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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第4章再会とライバルの秋
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第73話エル・ロレアル 前編

「わたしが原因、ってまさか」


「はい。おかあさんと昨日いろいろ話をしたんです。計画のこととか、おかあさんのこととか。そしたらけんかになってしまって」


「わたしのせいでそんなことに......」


 俺が安易に計画のことを知ってしまって、それを話してしまったからこんなことになってしまったらしい。


(いくら自分の子供で、秘密は知られたくないよな......)


 つい先日、似たような一件があったからその気持ちはすごく分かるし、衝突する気持ちも分かる。


(けどそ原因を作ったのが俺なんて)


「せ、セフィちゃんは謝らないでください。私もお母さんのことをしろうとしましたし、それにいつかはこうなることじゃないですか」


「それはそうだけど」


 それでもやっぱり釈然としない。


(小学一年生が家出って余程だぞ)


 こっちの世界ではどうなのか分からないが、まだ幼いのに家でなんて普通は考えられない。


(この前ちょっと家出した自分が言うのもなんだけど)


「と、とにかく、数日でいいんです、わたしをセフィちゃんの家に泊めてもらえませんか? 学校のものとかはちゃんと持ってきたので、どうかお願いします」


 頭を下げてくるユイに、俺とスイカさんは目をあわせ頷く。


「幸いユシスさんもしばらく家に帰りませんし、ちゃんとユリエルとお話しすると約束できるなら、何日か泊っていいですよ」


「あ、ありがとうございます」


 こうしてユイが何日か我が家に泊まることになった。


 ■□■□■□

「ご迷惑おかけしてすいません、セフィちゃん」


「わたしは別にいいの。むしろわたしが原因みたいなところがあるから」


 その日の夜。セフィの部屋でユイと二人で眠ることになり、眠くなるまで色々話をしていた。


「さっきから、お互いあやまってばかりですね」


「たしかに。でもあやまらないと気がすまなくて」


「それはわたしもです。ですから、一度ここでこの話はおわりにしませんか?」


「うん、そうだね」


 お互いにどっちが悪いとかないって分かっているから譲り合ってしまう。けど今ユイがそう言ってくれたので、俺は別の話題を振ることにした。


「王都からの転校生、ですか」


「うん」


「なんというか不自然ですよね」


「やっぱりそうおもう?」


「はい。このじきに、そしてわたしたちの学年に、というのが不自然です」


「わたしも思ってた。不自然なところがおおいなって」


 ユイが言ったのもその一つだが、俺にはもう一つ不自然なことがある。


 それは俺が彼女がエルと気づくのに遅れた原因だ。


「一年前と今日会ったエル、なんというかぜんぶが違っていた」


「それは雰囲気とかではなくてですか?」


「髪型とか髪の色とか、ぜんぶ。まるであのときが嘘だったみたいに」


「うそ?」


 そしてその嘘が必要となる原因も何となく分かる。


「たとえばだけど、ユイが自分が聖女の娘だってかくすとき、どんなことをする?」


「そうですね......名前を変えたり、服、髪型をかえたり......あっ」


「そう、変装、するよね?」


 ■□■□■□

「お疲れ様です姫様、学院の初日はいかがでしたか?」


 リラーシア学院に初めて登校した帰り道。

 セフィちゃんと別れた私は、迎えにきたメイドのキサラと合流して、今日一日のことを報告した。


「やはりリラーシア学院に通っていたんですね」


「うん。さいしょは私だって気づかなかったけど、仕方がないよね」


「一年前の姫様と全然違いますから仕方がありませんよ」


「でももう一人の子はいなかったんだよね、どうしてだろう」


「体調不良とかですかね」


「うーん、わかんないや」


 彼女とは明日にでも会えるだろうし、そんなに気にしていない。


(ただ、セフィちゃんはもしかしたら気づいているかもしれない。いわかんに)


 私の頭ではまだムズカシイ事はかんがえられない。けどわたしがセフィちゃんに会いたかったのは、使命とかそういうのではなくて、


「こんなわたしでもセフィちゃんと友達になれるかな」


「なれますよきっと。たとえ姫様がどんなお方でもきっと」


「そう、信じたい」


 私、エル·ロレアル一個人として彼女に興味がわいてしまった。


(ともだちとかそういうのは分からないけど、もし叶うなら私はセフィちゃんと)


 一人の女の子として友達になりたい。


 ■□■□■□

 翌日の学校。


「もう心配したんだからあたし達」


「本当ですわよ。ひとことくらい連絡くれればよかったですのに」


「ごめんなさい、いろいろ事情があったから」


 アリエッテもフランも心配していたのか各々がユイに声をかける。


「あ、えっと、昨日いなかった子、だよね? 私はエル。よろしくねユイちゃん」


 その中には自然とエルも混ざっていた。


「よ、よろしくお願いします。エルさん」


「呼び捨てでいいよ。だってわたしたち同じクラスメイトなんだから」


「じゃ、じゃあよろしくお願いしますエル」


「こちらこそユイ」


 こういう普通の会話を見ていると俺の昨日の予想は噓なんじゃないかって思う。


『王都の、それも身分のうえの人のかのうせいですか?』


『あくまで予想だけどね。でもわざわざ変装してまでこの学院のくるりゆうなんてそれしか考えられない』


『わたしはちょっと信じがたいです』


 エルという少女の可能性。もし俺の予想が当たっているなら恐らく彼女は……。


「おはようセフィちゃん」


「おはようエル。すっかりこのがっこうに馴染んだね」


「うん。皆とおはなしできてうれしいよ。それより」


「なに?」


「きょうちょっと時間あるかな。セフィちゃんとふたりで話したいことがあるんだけど」


「わたしとふたりで?」


「とてもだいじな話だから、ふたりきりで話がしたいの」


(このタイミングで二人で話がしたいだなんて、なにか裏がありそうだな)


 と予感がしつつも、昨日話をしたユイに視線を送る。すると彼女は小さくうなずいた。


「わかった。放課後ならいいけど、どこにいけばいい?」


「教室にのこってくれれば大丈夫。そこで話すから」


 こうして俺は嫌な予感がしつつも放課後になるのを待ったのだった。


 そして放課後。


「ごめんねわざわざ残ってもらっちゃって」


「ううん、だいじょうぶ。それより話って」


 俺は少し警戒しつつも彼女に話を振る。するとエルは窓の外から見える校庭を覗きながらこう口を開いた。


「セフィちゃんはさ、聖女になるためにこの学院にかよっているんだよね?」


「う、うん、そうだけど」


「でもセフィちゃんの場合、本当は学院にかよう必要ないんじゃないかな」


「それは、どういう意味?」


「そのままの意味だよ。先代せいじょの血を引きつつ、さらに神様みたいな力をそのからだに秘めているでしょ?」


 エルの言葉に俺は沈黙してしまう。


「わたしねこのがっこうに調べものをするために転校してきたの」


「しらべもの?」


「うん、ほんとうは一年前出会った時からそうだったんだけどね」


「一年前もって、まさか」


「そう。わたしが調べようとしているのはセフィちゃん、貴女なの」



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