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第58話手違い転生者 後編

 自分がセフィであってセフィじゃない


 そんなこと突然言われても誰も理解できないことくらい分かっていた。


「セフィ、ちゃん。いまいったことは......」


「うん、ほんとうだよ」


「ちょ、ちょっと待ってよ。あたし、もうなにがなんだか」


「わからないよね」


「あ、あたくし夢でもみていますの?」


「夢じゃないの。信じられないとおもうけど」


 混乱する三人に俺はそれぞれに声をかけることしかできない。


(こうなることくらい分かっていたのに、やっぱり俺は間違っているのか?)


「本当にごめんなさい。話したってだれもしんじられないとおもったから」


 思ったままの言葉が出る。

 俺はある意味三人を騙していたようなものだし、ある意味ではセフィという人間はチート持っているようなものだ。皆が目指しているひとつの目標に近道を使おうとしている。


(チートを持つ立場になって分かったことだけど、周囲の人間からみればふざけているよな)


 だから三人から何を言われても仕方がないと俺は覚悟をした。


 のだが、


「話せないのは......仕方がないととはおもうけど、あたし達はまだけいかくをそんなにしらないから、セフィちゃんを責めることなんてできないよ」


「そうですわね。謝るひつようもありませんし、わたくしがその立場ならセフィちゃんの気持ちもわかりますわ」


「私は......まだ知りたいことがたくさんなりますが、セフィちゃんを怒る必要はないですよね」


 三人からかけられた言葉は、優しい言葉だった。


「どうして? 私、今日みたいなきっかけがなかったら、ずっと黙っていたかもしれないのに」


「話せないじじょうはあたしでも何となくわかるし、黙っていたことをせめることなんてできないよ」


「お母さんも......もしそうだったなら余計に責められないですよ。わたしもセフィちゃんを責めるような言い方してごめんなさい」


「ユイ......」


 スイカさんの時のように目頭が熱くなってくる。


(俺が考えすぎだっただけなんだな)


 自分だけが特殊な境遇におかれて、もし他人に話したら嫌われるって勝手に勘違いしていた。


 初めて友達ができて


 初めて思い出を沢山作って


 そんな友達が、もし壊れてしまうと考えたら怖かった。


(ましてや自分が男だなんて言ったら)


 絶対にドン引きされると思っていたが、俺の選択は間違っていなかったのかもしれない。


「それでてんせいというのは、生まれ変わりという意味でしたわよね。セフィちゃんは元は誰かが生まれ変わったすがた、ということですの?」


「うまれかわり、ではあるんだけど、元の魂の記憶とか思考は残ったままなの」


「残ったまま? つまりセフィちゃんは元は男、という可能性はあるの?」


「かのうせい、というかそうなんだけど」


「そ、そうって、もしかしてセフィちゃんは元々」


「うん、おとこなんだ。色々てちがいがあって、おとこがうまれかわったんだ」


「えっ」


「えぇ?!」


「「「えぇぇぇ?!」」」


 これは間違いだったかもしれない。


 ■□■□■□

 とりあえずひと騒ぎも終わり、皆がかなり眠いこともあって今日はお開きになった。


(結局全部話しちゃったな)


 やはり眠ることができない俺は、真っ暗な天井を眺めながら今日のことを思い返す。


(結果的には話して良かったのかもしれないけど、まだ少しだけ後悔している)


 彼女たちに本当に話してよかったのか。きっと彼女達は話してくれて良かったと思っているだろうけど、ここまで秘密にし続けてきた俺は違う。俺がこの世界にセフィとして生まれ落ちた本当の意味、世界を救うという大義名分がありながらも、もう一つ俺にはこの世界でしなければならないことがある。


(それを三人が知った時、今までのようにはいかないよな)


 ゆっくりと目を閉じ、五年前のことを思い返す。


 それはまだ俺がセフィとして生まれ変わる直前の話。


『折原光、貴方にはこれから聖女になってもらうために転生をしてもらう。けど同時に』


 ■□■□■□

「え? 今何て」


「だから貴方には聖女になってもらうと同時に、聖女をもう誕生させないでもらいたいの」


 シェリの口から語られたのは、聖者転生計画の裏に隠されたもう一つの目的だった。


「これは世界に行ってみたら分かることなんだけど、聖女になることは決して良いことではないの」


「良いことじゃない? 世界を守ることが良いことじゃないのか?」


「ううん、そういうことじゃない。もうあの世界には聖女をこれ以上生んではいけないの」


「その為に俺が犠牲になれと?」


「犠牲、なのかもしれない」


「そんなことを言われたら、計画に乗りずらいんだけどなぁ」


「ごめんなさい。ひどい言い方かもしれないけど、それしかないの」


「そう言われても理由を教えてもらわなきゃ」


「お願い光。これ以上悲劇を続けないためにも、貴方には力を貸してほしいの」


 この時の俺は知らなかったが、今になれば彼女がなぜこんなにも必死だったのか分かる。


 犠牲


 聖女になってきた母ソフィと現聖女ユリエルは、悪い言葉かもしれないが犠牲になったようなものだ。きっとシェリ達はこの聖女の悲劇を止めたいから、俺に全てを託したのかもしれない。


(アリエッテ達が聖女になるくらいなら俺が......犠牲になったほうがいいんだよな。聖なる力を持ったセフィが)


 転生したのは手違いではあったかもしれないけど、この役目を担うのは俺で間違いじゃなかった、俺はそんな気がしていた。

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