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第63話聖女日記~覚悟~

 両親を亡くして、聖女教会に拾われてフィーネ様の付き人になってから誰かに心配される言葉をかけられてこなかった。


(聖女の付き人も特殊な立場で、周りからは腫れ物に触るような扱いをされてきて、誰からも優しい言葉をかけられなかったから、初めてユシスにそんなことを言われたら私......)


「ユシスさん、ありがとうございます。でも、私は前に進みます」


「......そうか。でもいつか辛い時が来たら、俺を頼ってくれソフィ。俺だけはお前を守る」


 天然なのか、それとも本心なのかは分かりませんが、彼がこうして言葉をかけてくれたのは私に勇気をくれました。そして少しずつですが、私が彼のことを意識するようなったのもこの頃からでした。


「そろそろ時間か」


「そうですね」


「本当に行くのか?」


「はい。でもその前に一つだけ、ユシスさんにお願いがあります」


「お願い?」


「これは聖女としてのお願い事です」


 ■□■□■□

「それでは新たな聖女ソフィ。挨拶を」


 聖女教会前で行われた新たな聖女の戴冠式。王都や他国から来た来賓の方々、そして多くの一般人が私の戴冠式を見に来てくれました。


(流石に緊張しますね......)


 聖女としての挨拶もそうですが、ユシスさんに頼んだあることもこれから起きるので、私の緊張はかつてないほどのものでした。


(それでも私はやると決めたんです。だから)


「この度床に伏せられたフィーネ様に代わって、新たな聖女となったソフィと言います。私が聖女になると決まってからまだ時間が経っておらず、未だに私を受け入れられていない方もいますが、私は世界のため、皆様のためにこの身を捧げます」


 私は全世界にこの場で誓いました。


 私はこの命ある限り聖女であり続けると


「私はフィーネ様と一緒にこの世界を回って、いろいろなものを見てきました。いいことも悪いことも全部。そしてその中で私はこの世界に特別な魔物がいたことも知ったんです」


 そして私はその覚悟の証として私はユシスにある提案をしたんです。


『二年前フィーネ様が襲われたのは、聖女の力に引き寄せられたと聞きました。そしてあの時に襲撃してきたのがヒト型の魔物だったことも分かっています』


『ヒト型の魔物がこの世界に……』


『私は今日あの場所で、その魔物をおびき出そうと思っています。私が聖女としての覚悟を見せるために』


『かなり危険だと思うけど大丈夫か?』


『大丈夫です。私は聖女ですから』


 私の言葉に会場がざわつく中で、別の気配をその時私は感じました。


(予想通りですか)


「しかし皆さん、何も怖がる必要はありません。私が必ず」


 言葉が終わると同時に気配が動き出しました。一つは人から魔物の姿に変わり、一つは私の前に出て魔物の攻撃を受け止めてくれました。


「何で逃げなかった」


「さっきも言ったじゃないですか。私が覚悟を見せるって。折角の機会を邪魔しないでくださいよ」


「あんな風に言われて、守らなかったら騎士団長がいる意味がないだろうが」


 その後何体も現れた魔物からユシスさんは守ってくれ、一度騒がしくなった会場も落ち着きを取り戻しました。


「なあソフィ。お前はこれからもこんな事をするのか?」


「私はフィーネ様がしていたことをしようとしているだけです」


「お前はそれでもいいかもしれないが、誰がソフィ、お前を守るんだ?」


「それは勿論付き人がいますからその子に」


 私にはナインちゃんという付き人がおり、今日みたいな日以外は彼女に守ってもらえばいいと思っていました。


(フィーネ様がそうしてきたように、そうやって聖女としての役割を果たしていけば)


 それだけでいいと思っていました。


「その役割、俺にやらせてくれないか?」


 彼にそんなことを言われたあの日までは。


 ■□■□■□

「ふぅ……」


 ソフィの日記を時間も忘れて読み続けていた俺は、ここで一度一息をついた。


(大体はこの前ユシスから聞いていた話と一緒だけど、ソフィも俺と同じ考えだったんだな)


 彼女が聖女になった理由

 聖者転生計画というものを知って、ソフィも許せなかったからそれを終わらせるために聖女になることを決めたと書かれていた。


(でもそれは結局叶わず、今の俺がいる)


「セフィ、そろそろご飯の時間だぞ……って、すっかりハマちゃったのか」


 一度一息をついているとユシスが部屋に入ってくる。時計を見るとすっかり夕方の時間になっていた。


「ごめんおとうさん、おかあさんの日記読んでたらこんなじかんに」


「いいんだよ。セフィにはもっとかあさんのこと知ってもらいたかったからいい機会だよ」


「……おかあさんも、せいじょになることにたくさん悩んでいたんだね」


「ああ。先代フィーネ様が床に伏せられていきなり任命されたようなものだからな。戴冠式の日でさえ迷いを見せたくらいだし」


「そっか」


「まだ読んでいたいか?」


「うん。わたし、おかあさんの気持ちとかもっと知りたい」


「じゃあまずは夕飯を食べてからだな」


「うん!」


 俺は日記を一度閉じ部屋を出る。


(続きはまた後で、だな)

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