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第66話聖女日記~子供~

『私が、妊娠ですか?』


『まだ確定ではないですが、症状を聞く限りでは妊娠をしている可能性が高いです』


 ユシスさんと過ごした二年近くの間に、私が授かってしまった子供。


(ユシスさんには一度相談しないといけませんね......)


 相談の前に私自身も覚悟を決めないといけないですが。


「うっ......」


 そしてナインちゃんに妊娠について教えてもらったこの日、私は初めてつわりというものを経験することになりました。


(これがやっぱり......)


 全てが初めてな経験に私は耐えきれず、そのまま意識を失ってしまいました。


「そ、ソフィ様?! 返事をしてくださいソフィ様?!」


 ドクン


 ドクン


 薄れ行く意識の中、私のお腹に確かな鼓動を感じ初めて実感したんです。


(私が母親に、なるんですね)


 ■□■□■□

 意識を取り戻した時、全ての話を聞いたユシスさんが涙を流しながら飛び付いてきました。


「ソフィ、よかった。本当に、本当に」


「ユシスさん......」


 後から聞いた話だと、私が目覚める前にユシスさんは私の話を聞いていたらしく、少しだけ嬉しそうな涙を浮かべていた。


「私とユシスさんはもう付き合って長いですし、いつかはこうなると思っていました」


「俺も覚悟はしていたけど、まさかこうも早く来るなんてな」


 まだ大きくなってはいない私のお腹を見ながらユシスさんは呟く。


(まだ鼓動しか感じていませんが、確かに私のお腹にはユシスさんとの子供がいるんですよね)


 私達が付き合いだして二年。私もそろそろ決断しなければならない時が来た気がしました。


「ねえユシス」


「どうしたソフィ」


「私子供ができて嬉しかったんです。ユシスとの愛の証ができたことを」


「それは俺も、だけど」


「だからユシス、私は貴方と子供たちを育てたいんです。家族として」


「......」


「ユシス、私と家族になってくれませんか?」


 いつかは彼に言おうとしていた言葉を、私はユシスに伝えました。


 彼となら......家族になって、未来を歩んでいけるとずっと思っていたんです。お互いの立場関係なく、私達なら家族になれると。


「こんな、俺でいいのか?」


「最初に告白してきたのはユシスですよ? 今更何を言っているんですか。私には貴方しかいないんです」


「ソフィ......」


「だからユシス、私と結婚してください。この子達のために私と夫婦になってください」


「ああ、俺達で幸せな家族を作ろうソフィ」


 こうして私とユシスは家族になることになりました。


 聖女と騎士団長


 この異例の結婚のニュースは、またしても世界中に広まることになったのでした。


(絶対に産んであげますからね、私の子供達)


 ■□■□■□

(胸焼けしそうなくらいベタベタだなこの二人)


 夕食後、集中してソフィの日記を読んでいた俺はようやく一息をついた。


 ユシス目線から聞いた話とはまた別の、ソフィがどういう気持ちでプロポーズしたのかとか、この日記からはよく伝わってくる。


(ただ、一つだけ気になることがあるんだよな.......)


 この日記を読んで感じたある違和感。それを果たしてユシスに聞くべきなのかどうか。


(地雷の可能性が高い、よな)


 それでも聞かなければいけないと思った俺は、一度日記を閉じて部屋を出る。


「あ、おとうさん」


 部屋を出てすぐにユシスは見つかり、俺は駆け寄った。


「あれ、どうしたんだセフィ。もう日記を読み終わったのか?」


「ううん、まだ。それよりわたし、おとうさんに聞きたいことがあるの」


「聞きたいこと? あっ」


 ユシスは何となく察したのか、少しだけ悲しそうな顔をする。


「そっか、日記に書いてあったか」


「おとうさんはこの前、話さなかったことがあるよね」


「すまない。まだ話すには早いと思ってな」


「どういう事なの? あの日お母さんが妊娠したのは私だけじゃないよね?」


 日記に記されていた子供達、という言葉。普通子供が一人ならそう記さないはずだ。


 ならその言葉がそういう意味を持つのか。


 ユシスの反応でハッキリした。


「私以外に子どもがいたんだよね? 本当は」


 ■□■□■□

 私の妊娠が発覚して数ヵ月後。

 私が感じた二つの鼓動は気のせいではなく、私が妊娠したのは双子の子供ということが分かりました。


「まさか双子だなんてな」


「私もビックリしています」


「性別は分かっているのか?」


「まだ分かっていませんが女の子の可能性が高いらしいです」


「双子の女の子、か」


 最初私がその報告をしたときユシスは嬉しい反面、心配そうな顔をしていました。


「ソフィの血を引く双子の女の子。世間は絶対に注目するよな」


「未来の聖女と期待されたりするんでしょうか」


「かもな。でも俺は、子供には自分の将来を歩んでほしいな」


「私もです」


 私とユシスは未来に生まれる双子に期待をしていましたが、結婚式を済ませたある日、私の専属医師に在ることを告げられました。


「今のソフィ様の体を考えると、双子を生むのは非常に難しいです。たとえ生まれたとしても、健全な体になるのかは......」


 聖女になって既に五年近く。私の体は既に病に蝕まれていたんです。

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