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第68話未来へ繋ぐ

 聖者転生計画


 本来の目的は、この世界に聖女の力を持つ子供を、神様の力を使ってこの世界に転生という形で産まれてもらうもの。


 けど私達がしようとしているのは、自分達の子供を皆が無事で産みたい、という私利私欲な目的でした。


「この計画、俺達だけ達成できない計画だよな」


「はい。これは私達の神様の力、そして別の世界の方の力を借りる必要があります」


「......神様の力もそうだけど、一番の問題は後者だよな」


「計画書には異世界の人間、と記されていますね」


「俺達が住む世界とは異なる世界、だから異世界か......」


 私は異世界という存在を一応知って、私達とは違う星があり、そこでは私達と違う人達が住んでいる、そういう話を聞いたことがあります。


「子供の為とは言っても、見ず知らずの人間の魂がいるって考えると、何だか不安だな」


「それは、私も思っています。でも両方の命を失うなら、私はどちらかでも命を救いたいんです」


「......分かった。ソフィにそこまでの意思があるなら、夫としてお前を支える」


「ありがとうございます」


 出産予定日が迫っていることもあり、私は計画を急ぎました。


 少しでも身体に負担がないように、あちらの人にも迷惑がかかるように。


 そして私が子供を愛せるように。


 私は自分ができることを全てやり尽くしました。


 そして出産予定日の一ヶ月前。


『貴女の意思は分かった聖女ソフィ。しかしそれをするためには代償が必要になる。貴女は自分の未来のために何の代償を選ぶの?』


 私はこの世界の神様の一人、シェリ様とお話ができました。


「私が代償にするのは.......」


 ■□■□■□

「代償にしたのは産まれてくるはずだったもう一人の子供......」


 混乱していた頭を一度落ち着かせた俺は、持ち出したソフィの日記の続きを読んだ。


(結局この計画は、世界のためという名目で、代償と引き換えに叶えられた願い、だったのか......)


 これで点と点が繋がり始めた。しかしそれなら疑問も残る。


(今の聖女は、誰の願いで産まれたんだ?)


 聖女ユリエルも計画から生まれた聖女というのは聞いた。ここまで記された事がもしも本当なら、彼女はどうやって産まれたのだろうか。


(それも含めて聞く必要あり、か)


「こんなところにいた」


 近くにあった公園で俺が色々と頭を悩ませていると、頭上から声がする。


「フィア......」


「スイカは探しずらいからって事で、私が探しに来た」


「べつに来なくてもいいのに」


 わざわざ俺を探しに来たフィアが、隣に降り立つ。


「そんなにショック?」


「ショックに決まってる。結局自分がやって来たことは意味なかったから」


「意味無いことなの?」


「わたしの事情分かっているのに、そんなこと聞いてどうするの」


「最初から知られていたからって、ただそれだけで全部が無意味なのは違うと思う」


「それは正しいよ。けど私はおとうさんたちが悲しまないように今日まで頑張ってきたの。それがこんなのって」


 フィアが言っていることは正しい。けどそれとこれは別だ。俺が積み重ねてきた五年間が、ここ数日で全部崩れてしまった。


「私は……貴女に慰めの言葉をかけることはできないけど、人生はこれからなんだしこういうのを乗り越えて前に進むべきだと思う」


「乗り越える.....」


 別に俺は隠していたことを怒っているわけじゃない。ただ悲しくて辛いだけだ。


 二人はなにも知らないと思っていた俺


 既に知っていた二人


 五年間もすれ違い続けたけど、今こうして全ての嘘が晴れた。なら俺も、これを乗り越えて明日からは、偽りのない人生を歩んでいけばいい、のかもしれない。


「すぐには難しいかもしれないけど、それが人生だしいつかはこうなるってことが偶々今日だった、それだけの話なんだから頑張らないとダメ」


「慰めの言葉はかけられないんじゃなかったの?」


「今のが慰め?」


「うん。ありがとう。少しだけげんきがでた」


「なら家に帰ろう」


「うん、でもその前に」


 俺はソフィの日記をフィアにも見せる。


「おかあさんのきもちをもっと知らないと駄目だよね」


 ソフィは計画を実行することに躊躇いがあったのは、この日記を読めば伝わってくる。ならその先に、セフィが産まれた先に、彼女が何を感じたのか、俺は知りたい。


 ■□■□■□

「一年?」


「はい。シェリ様は私にこう言いました。計画が成功しても、その魂がちゃんと定着し、意思を持つにはそれくらいの時間がかかるかもしれないみたいです」


「じゃ、じゃあ、その一年俺達の子供は危険なんじゃ」


「そこは代償として差し出したもうひとつの生力と、私の力で繋ぎ止めます」


「でもそんなことをすればソフィは」


「子供のため身体を張るのも親の務めですよ」


 出産が間近に迫り、病院に入院していた私はユシスにこれからの事を全て説明しました。


 これから産まれてくる子供のために私達がしないといけないこと


 そして払ってしまった代償のこと


(きっと私は死んだら地獄行きですよね)


「私がしていることは間違いですが、その贖罪はこの命をもって償います」


「ソフィ一人ではやらせない。俺もこの子の未来のために、全力を尽くすよ」


「ユシス......分かりました。私達でこの子の未来繋ぎましょう」


 それから一週間後、私は何とか耐えてセフィを、計画の為に犠牲になってくれた誰かを、この世界に産むことができました。


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