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第53話嘘の代償

 その後。死体となったフランに合掌し、


「死んでませんわよ?!」


「あ、生きてた」


 午後はスイカさんが用意してくれたスイカさんを使ってスイカ割りを行うことに。


「えっと、スイカ割りってわたくしはじめてききましたわよ」


「そうなの? えっと、スイカ割りというのは……」


 俺以外にスイカ割りを知る人がいなかったので軽く説明する。この中でスイカ割りを知っていたbのは俺くらいで、スイカさんという概念は知っているものの、そういう知識はないようだった。


「この木の棒で、あのスイカさんを……」


「でもそれだと割れてしまいません?」


「なまえの通りスイカを割るあそびだから」


 説明を終えた後、スイカ割りを楽しむ。


 アリエッテが全く違う場所に行ったり、ユイが綺麗に叩き割ったり、その結果フランが割ることがなかったり、それぞれが違う形で真夏の時間を楽しんでいた。


「スイカ割りとかの知識は、やはり元からの知識があるですか?」


 割ったスイカを食べていると、隣にスイカさんがやってくる。


「もとから……まあ、そうですけど。スイカはあるのに少し不思議でした」


「スイカさんを遊びで使うなんて発想がありませんでしたからね私たちには」


「ふつうは思いつかないですよね」


 先日スイカさんに自分のことを打ち明けてから、少しだけ折原光としての部分が出るようになっていた。彼女がこうしてセフィにじゃなくて俺に話しかけてくる影響なのかもしれない。


(少し変な気分だよなこれ。俺としての言葉が全部セフィの声なの)


「それで一つ聞きたいんですが」


「はい?」


「さっき私にいやらしい視線を向けていたのは、セフィとしてですか? それとも貴方としてですか?」


「な、なにを急に言い出すんですか?!」


 思わず声が出る。これは明らかに俺としての言葉だった。


(目が見えていないのに、とんでもない洞察力……)


「そ、そんなわけがない、ですよ」


 そっちがけしかけてきたなんて言えるわけがなく、しどろもどろになる。


「いいんですよ、そういうお年頃なんですよね」


「ちがい、ますからね。あの、わたしのこと誰にも話してなんですから、かんべんしてください」


「分かっていますよ、ただ少し面白くて」


「おもしろくなんか、ないです」


 この人になら話してもいいと思ったけど、やっぱり間違いだったのかもしれない。


「あれから……少しだけ調べてみたんです」


「しらべたって?」


「聖者転生計画のことです。聖女教会が間違いなく絡んでいると思っていたので、本部に行って資料を見てきました」


「そういえば三日前にでかけてましたけど、そのために」


「正確には貴方にその話を聞いてからですが」


 スイカさんにこのことを話してから、彼女は何度か外出していた。理由は聞いていなかったが、どうやら彼女は彼女でちゃんと調べてくれていたらしい。


「聖女教会の中でもトップシークレットの話のようで、調べるのだけでも一苦労でした。だからトップの方と話してきたんです」


「トップ……まさか?」


「はい、現聖女のユリエル様です」


「おかあさん?」


 その名前に反応したのは他でもない娘のユイだった。


「おかあさんに会ったんですか?」


「そういえばユイちゃんは居ませんでしたね。少しだけお話ししてきたんですよ」


「なんのおはなしを?」


「ちょっとした世間話です」


 ユイには自然と話を誤魔化してくれるスイカさん。この話の続きをするには場所を選んだ方が良さそうだ。


「夕食後、私の部屋に来てください。その時に話の続きをしましょう」


 こっそりスイカさんが耳打ちをしてくる。俺は「分かりました」と答え、食べ終わったスイカを片付けに向かった。


(聖者転生計画、あまり内容は知らされていなかったからか、どういう内容になっているのか気になるな)


 ましてやそれを現聖女に聞いたとなれば、より詳しく知れるかもしれない。


(でもこれをユイも知っているっぽいから、もしかしたらこの後ひと悶着あるかもな)


 ■□■□■□

 その後、日が暮れるまで海を堪能した俺たちは、眠気を我慢しながら夕食を取り、各々で好きに時間を過ごすことになった。


(ユイも疲れて眠ったし、行くなら今だな)


 同じ部屋のユイが疲れで眠ったのを見計らって、俺はこっそり部屋を出る。


(なんだか少しだけ緊張しているな)


 別にこれから何かが起きるわけでもないのに、少しだけ緊張している。


 五年前突然参加させられることになった聖者転生計画


 本来、希が任さられることになったその計画は、大枠の部分しか教えてもらえなかった。


(けどシェリ達は大事な部分を何一つ教えようとしなかった)


「どこに行くんですか? セフィちゃん」


「え?」


 ふと誰かに声を掛けられる。振り返ると先ほどまで眠っていたはずのユイの姿があった。


「ど、どこって少し散歩に」


「じゃあわたしもついていっていいですか?」


「え、えっと、その」


「だめなんですか?」


 返答に困る。これから向かうのはスイカさんの部屋で、決して散歩ではない。


「わたし、うそが嫌いなんです」


「え?」


「お昼の時、きいてしまったんです。スイカ先生とセフィちゃんのはなし」


「え、っと、それは」


「どうしてあのときうそを?」


 あの時、それはお泊り会をしたときにユイから計画の言葉を聞いたとき、何も知らないと答えてしまった。


(咄嗟についた嘘がここで響いてくるなんて……)


「おしえてください、セフィちゃん。いまからどこに向かうんですか?」

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