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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第2章邂逅そして夏の幕開け
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第28話聖リラーシア学院生徒会 後編

 生徒会室へやって来てから十五分程時間が経った頃。

 それぞれの用事等が済んだのか、クイナ以外の生徒会のメンバーが次々やって来た。


「おはよう、ございます......」


 一番最初にやって来たのは前髪で目が隠れていて、こちらが見えているのかさえ分からない女の子。


「あ、もしかして会長さんが言っていた......新しい子?」


「は、はい! 初等科一年生、セフィ·カリステラです!」


「わ、私、中等科三年、生徒会書記のヤエ。よ、よろしくねセフィちゃん」


 恥ずかしがり屋なのか、モジモジしながら上ずった声でと自己紹介をしてくれるヤエ。そんな彼女を見た会長が、頬を膨らませながらヤエの肩を揺らした。


「もう! セフィちゃんはしっかり挨拶したんだから、しっかりヤエちゃんも挨拶しないと駄目だよ!」


「で、でも、私、こ、こういうの苦手で」


「恥ずかしがり屋さんなところ直さないとこの後困るよ? もっと積極的に話さないと」


「む、無理ですって!」


 顔を真っ赤にしながらプルプル震えるヤエを見てられなくなったので、俺は二人の間に入ろうと声をかける。


「会長さん、あまりいじめるのは」


「もうまたヤエ先輩をいじめているんっすか、会長は。可哀想っすよ」


 しかしそこにもう一人別の声が入ってきた。ヤエとは対照的に明るい声を生徒会室に響かせた彼女は、栗色のポニーテールを揺らしながら、二人の間に入って強引にクイナとヤエを引き裂いた。


「あー、もう、お楽しみを邪魔しないでよシノブちゃん!」


「お楽しみってなんすか?! このままセクハラするつもりだったんすかするつもりだったんすか?」


「セクハラはしないよ。ちょっとあちこち触るだけだし」


「それをセクハラと言うんすが......」


 ため息を吐きながらこっちらを振り向くポニーテール少女。俺の顔を見るなり彼女はニカッて笑ってきた。


「おー、この子が噂の新メンバーっすね」


「せ、セフィです。よろしくお願いします」


「うちは中等科一年、生徒会会計のシノブっす。セフィちゃんよりは年上っすが、気軽にシノブって呼んでもらって構わないっす」


「わ、分かりました、シノブ、さん」


「ッッ! 可愛い、可愛すぎっす!」


「し、シノブさん?!」


 何が刺さったのか分からないが、思いっきりセフィの身体を抱き締めてくる。思わずセフィではなく素の自分が出てしまいそうになる。こういうイベントって一般的には愛でる側に立つのに、愛でられる側に立たされるととてつもなく恥ずかしい。


(しかも色々当たって、男としてヤバイぞ)


 女性だけの環境に慣れてきたつもりだったが、積極的なコミュニケーションにはまだ慣れていない。特に女性特有の柔らかさとかを肌で感じると、男の部分が出てしまいそうだ。


「は、離れてください。は、はずかしいので」


「恥ずかしがるのも可愛いっす。ほらもっと」


「こーら、あまり後輩いじめちゃ駄目でしょ、シノブちゃん」


 そんな状態の俺を救ってくれたのが、紫色のロングヘアーの長身の女性。


「アイリ先輩だってよく人をいじめるじゃないっすか」


「私はいいのよ。それが愛だから」


「うわ、相変わらずっすね」


 文句ダラダラの俺からシノブを引き剥がしてくれると、女性はそのまま俺の方に視線を向けた。


「紹介遅れたわね。私は生徒会副会長、高等科二年アイリよ」


「セフィです。助けてくれてありがとうございました」


「いいのいいの、こういうの日常茶飯事だから」


 そう言い苦笑いしながら、会長の隣の席に座った。


「もう遅いよアイリ。遅刻だよ遅刻」


「ごめんなさい、先生に頼まれごとされちゃって」


 座席が六つに対して、これでセフィを合わせて五人。あと一人で全員かと思ったら、会長は立ち上がるとこう宣言した。


「よし、これで全員揃ったね」


「あれ、席がひとつ空いていますけど」


「あ、気にしないで。どうせ今日も来ないから」


「.....?」


(今日も来ないってどういう意味だ?)


 しかしその疑問に返事はなく会長は言葉を続ける。


「じゃあ今日も会議を始めようか」


 生徒会会長 クイナ

 生徒会副会長 アイリ

 生徒会会計 シノブ

 生徒会書記 ヤエ

 そして空席のもう一人


 今ここに聖リラーシア学院の中心とも言うべき生徒会が全員集まった。一通りの顔ぶれを見て一つだけ思ったことがある。


(このメンバー、クセが強すぎない?)


 ■□■□■□

 そのあとセフィを含め生徒会の会議が開かれ(何の話をしているかはさっぱりだった)、一通り話し合いが終わったあとに、会長がこっちを見ながら話を切り出した。


「それで、もう皆知っていると思うけど、今日から生徒会に新しいメンバーが入ったわ。あくまでお手伝いさんはあるけど、皆仲良くしてあげてね。ぞれじゃあセフィちゃん」


「は、はい!」


 会長に言われて立ち上がり、全員を見回す。


「セフィ・カリステラです。まだ初等科一年生でわからないことだらけですけど、よろしくお願いします」


「よろしくっす」


「よろしくね」


「よろ、しく」


「よろしくねー。そういえばセフィちゃんの名前、カリステラってもしかしてお母さんソフィさん?」


「は、はい、そうですけど。おかあさんを知っているんですか?」


 思わぬところで母の名前が出てきたので、思わず聞き返してしまう。


「知ってるもなにも超有名人だよ。何回か生徒会に来てくれたこともあったよね? アイリ」


「ええ。卒業してから大分経つのに何度も遊びに来てくれたわ」


「懐かしいなー。ソフィさんは私の憧れだったから、本当はもっと色々教えてもらいたかったんだけど......」


 言葉を詰まらせ、遠い目をする会長何を言おうとしているのかこの場の皆が分かっている。けどそれはあえて口にしない。きっと気を使ってくれているのだろう。


「す、すごいっすね、セフィちゃん。そんなすごい人の子供だなんて」


「だから、生徒会に入れた、のかも」


 そんな空気を察して、話題を逸らしてくれる二人。少々強引かもしれないけど、こっちもソフィのことはあまり話せないのですごく助かる。


「わたし、一応おてつだいなので、なにができるか分からないですが、が、がんばります」


「困ったことがあったら何でも頼ってね。お姉さんたちが力になるから」


「そういえばうちら、お、お姉さんなんすよね。こそばゆいっすけど」


「悪くない、かも」


「お、お姉さんはともかく、頼らせてもらいます」


 こうして俺は急ではあるが生徒会の手伝いを始めることになった。クセが強すぎてどうなるかは分からないが、こうして挨拶をしてしまった以上もう後には引けない。


(それで決めていくんだ、これから先の自分の道を)


 そしてここから数日後、聖リラーシア学院は夏休みに入る。


「ようやく見つけた......セフィ・カリステラちゃん! ううん、折原光!」


 その夏休みの間に、俺は彼女と再会を果たすことになるのだが、夏休みの日記を書きながら思う。


 この再会は、多分間違っていたのだと。

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