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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第2章邂逅そして夏の幕開け
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第24話近道より遠回り

 その後、母親とたくさん話ができたのか満足したユイと一緒に他の二人の場所へ戻った。

 その途中でユイに「ありがとう、セフィちゃん」と感謝されたが、むしろこっちが感謝したいくらいだったので、特に言葉は返さなかった。


「遅いですわよ二人とも」


「あたし達退屈すぎて、ずっとお祈りなんかいもしちゃったんだから」


「ごめんごめん。でも......ちゃんと話ができたから。ね? ユイ」


「う、うん!」


 よほど話したいことがたまっていたのか、ユイから元気な返事が返ってくる。そんな二人に、ふてくされたアリエッテとフランをなだめていると、ナインが四人の元にやって来た。


「その様子だと、ユリエル様としっかりお話ができたようですね、ユイ様」


「うん。おかあさんにわたしの気持ち、ちゃんと話せた」


「それならよかったです。セフィ様は......」


「ごめんなさい。わたし期待できるような答え、出せませんでした」


 サフィが何を言いたいのか分かったので、俺はそのままの答えを伝える。サフィは少しだけ残念な顔をしたが、すぐに微笑みに変わった。


「そうですか......。やはりすぐに決断はできないんですね」


「はい。それに」


 言葉を紡ぎながら他の三人に目をやる。聖女にも言ったように、彼女たちも聖女を目指している同じ人間だ。裏の事情とかは知らないかもしれないけど、いずれ知ってそれぞれの道を歩む事になる。それを今この時点で俺が邪魔するわけにもいかない。


「ユイ達も同じようにがんばっているのに、自分だけ近道をしてせいじょになるのは、わたしじしんが許せないですから」


 いくらそれが目的で生まれてきた人間だとしても、ズルをしてまでなろうとは思わない。どこかのラノベならこういうとき、得た力を生かして近道をする展開が多いだろう。だけど俺はそれを選ばない。

 自分で学んで、自分で力をつけて、自分でも納得できるような人間になって、それでいて聖女の資格があったらその道を選ぶ。その時にはきっと聖女が言っていた覚悟の答えも見つかってと思う。


 近道より遠回り。


 セフィ·カリステラはそういう人間でありたい。


「すいません、勝手なことを言っているのは分かっています。けどもうそうするって決めたんです」


「分かりました。ユリエル様にもそうお伝えしておきますね」


 今日の決断はセフィにとって初めての大きな決断だろう。だけどもう後悔はしていない。


 それがセフィなのだから。


 それが折原光という人間なのだから。


 俺はようやくセフィという人間になれたような気がした。


 ■□■□■□

 その後無事社会科見学は滞りなく終わり、セフィちゃん達は帰宅。

 私は今日はここに泊まっていくことを決め、改めてお母さんと二人きりでお話をすることになった。


「ユイもいい友達に恵まれましたね」


「そ、そうかな」


「ええ。お友達は大切にするんですよ」


「うん!」


 お母さんとこうして会えるのは二ヶ月ぶり。入学式の時に以来だった。その時も聖女が来ているって一部で大騒ぎになっていたけど、私にとってお母さんはお母さんなので、そんなのは関係がなかった。


 お母さんがここにいて、私の頭を優しく撫でてくれる。


 ただそれだけのことだけれど、それがたまらなく嬉しくて、いつまでもこの時間が続いてほしいって思える。


(限りなんてあってほしくない......お母さんがいなくなるなん考えたくない)


 私はさっきお母さんに言った言葉を思い出していた。


 お母さんの体のこと。


 聖女になりたいという意思。


 まだまだ未熟な私が初めて持った強い意思。そのキッカケは分からないけど、私をほんの少しだけ変えてくれたのは他でもないセフィちゃんだった。先月の遠足の時彼女は私のことを助けてくれた上に、状況を何とかしようと頑張ってくれた。


 憧れとかではないけど、私もああいう風になってみたいってそう思った。


「そういえばおかあさんはどうしてセフィちゃんのことを最初からしっていたの?」


「ユイが先月行った遠足も含めて、セフィちゃんの噂はかねがねから聞いていたんです」


「じゃあわたしが出会うまえから知っていたの?」


「はい。セフィちゃんはきっとユイにとってかけがえのない友達になります。今日あの子と話してよく分かりました」


「セフィちゃん、おかあさんに何か言っていたの?」


「何か言ったというよりは私の話をちゃんと聞いてくれました」


「おかあさんの話を?」


 どんな話をしたのかすごく気になるけど、お母さんは答えてくれない。だけど今すぐ知りたいとか思わなくなった。セフィちゃんとは学院で沢山お話しできるし、お母さんともまだまだ沢山話がしたい。


「ねえおかあさん」


「何ですかユイ」


「わたしもっとおかあさんといっしょにいる! 学校が終わったら毎日ここに来るし、セフィちゃん達も呼ぶ!」


「あらあら、我が儘な子ですね。毎日は来るの大変ですよ?」


「それでも決めたの! おかあさんといっしょがいい」


「ユイったら.....」


 時間に限りがあるなんてそんなこと絶対考えたくない!

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