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第42話懐かしい思い出を重ねて

 その後ユイも眠り、夜も更けた深夜。


(眠れない)


 今日は色々ありすぎた。ただでさえお泊まり会で少しだけ浮き足立っていたのに、ユイとのさっきの会話で余計に眠れなくなってしまっていた。


(少し外に出るか)


 三人を起こさないように部屋を出て、庭に出ると何やら聞いたことのない音がした。今この家にいるのは起きている人間だと、セフィ以外に一人しかいない。


(スイカさんさんか?)


 俺は音を辿ってその場所へと向かう。彼女がいたのは昼間に俺達が魔昌ドッジボールを行った場所。そこでスイカさんさんは、魔導書らしきものを片手に予め用意していたのかマトに向けて魔法を放っていた。


「うーん、セフィちゃんが扱うのなら、この辺りの魔法がいいでしょうか?」


 魔導書を読みながらスイカさんさんは一人で呟く。セフィが覗いていることにまだ気づいていないらしい。


「セフィちゃんの魔力は少しずつ安定してきていますが、少しだけ違和感を感じるんですよね......」


 もう一度魔法を放ちながらスイカさんさんは呟く。


「確かにセフィちゃんの体内には魔力があるはずなのですが。別のところにある感じというか。この違和感は何でしょうか」


 彼女の言う別のところは俺自身の魂のことなのだろうか。原理は未だに理解できていないが、スイカさんさんの違和感というのは、やはり俺がセフィに生まれ変わったことが原因と思われる。


(これってやっぱり、いつかはバレるよな)


 隠しきれるとは思っていない。現にさっきはユイに丸分かりの嘘をついた。これが通じたのは相手がまだ幼いからだ。これが大人ならいつかは絶対にバレる。


 計画を知っている教会の人間なら尚更......。


「夜更かしはお肌によくないですよ、セフィちゃん」


 そんなことを考えている間に、いつの間にかスイカさんさんに覗き見がバレる。


「す、すいません。でもどうしても眠れなくて」


「初めてのお泊まり会で緊張したりしちゃいました?」


「そんな......ところです」


 俺は建物の影から顔を出す。そんなセフィを見て、スイカさんさんは少し屈んで頭を撫でてきた。


「あ......」


 思わず声が漏れる。目の前で優しく頭を撫でてくる彼女は、まるで自分の母親に思えてきた。


「もう、セフィは悪い子ですね」


「悪い子じゃ、ないです」


「なら先生と一緒に寝ましょうね」


 そう言うとスイカさんさんはセフィのことをそのまま抱っこしてきた。


「せ、先生?」


「私こういうの憧れていたんですよ。こんな眼ですから、そういう機会に恵まれなくて......でも、セフィちゃんのおかげで夢が一つ叶えられました」


「ゆめ?」


「はい。私が叶えたい沢山の夢です」


 セフィを抱っこしながらスイカさんさんは歩き出す。母ソフィが亡くなってから、誰かに抱っこされるなんてことはなかったので、今こうしてスイカさんさんにされていることはとても新鮮だった。


(本当お母さんみたいだな......)


 少しだけ自分が折原光だった頃を思い出す。もう二十年以上前のことになるのに、あの頃の事が蘇る。


(母さん達は......希は今頃どうしているんだろう)


 突然俺がいなくなって、父さんや母さんは辛い思いをさせたに違いない。目の前で俺が死んだのを見た希は尚更。


(懐かしいな......叶うことなら会いたい......)


 あれだけ覚めていた意識が少しずつ遠のいていく。どうやらスイカさんさんに抱っこされて、眠気が一気にやって来たのだろう。


(何だか少しだけ懐かしく......)


「あらあら、眠ってしまいましたか。まあ夜も遅いですし、仕方ないですよね。しっかり眠って、明日も楽しいことしましょうね、セフィちゃん」


 ■□■□■□

 翌日。


「「「お邪魔しましたー」」」


「また遊びに来てくださいね」


「また今度遊ぼうね」


 アリエッテ達三人は、お昼前に帰っていった。もう少しいてもよかったと思ったが、それぞれ用事があるらしい。


(なんというかあっという間だったな......)


 祭りの後とでもいうべきか、少しだけ寂しさを感じる。まだ夏休みも残っているし、まだ会う機会もあるのにやはり寂しい。


(楽しいことがあったあとの、寂しさか......)


「さあ私達も家に戻りましょう」


 三人の姿が見えなくなるまで見送ったあと、スイカさんさんが提案する。俺も返事をし、家に戻る。


「セフィちゃんのお友達、賑やかな方が多かったですね」


「賑やかというより元気があるんですよ、みんな」


「特にユイちゃんはユリエル様のお子様ですし、将来の成長が楽しみです」


「ユイのお母さんのこと、知っていたんですか?」


「勿論ですよ。ユリエル様とも面識がありますから」


 笑顔でスイカさんさんはそう言う。彼女は随一の魔法使いらしいので、そういう面識はあるんじゃないかと思っていたが、どうやら当たっていたらしい。


「ところでセフィちゃん、ひとつ提案があるのですがいいですか?」


「ていあん?」


「今週末、ユシス様もご一緒に皆でお出掛けしませんか?」




 スイカさんさんの提案をこちらが断る理由もないので、週末に三人で出掛けることに。


 そしてその場所というのが.......。


「ここが翡翠の街.......」


「オリーヴか。仕事できたことはあるが、プライベートで来るのは初めてだな」


 翡翠の街と呼ばれているオリーヴ。ただの三人のお出かけと思っていたこのプチ旅行は、俺の予想を遥かに越えた形で、物語は進んでいくことになった。


「ノゾ.......ミ?」


「貴女がセフィちゃん? ならもしかして、光?」


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