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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第1部第1章転生聖女入学する
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第4話その少女秀才につき

 セフィがこれから六年間通う事になる聖リラーシア学院は初等科から高等科までエスカレーター式になっている名門中の名門。日本でいうミッション系の学校で、母親であるソフィもここに通っていたという。

 勿論入学するのも困難で、この年でお受験も受けた。母親ソフィが亡くなってから五年間、騎士団長としての忙しいはずのユシスに勉強や言葉も教えてもらったおかげで無事に乗り越えることはできたが、彼がいなければ今の自分もいない。


(この恩返しはいつかちゃんとしないとな)


 言葉を覚える以外にも問題は沢山あった。特に女の子として体がちゃんと成長し始めた頃からは、男としての試練が何度も待ち構えていた。


 ー男子トイレと女子トイレの間違い


 ー着た事もなかったスカートなどの女の子の福


 ーそして女の子としての言葉遣い


 五年も経てばさすがの俺も子の生活には慣れたが、果たしてこれから通うことになる『男子禁制』の学校では、自分の理性は保てるだろうか。


(って、そんな事を考えても今は仕方がないか)


 入学式迄俺はそんな風に楽観的だったが、今となってはそれも後悔している。


 ー四方八方に女子


 相手は小学生のはずなのに俺の中に邪な考えが生まれる。


 〔小学生ってこんなに可愛かったか?〕


 自分が小学生の時は決して感じることがなかった劣情に俺はただ困惑していた。


「ねえねえ」


「ひっ」


 そんな俺に、いやセフィに入場席の隣に座っていた女の子が話しかけてきた。


「あ、え、えっとごめんなさい。びっくりしちゃって」


 慌てて謝る俺に対して目の前の少女は、一瞬キョトンしたがすぐに笑顔になった・


「おもしろーい」


「へ? おもしろい?」


 何が言いたいのか戸惑う俺に、少女は右手を差し出して自己紹介をしてきた。


「あたしアリエッテていう名前なの。あなたは?」


 茶髪のポニーテールを揺らしながら俺に笑顔を崩さずに尋ねてくるアリエッテという少女。


「……セフィ」


 それに対して俺は少し控えめに答える。


 〔この子がアリエッテ、か〕


 実は俺は彼女の名前を知っていた。知っていたというよりは嫌でもこの耳に彼女の噂が流れてきた。


 入学者一の秀才アリエッテ


 その元気溢れる見た目とは裏腹に、弱冠六歳ながら全ての受験科目で満点を取ったと言われている天才。頭がいいだけなら俺もそこまで気を止めなかったが、アリエッテに関して一つだけ気になっていたことがあった。


 それはアリエッテこそが『聖女の生まれ変わり』だと呼ばれていること。


 勿論これに関しては俺自身がそうなので嘘なのは分かっている。だがそう呼ばれているということは、それだけの力を秘めているということ。

 セフィはほぼ外に出てないので、そういう噂なんて立つことはなかったが、彼女がそう呼ばれている以上は俺も簡単には負けられない。


「セフィ? 可愛い名前。ねえあたしと友達にならない?」


 はずだったが、なんと彼女のほうから友達にならないかと誘ってきた。


「と、友達? いいの? まだ会ったばかりなのに……」


「そんなの関係ないよ。それとも嫌?」


「そ、そんなことないよ」


「ならあたし達今日から友達ね」


「う、うん」


 断ることもできずにアリエッテと友達になってしまった。


 ー更にアリエッテは言葉をつづける


「ねえセフィ、こんどあたしの家に遊びに来てよ。あたしセフィとたくさんお話したいの」


「お、おはなし? でもそれくらいなら学校でも」


「ううん。あたしはセフィと沢山お話したいの。あんな事やこんな事をたーくさん」


「わ、わかった」


『新入生、入場です。皆さん大きな拍手でお迎えください』


 そんなことを話している内に会場の中からアナウンスが聞こえると、式場の扉が開かれ、大きな拍手が湧く。


(何というか懐かしいな、この感覚)


 もう十二年も前の話なのに、小学校の入学式を思い出す。この頃から俺と希は一緒で、周りによくからかわれた。女の子を幼馴染に持つ男の宿命なんだろうけど、あの頃はあまりいい思い出がない。


(だからってことじゃないけど)


 せめてここでの学園生活はいいものにしたい。何より学校でより多くの知識を得て、いつかは母親のようなシスターに、そして聖女になりたい。


(ここからが本当の意味でのスタートだ〕


 2


 入学式が進んでいく中でこれから送ることになる学校生活のことを考えた、


 不安がないといえば嘘になる。


 何せこの世界にやって来て早五年、まだ知らないことが多すぎる。特にこの世界における『聖者および聖女』の立場。

 先ほども言ったようにアリエッテは周囲からは聖女に最も近いと言われている。けど恐らくではあるけど彼女にはその可能性がない。それはシュリが言っていた転生する前に『数百年癒しの力を持った』子が生まれていないという言葉を信じればそう考えられる。

 けどもしも、その数百年に一度に自然な形で生まれた子がいたとしたら、この世界に二人存在することになる。


 俺はチートに近い能力を隠し持って聖女を目指し、アリエッテや他の子たちは実力で聖女を目指す



 もしこの先誰かに自分の秘密がバレたらどうなってしまうのだろうか


 ー聖女の資格抹消?


 〔まさかそんなことが起きるわけ〕


 俺は本当にこの先この学院でアリエッテや他の生徒達と聖女を目指して大丈夫なのだろうか。その不安は入学式の間消えることはなかった。


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