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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第2章邂逅そして夏の幕開け
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第27話聖リラーシア学院生徒会 前編

 翌日の放課後。俺は学院長に言われた通り生徒会室へとやって来ていた。


(逃げてもよかったんだけど......結局来てしまった)


 正直昨日のユシスの話を聞くまでは断るつもりでいた。だけど昨日ユシスからからソフィの話を聞いて、母親がどういう道を歩いたのか気になってしまった。アリエッテ達の話を聞く限りでは、生徒会に入るのもすごいが生徒会長ともなれば全生徒のトップとのこと。

 ソフィが会長をしていたのは十五年以上も前の話なので、当時のことを知るのは難しいが、今の生徒会長と会えれば何か分かってくるかもしれない、そう思った俺は生徒会室の扉をノックした。

 中から「どうぞ、入ってください」と返事が返ってきたので、俺は一度深呼吸をして部屋の扉を開いた。


「失礼しまっ......」


 いや、正確には勝手に開いた。

 そして次に待っていた生徒会室の光景に、俺は思わず息を飲んだ。


(ここ、学校の中、だよな?)


 そう疑問に思わずにいられないほど、生徒会室内は自然が広がっていた。誰かが育ててきたであろう草花達。そしてどこから入ってきたか分からない蝶々や虫達。


 そこに広がっていたのは“庭”だった。


 そしてその庭の中心、普段生徒会のメンバーが会議しているであろう長机の一番目立つ正面に椅子に、その人は座っていた。


 赤毛ののショートカットで身長はセフィと変わらない少女。机が若干高いのか顔が半分隠れてしまっていて、頭がひょこっと出ている。とても先程の返事をした人と同一人物には見えないのだが、もしかしてこれはどっきりの類いとか?


「え、えっと、わたし、学院長にいわれて来たんですが、せいとかいちょうさんはどこでしょうか?」


 失礼とは分かりつつも、俺は目の前の少女に聞いてみる。


「私が生徒会長ですよ? セフィ·カリステラさん」


「で、ですよね?! ごめんなさい!」


 思いっきり頭を下げる俺。その様子に生徒会長は何故か笑いだした。


「なーんて、私の柄じゃないよね。ごめんねセフィちゃん」


 急に声の調子が変わる生徒会長。俺は思わず顔をあげると、いつの間にか俺の目の前に移動していた生徒会長が、満面の笑みで俺を見上げていた。


(ちっさ?!)


「高等科二年、クイナだよ。こんな見た目だけど生徒会長やってるの。よろしくね、セフィちゃん!」


 第一印象とは違って一気に明るくなったクイナ会長は手を差しのべてくる。俺は少しだけ躊躇ったが、彼女の手を握り返した。


「よ、よろしくお願いします、クイナ会長さん」


 ■□■□■□

 リラーシア学院現生徒会長、高等科二年クイナ。

 入学式で生徒代表として挨拶をしていたので、顔は知っていたが、挨拶時に登壇したときは身長はこんなにも小さくなかった。


(つまりよくあるシークレットブーツみたいなの使ったんだな)


 ちなみに彼女は他の生徒より別名“ちびっこ会長”何て呼ばれていて、親しみを持たれているらしい。


「ごめんねー、かなり驚かしちゃったかな。折角の新メンバーだし少しは会長らしいことやってみようかなって思ったんだけど、失敗だったみたい」


 長机に対面する形でセフィとクイナは座り、わざわざ用意してもらった飲み物(紅茶に近い何か)を飲みながら話を始めた。


「い、いえ、わたしこそ失礼なこといってすいません!」


「だいじょーぶ、何にも怒ってないから。むしろ言われ慣れているというか、皆同じこと言うし、私もそろそろ身長伸ばそうって頑張っているんだけど、ニーナちゃんがありのままでいいって言うし」


 カップで口を隠しながら何かぶつぶつ言う会長。心なしか目が死んでいる気がする。


「あ、あの、かいちょう、さん?」


「あ、ごめんごめん。とにかく本当の私はこっちだから、さっきのは忘れてね」


「は、はい」


 会長の黒い部分が垣間見えたが、ここは敢えておれはわすれることにした。


(大丈夫か、この生徒会長)


 閑話休題


「それでわたし、学院長に無茶言われてここに来たんですけど、なにをすればいいかわからないです」


「最初は何も分からなくていいんだよ。私もセフィちゃんと同じ時期に入ったから、分からないことだらけだったもん」


「え? かいちょうもわたしと同じ歳でせいとかいに?」


「うん。セフィちゃんとは違って、私はスカウトされた形なんだけど」


「スカウト?」


 てっきり生徒会のメンバーって選挙とかして決めるものだと思っていたが、やはり異世界なだけあってちょっとだけ文化が違うところもあるようだ。


(政府とか選挙とかそんな単語耳にしたことないし、そういうのは無いんだろうな......)


「その時は私もあまり自覚がなかったんだけど、潜在魔力値とかがものすごく高かったんだって。それがその時の生徒会長の目に止まって、ってみたいな感じ」


「そうだったんですね」


「だからセフィちゃんが気負うことなんて何もないと思うよ。不安とかは有るかもしれないけど、私達がちゃんとサポートしてあげるから」


「あ、ありがとうございます」


 すっかり生徒会に入ることが決まっているような言い方に、俺は困惑を隠せない。


(困ったなぁ)


 俺の中ではあくまで生徒会の手伝いのつもりだっただけに、ここまで話が進んでしまっていると後には退けない。


(腹をくくるしかないのか? 今後の自分の道を決めるためにも)


「そろそろ時間だね」


「じかん?」


「もうすぐ他の生徒会のメンバーもここにやって来るから、ちゃんと挨拶考えておいてね」


「は、はい!」

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