クリスマス特別編 聖なる夜に
メリークリスマス!
短いですがクリスマス特別編をお届けします
後に本編にも関わってくるのでお楽しみにー
「せいやさい?」
この世界にもクリスマスと似た概念がある。
それが聖夜祭
年に一度聖女教会主催で行われる催しで、聖都には多くの出店などが立ち並び、王都から王族の方など様々なところから人が集まり、かなり大きな祭と呼ばれているらしい。
「ああ。昔は母さんとよく行っていたんだ。セフィも来年には学院生だし、折角だし参加してみるか?」
「うん、行ってみたい!」
時は少し遡ること一年前。
俺はユシスに連れられて初めてこの聖夜祭に参加した。当時まだ聖女教会の知識がなかった俺は、学院が聖都にあることしか知らなかったので何か特別なことは感じていなかった。
「うわぁ、キレイ」
「だろ? 母さんもこの景色を気に入っていたんだ」
聖都クリエス
王都と肩を並べる巨大な都市で、聖女教会がある他リラーシア学院もこの聖都の中にある。家が聖都にないの聖夜祭に参加することがなかった。けど、今日この日にここに来れてよかったと思えるくらい、その景色は綺麗だった。
俺はクリエス中に漂っている光を手に取る。
「おとうさん、これは何?」
「魔法光を使っているんだ。色を付けたりするのも魔法だな」
「こういうまほうもあるんだぁ」
日本のイルミネーションとはまた違う幻想的な光景、日本にいた頃には決して味わえなかった光景に俺はセフィであることを忘れて言葉を失う。
「エル様、あまりはしゃがれては」
「ちゃんと遊んできていいって許可もらったからいいのー」
ボーッと眺めていると、たまたま走ってきた恐らく観光客と思われる女の子がぶつかってきた。
「きゃっ」
「いった」
衝突した勢いでこちらが尻餅をついていしまう。
「すいません!」
それを見た彼女を追っていたであろう女性が、慌ててこちらに駆け寄ってくる。
「大丈夫かセフィ」
「う、うん。わたしは大丈夫」
「ご、ごめんなさい! 私が余所見をしてたから」
女の子がわたわたしながらも手を差し伸べてくれる。それを手に取り立ち上がると少女は改めて頭を下げてきた。
「ほ、本当にごめんなさい」
「大丈夫だからきにしないで。わたしもボーッとしてたから......」
「すいません、エル様がご迷惑を」
「セフィがこう言っているからそちらも気にしないでください。折角の祭なのですから」
「あ、ありがとうございます」
少しだけ痛かったけど特に問題はないのでその場は治まる。ユシスの言う通り折角の聖夜なので、こういうことで雰囲気を台無しにしたくない。
「私はエルって言うの。貴女は?」
「私はセフィ」
「セフィちゃん、私たち同じ歳みたいだしまた会えるかも。じゃあまたね」
「ま、またね」
エルという女の子はそう言い残すと女性と共に人混みに消えていった。
(また会えるのか?)
エルのまた会えるという不思議な言葉に疑問に思いながらも、俺は何だかんだで聖夜祭を楽しんだのだった。
「ねえキサラ、いまの女の子......」
「はい。エル様のお考えの通りかと」
「じゃあまたどこかで会えるよね?」
「はい。いつか必ず。それまでにエル様もしっかり勉学に励んでくださいね」
「分かってる。おとうさまの跡を継ぐために頑張る、絶対に」
「その意気ですよ、姫様」