第51話水着とスイカなお胸
色々な事が起き過ぎた夏休みも後半に差し掛かった頃。
「海、ですか」
「わたしうみに行ってみたいです!」
この世界にもちゃんと海という概念が存在することを知った俺は、夏という事もありスイカさんに海水浴に行ってみないかと誘ってみた。
「確かに今すごく暑いですし、水浴びをしたい気分ですね」
「ですよね? わたしうみに行ったことないので、いちどみてみたいです!」
「セフィちゃんがそこまで言うなら、ユシスさんに聞いてみましょうか」
その日の夜、スイカさんはユシスに相談してくれ、
「海か。確かにセフィを連れて行った事がないから、行ってくればいいよ」
「ほんとうに? ありがとう!」
「当日は私が引率するので任せてください。セフィちゃんのお友達も連れて行きましょう」
というわけで、
「あたしも海に行くの初めてだから、たのしみ!」
「わ、わたしまでついて行っていいんでしょうか?」
「もちろん。折角だから皆でうみをたのしみたいし」
「わ、わたくしまで一緒なんて」
いつもの四人とスイカさん、
「私までいいの?」
「折角の海ですから、皆で楽しみましょう」
そしてフィアも付いてくる形になった。移動は馬車で、一泊二日のこの年頃にはすごくワクワクする小さな旅行だった。
(海か……俺も少しワクワクしてるな)
こんなに暑い季節に海に入れるなんて、果たして何年振りだろうか。歳を取れば取るほど海に行く機会はなかったし、友達と海に行く機会も減っていった。
「ねえねえセフィちゃん」
「どうしたのアリエッテ」
「セフィちゃんは夏休みの宿題っておわったの?」
「夏休みの……宿題?」
アリエッテに言われて、俺は思い出す。オリーヴの一件とか旅行の準備とか色々あって、すっかり忘れていたが、
「おわって、ない!」
「あちゃー」
「セフィちゃん、宿題やっていなかったんですか? あれほど注意しておいたのに、どうするんですか?」
と怒っているのは勿論家庭教師でもあるスイカさん。彼女には誤魔化し誤魔化しで今日までやって来たが。夏休みも終わりが近づけば否が応でもバレる。
(いつも以上に怖い……)
「か、帰ったらちゃんとやるから」
「本当ですね?」
「ほんとう、です」
「本当、ですよね?」
「ひ、ひぃ」
「これは……じごく、ですわね」
「そういうフランはどうなのよ?」
「わたくしは最終日にやるニンゲンですわ」
「つまりなにも終わってないのね……」
アリエッテからため息が出る。
「わ、わたしはちゃんとやっていますよ」
「ユイはそうだと思った。この中だといちばんまじめだし」
「ま、まじめなんてそんな」
「あまり褒めてない気がするけど……と、とりあえず宿題のことは帰った後で……」
「そうですね、そろそろ宿に着きますし、この話はまたあとでという事で」
なんとか宿題のことは誤魔化しているうちに、目的の宿に到着。三時間の馬車旅は半分宿題の件で潰れてしまったけど、俺達がやって来た宿は、
「ここが二年ほど前にわたくしのお父さまが買ったべっそうですわ」
フランの父親が買ったいわば別荘。海がすぐ近くにあるリゾート地だった。
「もしかしてフランの家もお金持ち?」
「あれ? そういえばお話ししてませんでしたわ」
口調的によくあるお嬢様タイプの子だとは思っていたけど、その通りだったらしい。
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別荘は部屋がいくつか用意されており、
スイカさんとフィア
アリエッテとフラン
そしてセフィとユイ
の部屋振りになった。
「すごいですね、そとからも海がみえます」
「わぁ、ほんとうだ」
一度荷物を置きに部屋に入った俺とユイは、窓から見える景色を一緒に眺めた。
「今日一日ここにおとまりなんて、ワクワクしますね」
「うん。これから海で泳げるし、わたしもすごく楽しみ」
こうしてユイと二人きりになるのは確かお泊まり会以来だから、彼女を見ると色々考えてしまう。
「どうしました? セフィちゃん」
「あ、ううん。何でもない。海がきれいだからボーってしてた」
「わたしもです」
二人でしばらく窓の外の景色を眺めた後、水着を持って皆と合流する。
「って、フランはもう水着にきがえたの?」
「海はそこですし、せっかく新しくかった水着、おひろめしない選択肢はありませんわ」
そう言いながら小さな胸を張るフラン。彼女は赤を基調としたよくある水着だった。
(落ちつせ俺、いくら水着でも相手は小学生だ。フランごときで)
「お待たせしてすいません、フィアさんに着替えを手伝ってもらっていたら、時間がかかってしまって」
「ぶふっ」
「せ、セフィちゃん?」
続いてやって来たのはこちらも既に着替えてきたスイカさんとフィア。彼女達とは一緒に水着を買いに行っていたので、どんなものを着るか知っていたが、
(実際に着ると高校生だった俺には、刺激が強すぎる)
特にスイカさんは水着では隠せないほど大きな胸が(推定Hカップ)、男の本能をくすぶる。
「どうかしましたか? セフィちゃん」
勿論こちらのことを知っているスイカさんは、わざと胸を揺らしてこちらに来た。
「す、スイカさんさん、い、一回はなれて」
「どうしてですか? 折角の水着ですよ?」
「い、いいから!」
彼女の名前、スイカさんはそういう意味だったのかもしれない。…