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第57話手違い転生者 中編

海岸から部屋に戻ると、寝ていたはずのユイの姿がなく、書置きだけが残されていた。


『アリエッテちゃんたちの部屋にいます。セフィちゃんも来てください』


その一文を見ただけで、俺の背筋が一瞬凍った気がした。


(何だこの嫌な予感は)


まずさっきまで間違いなく眠っていたはずのユイが起きていて、アリエッテ達の部屋にいるというのがおかしい。まるで最初からそうするつもりだったかのような準備の速さに、彼女は寝たふりをしていたのではないのかという結論に至る。


(意地でも付いてこようとしていたのに、眠くなって寝たなんて考えにくい。もしかしたらユイは最初から……)


そうなると俺が今から向かおうとする場所は、俺にとってはいいことが何一つもない場所。


(それでも俺は、無視することができない。ここで逃げたらかえって怪しまれる)


俺は今にも止まってしまいそうな心臓を何とか抑え、アリエッテ達の部屋へと向かい扉を開けた。


「あ、来た来た。まってたよセフィちゃん」


「皆あなたのことまっていましたわよ」


いきなり入ってきた俺にアリエッテとフランは笑顔で迎えてくれるが、ユイは視線を合わせようとしてくれなかった。


「ごめんごめん、すこし散歩がしたかったから」


「いいなぁ、あたしも誘ってくれればよかったのに」


「てっきり寝ちゃっているとおもったから」


「ひどいですわ、夜はこれからだというのに」


「ごめんってば」


俺は謝りながらも三人が座っている床の空いていたところ、ユイの隣に座った。


「ユイもごめんね。まさかおきているなんて思わなくて」


「別にそんなことはきにしてないです。それよりも私は、セフィちゃんに聞きたいことがあって呼んだんです」


「ききたいこと?」


フランとアリエッテを見ると、二人も黙って頷いた。


(なるほど、アリエッテ達もグルか)


彼女たちが何を聞きたいのかは言われなくても分かる。ユイがさっきまで寝たふりをしていたなら、あの話を聞いていて当然だ。そしてその話を聞いたなら、二人にだって自然と伝わっている。


(小学一年生相手にしていい話じゃないと思うんだけどな)


俺が一番気にしているのはそれだ。ユイが知りたがっている真相は、決して彼女たちの年齢で理解できるような話ではない。更にユイは現聖女ユリエル様の一人娘だ。ここで聖女教会の秘密を知って、それを母親に聞いたりしたら親子関係すら崩れかねない。


「セフィちゃんは今日、スイカさんとなんの話をしていたんですか? 私ははなしをきいていましたが、どういう意味なのかよく分からなかったのでおしえてほしいです」


「何をって、それは」


「セフィちゃん、わたしたちになにか隠し事をしていますか?」


■□■□■□

ユイからぶつけられた真っ直ぐな質問。きっと彼女に悪気はないんだろうけど、もしスイカさんとの話を聞いていたなら彼女も気になるのだろう。


自分の母親が計画の参加者だったことを


俺もまさかユリエル様自身がそうだったとは予想できなかったし、そんな話が飛び出てくるなんて思いもしなかった。そしてその娘が今目の前にいて友達だなんて、考えられるはずもなかった。


(本当にいいのか? 今ここでこれ以上誰かに自分の秘密を話して)


それが本当に正しいのか?


「どうしましたか? なにかはなしてくださいよ」


「……ごめん。べつに隠し事はしていないけど、うそはついていたのはほんとうだった」


「え? それはどういう」


「この前聖女教会のひとがいえにきたときに、そういうのがあるって教えてもらったの」


俺は結局苦し紛れの嘘をついた。


「ならどうしておかあさんは、あんなにもセフィちゃんを聖女にしようとしていたんですか?」


「それはわたしにはわからない」


「ほんとうですか? スイカさんとせいじゃてんせいけいかくについてさっきはなしていたのに、本当に何も知らないんですか?」


小学生相手に話しているとは思えないくらいユイの言葉は、俺の本心を射抜いていた。


(やっぱり聞かれいていたんだな)


「わたくしむずかしい話はわかりませんが、セフィちゃんがわたくしたちにはなせないなにかを抱えているなら、よろしければすこしでも話してくださいませんか?」


どうしても言葉にできない俺に、今度はフランが言葉をかけてくれる。


(小学生に俺は慰められているのか?)


俺だってもういい大人だ。うじうじしていたら格好悪いことだって分かる。それにもしこの先も彼女たちち友達でいられるなら、いずれ話さなければならない時だってくる。


(ユイ達が理解できる話じゃないのは分かっている。でも……)


「まだみなには難しい話だとはおもう。でもユイが言っていたように、わたしはスイカさんとそれについてはなしていた」


「じゃあやっぱり」


「うん。ほんとうはずっとまえかしっていたの。聖者転生計画」


「どうして知っていたのに隠していたんですか?」


「それは……わたしがその計画にさんかしているからだよ」


「「「え?」」」


俺の言葉に三人の声が重なる。


「せ、セフィちゃん今なんて」


震えるアリエッテの声に、俺はまっすぐに顔を上げて三人に言う。


「信じられないかもしれないけど、わたし、セフィであってセフィじゃないの」


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