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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第1部第1章転生聖女入学する
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第5話聖女になるために

 学校生活初日は、ほとんどが明日からの日程の説明で終わり、午前中で下校することになった。


「一緒に帰ろうセフィ!」


「う、うん。いいよ」


 帰りの挨拶が終わるや否や、アリエッテが話しかけてくる。拒むことができない俺は、彼女と一緒に下校することになった。


「きょうしつ、すごくおおきかったね」


「うん。あたしたち含めて一年生ぜんいんが一つの教室におさまったら広いよ」


入学式の後、アリエッテと共に向かった教室は、一つの教会並みの大きさと広さだった。クラスもアリエッテが言ったように一クラスでまとめられていて、ざっと百人近くの一年生が一つの教室にいた。


〔これでも選ばれた子達、なんだよな〕


一見少ないように見えるが、ここにいる人たち全員が未来の聖女を目指す子達で、その中でも飛びぬけて優秀な子達が集められたエリート校だ。


「あたしたち、明日からあそこでおべんきょうをするんだよね」


「うん」


「だいじょうぶかな、あたしすごく不安」


「それはわたしも」


「でもきっとなんとかなるよね。リラーシア学院に入学できるじつりょくがあるんだから」


学年一位の実力のアリエッテだからこそ言えるセリフだ。俺も彼女の言葉に同調したいが、俺の心は不安しかない。


〔受験は結構ギリギリだったし、本当に大丈夫かな〕


「そうだ、セフィのお家ってここから近いの?」


「遠くはないかな。今日はお父さんに送って来てもらったけど」


「じゃあ今度セフィのお家に遊びに行っていいかな?」


「え?」


 またも突然の申し出に、変な声を出してしまう。友達になったならそれはごく当たり前の事なのかもしれないけど、こちらにとって彼女は要警戒対象の一人だ。もし彼女を家に招待しようものなら、何をされるか……。


(流石にそれは考えすぎか)


 こちらは見た目は子供だけど中身は大人に対して、向こうは純粋な小学生。そんな駆け引きなんて微塵も考えていないだろう。


「駄目?」


「う、ううん。いいよ! 今度アリエッテを私の家に招待するね!」


 だから俺は彼女の申し出を受けることにした。ただ色々と準備をしたいので、あくまで今度という形で。


「嬉しい! 約束だよ?」


「うん、約束」


 小学生らしく俺とアリエッテは指切りげんまんをする。まさかこの世界でもこれが通用するとは思っていなかったけど、これで約束を破る事はできない。


「これはアタシとセフィだけの秘密の約束だからね。ぜったいに破らないでね!」


「うん!」


 初めての学校


 初めての友達


 そして初めての約束


 初めてだらけの俺……いや、セフィとしての学校生活一日目はこの後特に何も起きることなく幕を引くのであった。


 ■□■□■□

 そして学校生活二日目


(眠い……)


 この五年間あまり早起きというものをしてこなかった俺は、人生で二度目となる小学校生活の朝を大欠伸をしながら迎えることになった。


「眠そうだねセフィちゃん」


「早起きに慣れてないの私。アリエッテは平気そうだね」


「アタシは早起き慣れてるから」


「へえ」


 朝たまたま登校の途中で会ったアリエッテと話をしながら登校する。昨日は警戒心があったせいか堅苦しい話し方をしてしまったが、今日は何となく打ち解けたのか自然な反応ができるようになった。

 昨日からそうだったけど、既にお互いを呼び捨てで呼び合うほど、俺とアリエッテは打ち解けていた。


(相手は小学生。俺も深く考えすぎてるだけだよな)


「ねえねえ、セフィはせいじょ様を目指しているの?」


 と思った矢先、アリエッテから思わぬ質問が飛んできた。


「っ! ど、どうして突然そんな事を聞くの?」


「え? あたしおかしな事聞いた? このがっこうに通う人は皆目指しているのかなって思っていたんだけど」


「せいじょ様って目指すものなの?」


 あのシェリって神様から、聖女の素質を持って転生させられた俺からしたら、皆が目指すものではないと思っていた。だからアリエッテが聖女の生まれ変わりと呼ばれていることに違和感を持ったし、俺はこのまま年を重ねればなれるものだと思っていた。


 が、どうやらそれは違うようで。


「えー、これから皆さんが最終的に目指すもの、この世界の聖女について説明からさせてもらうと」


 俺の疑問の答えは一番の最初の授業で判明することになる。


「この世界を光ある世界にするために、世界のバランスを保ち続ける役目を担っているのがこの世界の最高位の聖女という存在です。聖女というのはこの世界でたった一人にしか与えられない位で、皆さんの中にも聖女を目指している方もいるのではないでしょうか」


 この辺りの説明はシェリが言っていたことと同じだった。しかしその聖女の資格があるものが長い間生まれておらず、少しずつ世界のバランスが崩れ始めているということ。


「歴代の聖女は生まれたその時から資質を持っている人も多いですが、自ら努力してその位になった人もいます。そしてその人達の全員がこの学園の卒業生なんです」


 その説明まで聞いて朝のアリエッテの言葉に納得がいく。


(つまり聖女になれるかは、自分の努力次第でもある、って事か)


 けどそれなら何故長い間聖女が不在になっていたのが不思議だ。努力でもなれるものならば、長い間空席になるわけがないのだが……。


「せんせい!」


「はい、アリエッテさん」


 先生の説明が続く中、アリエッテが手を上げて質問をする。


「せいじょ様になるにはどれくらいの努力をすればいいんですか?」


「努力にどのくらいという言葉はありませんよアリエッテさん。聖女様になる前もなった後も努力はし続けなければならないんです」


「せいじょ様になった後も?」


「はい、そうです。皆さんに覚えておいてほしいのですが、先程のアリエッテさんの質問に答えはありません。努力は永遠にし続けなければならないんです」


「へえ、そうなんだぁ」


(先生、いい事言うなぁ。努力は永遠、確かにそうかもな)


 思わず俺は感心してしまう。小学一年生に言い聞かせるような言葉ではないかもしれないけど、大人の俺にはすごく響いた。


(この五年間勉強はしてきたけど、それはこれからも続けなければいけないって事だよな)


 簡単とは思っていなかったけど、聖女の道は相当険しい道のりかもしれない。

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