対に言われるので」


「気をつけます」


■□■□■□

こうして色々な準備が整い、当日を迎えた俺達。


「ユイちゃんがその気なら、あたしは止めないけどどうなっても知らないよ?」


「わたしは本気ですよアリエッテちゃん。わたしはこれでも聖女の娘です、それなりの力があると思っています」


ユイはそう言うと何かの本を取り出す。


「わたしはセフィちゃんたちのように無詠唱でまほうは使えません。だからこの魔導書をたよります」


本のページを捲りながら、魔法の詠唱を始めるユイ。


「ちょ、ちょっと、ユイちゃん。まだ戦いの合図をしてない」


「じゃあ始めましょう。セフィちゃん、アリエッテちゃん」


ユイが準備万端な以上、こちらも迎え撃たなければならない。


「って、ちょっとまっユイ、その大きさはなに?」


「わたしのまほうですけど?」


「そ、そうじゃなくてそれはいくらあたし達でも」


セフィとアリエッテが準備を整えている間にユイが準備していたのは、ざっと半径一メートル近くある火の球体。


(デカすぎんだろ)


「挨拶がわりに、わたしのまほう受け取ってください!」


「ちょ、まって、ユイ」


「いきます!」


有無も言わさずユイはその火の球体を俺達に投げてくる。


(と、とりあえず水の守りを使って、防ぐしかない)


俺はとっさに水の防御魔法を唱え、それの威力を吸収する。


「ぐっ」


何とか俺はその魔法を受け止めれるが、その衝撃で吹き飛ばされてしまう。


「セフィちゃん!」


「だ、だいじょうぶですかセフィちゃん」


「敵の心配するより、自分の心配の心配したほうがいいよ、二人とも」


衝撃を受けきったアリエッテ、そしてユイの足元に水溜まり場ができる。


「ちょっと痺れるけど、我慢してね!」


そしてその水溜まり場に雷の魔法を通す。


「感電ちゅうい!」


「「きゃぁああ!」」


二人の悲鳴が上がる。勿論本気の魔法ではないので、大きなダメージは与えていないが、俺の狙いは別にある。


「か、からだが痺れますぅぅ」


「こ、ここまでが狙いなのね。でも予測ずみ」


痺れてしばらく動けないユイとは正反対に、痺れた様子があまり見られないアリエッテ。


「聖女の卵らしく、自分の状態異常はじぶんでかいじょしないとね」


そういって立ち上がるアリエッテ。


「これはまだ挨拶程度だよアリエッテ」


「あたしもなにもしてないし、本番はここからだよセフィちゃん」


二人で向き合いお互いに次の動きを探る。


(まだまだ覚えたての魔法じゃ、効果はないか。でもこれくらいh俺も予想ずみ。問題は)


まだ見ぬアリエッテの魔法を受けきれるか。


「セフィちゃん、あたしねすごくショックだったんだよ」


「ショック?」


「いまのあたしと互角に戦えるのはセフィちゃんだけだから、本物のライバルになれると思っていたの」


「......」


「それなのにセフィちゃんがほんとうはズルしていたなんて知って、すごくショックだった。対等な立場の相手がそんなそんざいだったなんて」


「ごめん......」


「あやまらないで。セフィちゃんにだってちゃんとした事情があるのは分かっているから。だから」


正面に立つアリエッテから急激な魔力の上昇を感じる。


(これは)


「あたしのほんきも、受け取って」

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