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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第2章邂逅そして夏の幕開け
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第22話おとぎ話のような現実の話 中編

 母親ソフィ·カリステラは歴代の聖女の中でも大きな力を持つ存在だった。

 そんな彼女を見ていた後輩の当時はシスターだったユリエルは彼女に憧れ、いつかはああなりたいと願った。


「そしていつかは彼女をも越えたいと思っていたんです。そしてそれは叶いました、望まない形で」


そう彼女は語った・


「セフィちゃんはお母さんが重い病気だったことは知っていますね?」


「はい。わたしが生まれるまえから重い病気にかかっていたって」


俺がセフィとしてこの世に生を受けた時点で彼女は既に大きな病気にかかっていた。そして無力な自分は一年間何もできず、苦しむ彼女を見ていることしかできなかった。


「あれは私もかかっている決して治すことのできない病気です。そしてそれは歴代の聖女皆がかかっている病気なんです」


「それってつまり、おかあさんがびょうきになったのは」


「聖女になったことも関係あることと関係があるかもしれない、ってことです」


つまり俺が、いや俺たちが目指しているものはそういうものだということになる。


(わざわざ生まれ変わってまで目指すのが、そんなものでいいのか?)


この先聖女になって、世界を背負って、見えてくるのが病気による死。


それが『聖女』というもの


俺がなろうとしているもの。


「病気の話はこの辺にしておきましょう。まあ次の話も関係はなくはないですが」


 そんな俺の心情はお構いなしに、聖女はまだ話を続ける。


「まだあるんですか?」


「セフィちゃんもご存じかと思いますが、この世界の光と闇の話です」


「っ!」


「セフィちゃんは疑問に思っていますよね? この世界には本当に私達が必要なほど巨大な闇があるのかと。その答えを少しだけ教えてあげます」


 ■□■□■□

 今日は朝から気分が優れなかった。

 聖女教会に訪れるということはお母さんに会いに行く。そしてそれは私のお母さんが、今の聖女であることが皆に分かってしまう。


(か、隠しているつもりはなかったけど......)


 いつかは分かってしまうこと。そう頭で理解していても、どこかで躊躇っていた自分がいた。その結果、自分が知らない裏で色々なことが始まっていて、色々なことが決まっていた。


「セフィちゃんにだけはなしがあるって、あたしなっとくできないなぁ」


 セフィちゃんだけ残して、部屋の外に出された私達三人とサフィ。最初の聖堂まで戻ってきたところで、アリエッテちゃんがそう愚痴をこぼした。


「同感ですわ。これだとわたくしたちはおまけで付いてきたみたいで、納得がいきませんわ」


 続いてフランちゃんも同じようなことを言う。


「皆さんそんなことを仰らずに。ユリエル様もちゃんと考えがあって二人きりになられたんです」


「か、考え? わたしにはいつもひみつにしてばかりなのに。セフィちゃんだけ、わたしが知らないことをたくさん教えてもらえるのに、そのどこにお母さんの考えがあるの?!」


 ナイン言葉に、普段の自分では考えられないくらいの怒りを覚えぶつける。その怒りは静かな聖堂中に響き渡った。


「ユイ様、、落ち着いてください」


「落ち着くなんてできない! わ、わたしはいそがしいお母さんに会うのもずっと我慢してきたのに......こんなのひどいよ」


 言葉と一緒に涙が流れてくる。

 お母さんに沢山文句が言いたい。

 お母さんに私の気持ちが分かってほしい。

 お母さんにもっと側にいてほしい。


 普通の家族ならある"形"が私にもほしい。この学院に入ったのも、私が聖女になって、お母さんの代わりになればもっと一緒にいられる。すぐにはなれないかもしれないけど、時間をかけて叶えたい願い。


(なのにどうしてお母さんは......分かってくれないの)


 まだ自分はこんなにも人間だからというのは分かる。だからこれから先もっと成長していきたいって気持ちがこんなにも強いのに。その気持ちがお母さんに伝わらない。


「お母さんはわたしのことなんて、な、何もおもってない。えんそくのこともなにも心配してくれなかった。もうわたしのことなんて......」


 溢れる涙と言葉が止まらない。止められない。私が言っていることは、聖女への冒涜でもある。実の母親だったとしても、人のよってはそう捉える人もいる。


 ただ一人の娘の声でさえもそうなってしまう。


 だけど止めない。

 だって私は間違ったことなんて一つも......。


「ユイ様」


 ナインの声が一瞬聞こえたかと思ったその次には、私の頬に痛みが走った。


「ちょ、なにをして」


「ユイちゃん!」


 頬をナインに叩かれた私に、フランちゃんんとアリエッテちゃんが駆け寄ってくれる。痛みにうずくまった私は、見上げる形でナインの顔を睨んだ。


「ユイ様がまだ幼いからこそ出てくる言葉なのは充分承知しています。ですが、ユリエル様を......自身の母親を罵倒する姿はこれ以上見ていられません」


「で、でも、わたしはなにもまちがってないもん!」


「そう思うなら確かめましょう」


「......え?」


「そろそろセフィ様とのお話も終わる頃です。久々にお会いしたのですから、思う存分その思いをぶつけましょう、ユイ様」


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