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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第4章再会とライバルの秋
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第74話エル・ロレアル 後編

「わたしをしらべる? どういうことなの?」


「そのままの意味だよセフィちゃん。だってセフィちゃんは聖女教会の計画で生まれた女の子なんでしょ?」


「なっ?!」


「なんでそれをって思ったでしょ。でももうそこまで知っているの、私たちは」


「私たち?」


 未だにエルの話が見えてこない。何故そこまで彼女が、いや、彼女達が知っているのか。


(教会の人間ならともかく、王都の人間が知っているのはおかしいよな)


「ねえエル。やっぱりおかしいよ、エルはいったい何者なの?」


「わたし? 私はエル·ロレアルって言う名前なの。ここまで言えばわかるかな?」


「ロレ、アル?」


 ロレアル


 その名前は王都の名前だ。つまり、そういう事なのだろう。


(これで違和感とか全部消えたな)


「王家の人?」


「そういうことかな。わたしはセフィちゃんにどうしても会いたかったから、騙しているつもりはなかったんだけど、ごめんね」


「そんな......謝られても」


 まだ出会って三日の関係だし、騙すもなにもまだ何も知らないわけで。


「このはなし、セフィちゃんと私だけの秘密にしてくれないかな」


「どうして?」


「このクラスに聖女の子供、ユイがいるでしょ? かのじょにはどうしても話せないの。だからお願い」


 頭を下げてくるエル。王族の子供が俺なんかに頭を下げたら、大問題に発展しかねないのだが、ここまで頼まれて俺も断れない。


「そこまで言うなら、協力するけど......そのうち私にも話してくれないかな。どうして私を、ううん、私たちを調べているのか」


「......わかった、約束する」


 こうして俺とエルの二人だけの約束を交わしたわけだが、果たしてこれでよかったのか。それは俺にも分からない。


 ■□■□■□

 エルと約束を交わした日の夜。


「じゃあ特になにもはなさなかったんですか?」


「うん」


 エルとの約束を破るわけにもいかないので、ユイに何度目か分からない嘘の報告をした。自分の布団の上で女座りをしながらユイはうーんと唸る。


「そういって、本当は何か隠していたりしませんよね?」


「も、もちろん」


「あからさまに動揺していますが、セフィちゃんをしんじますね」


 結構危なかったがここは何とか回避することに成功した。


(いやこれもう何度目だよ)


 学院に入学してから嘘が増えている気がする。そしてバレた時、周りを傷つけてしまっている。俺はこれをあと何回繰り返せばいいのか。


「とりあえずエルの事は、しばらくは置いておくしかないよ。それよりも別のもんだいがあるの」


「別のもんだい?」


「わたし、この週末にアリエッテに真剣勝負を挑まれちゃったの」


「しんけんしょうぶ、って本当に戦うってことですか?」


「うん。アリエッテが私といちどけっちゃくをつけたいって」


「けっちゃく......あっ、もしかして夏休みのときの」


「わたしがズルいってアリエッテは言ったの」


 そしてズルで聖女になろうとしているセフィを許せないと彼女は言った。


「アリエッテちゃんのきもち、分かりますよ私。あんな話を突然されたらズルだって誰だって思いますもん」


「ユイも、なんだ」


「だからって直接対決するというのはあまり良いこととは思えませんが」


「うん......」


 でも彼女が正面から挑んできた以上、


「それでもわたしは逃げないよ」


 俺はそれを受けなければならない。


(男の意地、いや全てを任された身として俺は逃げられない)


「そう思っているから、挑戦状をうけたんですよね?」


「アリエッテがその気持ちならわたしも受け止めないと。ここで逃げることなんてできないよ」


 俺はそう言って布団を頭まで被って目を瞑る。


「大きな力を持つ者同士がぶつかったらどうなるんでしょうか」


「わからないよ。もしかしたらお互い怪我をするかもしれない」


「わかっていて戦うんですか?」


「わかっていても戦うよ」


 最初俺が彼女をライバル視していたように、アリエッテもセフィの事をライバル視してくれた。


「私たちライバルみたいなものだし」


「ライバル......すこし羨ましいですね。私なんか力も何もないのに」


「そんなことないよ。ユイだって、ユイの力があるはずだよ」


「はず、なんですね」


 エル、いや王都が狙っているくらいなんだから、彼女にも何か秘めている力があると勝手に思っている。


「それにまだまだ私たちは先が長いんだから、ゆっくり見つけようよ」


「......」


 俺の言葉にユイは黙る。今彼女は何を思って、何を考えているのだろうか。


「セフィちゃん、ひとつ聞いてほしいことがあります」


「どうしたの?」


「わたしが家出したりゆう、おかあさんと話をしたことです」


 ■□■□■□

「いいですか三人とも、くれぐれも命の危険に関わるようなことだけはしないでくださいね」


 数日後。俺はアリエッテとの約束の日を迎えた。


「もちろんです。セフィちゃんとはこれからもライバルでいたいですから」


「アリエッテならそう言うと思っていたよ。だから私もアリエッテに全力で挑む」


 けどその戦いはセフィとアリエッテだけじゃない。


「わたしも、おかあさんに少しでも自分を見てもらうためにも、戦います」


 その中にユイの姿もあった。


「えっとセフィちゃん、話がちょっと違うんだけど」


「ごめんアリエッテ。でもユイがそうしたいって言ったの」


「ユイちゃんが?」


「セフィちゃんには既に話してありますが、わたしは自分の為に戦う理由があります」


「たたかうりゆう?」


「はい。わたしはここで二人にライバルの一人だとみとめてもらって、おかあさんに自分も聖女のこうほの一人と見てもらうんです!」




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