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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
間章 この剣に誓いを立てて
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第31話十二年前 ありきたりな物語

 広場での騒ぎから逃げてきて、少し慌ただしくながらも王宮に到着。このロレアル王宮というのは所謂この王国の中心の場所。聖都における聖女教会とと同等の場所であり、ここには王族の方々や俺達王国騎士団が住んでいる場所だ。


「ロレアル王宮……ここへ来るのは私も初めてですが、噂に違えないほど綺麗で清潔感のある場所ですね」


「私迷いそうです、フィーネ様」


「迷子になることはないと思いますが、かなり広い王宮なのでお気をつけてください」


 その大きさは三階からなる巨大な宮殿で、大陸随一とも言われている。その為迷子になってしまう可能性が非常に高く、慣れない内は俺も何度も迷子になったほどだ。可能性が決して零ではない。


 そんなことが聖女様にあってはいけないことなのだが。


「ではこのまま謁見の間に向かいましょう」


 その後フィーネ様を国王が待つ謁見の間へと案内し、


「ソフィも一緒に入らなくてよかったのか?」


「私はあくまで付き人ですからいいんです」


 待つ人間の中には付き人のソフィもおり、待っている間彼女と話をすることができた。


「そういえば聖女の付き人って具体的にはどんな事をするんだ?」


「今日みたいにソフィ様が聖都の外へお出かけになるときに、護衛の役割として付き添いするのが付き人の役目です。今回は場所が場所なのと、大きなイベントなので王国騎士団の方に頼みましたが」


「なるほどな。じゃあやっぱり出かけるだけでも、さっきみたいな事が頻繁に起きるのか?」


「頻繁、ではありませんが、フィーネ様はこの世界の柱のような存在ですから、狙われることはやはり多いです」


「その度にソフィが守っているのか?」


「はい。今のところ付き人を任されているのは私だけですから」


「なんか大変なんだな」


「それが私の役目ですから」


 微笑みながらそう答えるソフィ。


(付き人としての役目か……何というか俺に似ているな)


 俺も騎士団として多くの人を護ることを役目としている。だからお互いにこの時から少しだけ親近感を感じていた。


「大層なこと言っていますが、まだまだ私は実力不足ですがね」


「フィーネ様に評価されているくらいなんだから、少しは自信を持ってもいいんじゃないか?」


「わ、私はまだまだフィーネ様に及びませんよ。評価し過ぎです!」


 そうは言うソフィだったが、少しだけ照れ臭そうな表情をしていた。


(っ!)


 頬を少しだけ赤らめてこちらを見てくる彼女を見て、少しだけ胸がドキッとしたのを感じる。


「どうかされましたか? ユシスさん」


「い、いや、何でもない」


(い、今のは一体何だ?)


 それが俺が初めてソフィに対して感じた、特別な感情だった。


 ■□■□■□

 その後のフィーネ様の護衛は、大きな問題も起きることなく進み、気がつけば記念祭も終盤。


「え? 王立記念祭を、ですか?」


「折角の祭なんだ。お前も楽しんでこい、ユシス」


「でもフィーネ様の護衛は?」


「俺がいるから心配するな」


「団長がいれば安心ではありますが......」


 俺は突然クレスさんに祭りを楽しむように言われ、一人取り残されることに。


(困ったな、祭なんて一人で楽しめるものじゃないよな)


 どうしたものかと困っていると、少し離れた先に同じような人物を発見した。


「ソフィ」


「あ、ユシスさん」


 護衛中に着ていた聖装とは違って、白のワンピース姿と白いハットを被ったソフィが困ったように俺に寄ってきた。


「どうしたんだ、こんなところで。フィーネ様は?」


「それがフィーネ様をl、折角の記念祭を楽しんできてください、とか言うんですよ。一人でお祭りなんて、恥ずかしいじゃないですか」


「奇遇だな、俺も今さっき同じこと言われたばかりだよ」


 二人して吹き出してしまう。


「何と言うか私たち似た者同士みたいですね」


「お互い上の人間がいて、自分の役目があるからなんだろうな。今日出会ったばかりなのに、昔からの友人みたいな感覚だよ」


「私も同じです」


 親近感とでも言うべきか、俺がソフィに感じていたのがそれだった。彼女の性格が俺にそう感じさせているのだろうけど、それとは別の何かが生まれているのは内緒だ。


「なあソフィ」


「何ですか?」


「折角だから二人で回ってみないか? 記念祭」


「私とですか?」


「嫌か?」


「いいえ、私でよろしければユシスさんと一緒に回らせてください」


 俺の誘いに笑顔で答えるソフィ。その笑顔に俺はまたドキリとさせられていた。


(ああそうか、これが.......)


「どうかされましたか? ユシスさん」


「いや、何でもない。それより時間も無いだろうし、行こうソフィ」


「はい!」


 歩き出す俺の横をソフィが一緒に歩き、記念祭を一緒に楽しむ。屋台を一緒に回って色々なものを食べたり、型抜きをしたり、沢山楽しんだ。


「ユシスさん」


「ん?」


「私とっても楽しいです」


「俺もだよ」


(誰かを好きになるって事なんだな)


 この夜は今でも忘れられない思いでの一つだ。


 次期聖女候補のソフィと王国騎士団の俺


 交わらないはずの立場の二人が王立記念祭の日に出会い、そして俺が彼女に一目惚れした。これはありきたりな物語の始まりだったのかもしれない。けどそのありきたりな物語は、俺の人生を、そして彼女の人生を大きく変える物語になることは、この時は俺も、ましてやソフィも知るはずもなかった。


 ■□■□■□

「それじゃあおとうさんがおかあさんを好きになったから、結婚したの?」


「恥ずかしながら、な」


 意外だった。

 二人のなり染めはどんなものなのかと思いきや、まさかユシスがソフィに一目惚れしたことから全てが始まっているとは想像していなかった。


(先々代聖女の付き人、か......)


 ユシスが出会った時点で、ソフィは既に次代の聖女とほぼ決まっていたのは色々と調べて分かっていた。フィーネが彼女を付き人としていたのは、新たな聖女として色々なことを目で見て欲しかったからなのかもしれない。


「それで、その後、おとうさんとおかあさんはどうなったの?」


「その時は特に何も起きなかった、というより起こせなかったんだ。祭りは楽しんだけど、そのまま別れて何もなく二年が過ぎたんだ」


「二年?」


「ああ、そしてその頃だったんだ。ソフィが聖女になり、俺がクラトスさんの跡を継いで王国騎士団長になったのは」




「お久しぶりですユシスさん」


「ソフィ様こそ、まさか聖女なられるとは」


「そ、ソフィ様だなんて恥ずかしいのでお止めください!」

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