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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第2章邂逅そして夏の幕開け
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第19話聖女教会 後編

「聖女教会の人が会いに来たの?!」


 翌日の学校。

 クラス中にアリエッテの驚きの声が響き渡った。


「こ、声が大きいよアリエッテ」


「だ、だって、それってとてもすごいことなんだよ? 普通はあり得ないことだし」


「そ、そうなんだ」


 最初不審者か何かと間違えそうになったけど。


「それでどうなったの?」


「どうなったって?」


「だ、だって意味なくセフィちゃんのところに来ないでしょ?」


「ああ、それは.....」


 聖女教会のシスターであり、両親と顔見知りのナインという女性との会話を改めて思い出す。

 彼女は『聖者転生計画』を知っていて、セフィという少女が聖女になりうる素質を持っていることを承知している口振りだった。


 だから彼女はセフィというまだ幼い少女にこう提案したのだ。


 聖女としての仕事をしてほしいと。


「な、何をいっているんだナインちゃん。いくら彼女の血を引いてるセフィでも、いきなり聖女としての仕事をしろだなんて、滅茶苦茶すぎる」


「私も無茶を言っているのは分かっています。しかしセフィ様にはそれができるだけの力があります」


「だからどうしてそんなことが」


「ユシスさんも本当は分かっているんじゃないんですか? セフィ様が生まれながらにして持っている力を」


「それは」


 ナインの言葉に渋い顔をする父ユシス。父親としてまだ幼い我が子に、大きな役目を任せるのは躊躇ってしまうのだろう。勿論俺もナインの言葉に素直に頷くことができない。


(シュリ達はこうなるのを分かっていたか、それとも仕組んでいたな)


 本来聖者転生計画という言葉を知っているのは神様である彼女たちだけだ。ではどうやってナインが知ることができたのか。そんなのは容易に想像ができる。


 神様、という立場を利用したのだ。


 例えばよくある神のお告げ、とか。ましてや相手は教会の人間。そんなお告げが来れば信じないはずがないのだ。


(当初の予定が狂っても強行したくらいだ、このくらいはするよな)


 むしろよく六年も待ってくれたなとも思ってしまう。


「セフィ様はどう思いますか? 貴女に流れる血は、聖女に足る力を持っています。それを何度か経験しているのではないですか?」


 真剣にそんなことを考えていると、今度はこちらに話が振られる。彼女の言う経験はきっと先日の遠足でのあれも含まれている。


(攻撃魔法が治癒魔法に変わった理由、やっぱり関係あるんだよな)


 あれから個人的に色々調べてみたが、答えらしき答えはでなかった。きっとナインの言うように血が関係あるのだろう。


 だけどその血は......。


「けいけんはしてるよ。でもそれを今すぐ生かしたいとかそういうことは思ったことがない」


「やはり満足のいく答えは聞けませんか......」


「ごめんなさい」


「ではその代わりと言ってはなんですが、二週間後の週末見学してみませんか?」


「見学? なんの?」


「我々聖女教会と聖女の仕事をです。勿論お友達も一緒に」


 ■□■□■□

「せ、せ、聖女のやくめをことわったの?!」


 話を聞き終えたアリエッテの声が再び響く。


「だからこえ、大きいって」


「大きいこえも出ちゃうよ。だ、だ、だってそれって、なんのためにこのがくいんに来ているのか話だよ? 大チャンスを逃したんだよ?」


「とりあえず落ち着いてって。さっきも言ったけど、いきなりそんなことを言われても、すぐに「はい、やります」なんて言えないよ。だから見学しに行くの」


「見学って、もしかして」


「うん、二週間後の週末、フランとユイもつれて行こう、聖女教会に」


 ナインは友達を連れてって言っていたので、連れていくのはアリエッテ達三人。正直行った先で何が待っているのかは分からないけど、アリエッテ達、そし俺にとってもいい刺激になってくれるはずだ。


(そこでまずはこの目で確かめるんだ。この世界での聖女という役目の意味を)


「それにしても、あんなに昨日は元気がなかったのにすっかり元気になったね、アリエッテ」


「え、あ、うん。セフィちゃん達のおかげだよ、ありがとう」


「私たちは特になにもしてないよ。ただ放っておけなかったから」


「それでも、ありがとう」


 アリエッテはそ言いながら笑顔を向けてくる。その笑顔は年相応に可愛らしいが、まだ無理しているのがヒシヒシと伝わってくる。


(これ以上は踏み込めないよなぁ)


 心の中で深いため息吐く。こう困っている人を見ていると放っておけない性格は折原光の時から変わっていない。特に子供なんて無理させてはいけないのに、何もできない自分がむず痒い。


「ねえアリエッテ」


「どうしたの? セフィちゃん」


「あ、ううん、なんでもない」


 俺は色々聞きたいことを何とかグッと堪えて、その時は何とかやり過ごした。


 ■□■□■□

 所変わってここは聖女教会。


 セフィの母親、シスターソフィも所属していた場所。その後輩でもあったシスターナインは、カリステラ家を訪ねた翌日、昨晩のことを報告しに戻ってきていた。


「そうですか、では二週間後に彼女はやって来るのですね」


「はい。しかし聖女セフィは私の言葉にかなり戸惑っていました」


「そうでしょうね。小さい子にこの役目を担わせるのはあまりに重すぎます」


「それではどうなさいますか? 聖女ユリエル様」


 ナインが話をしているのは、今この教会で聖女としての役目を全うしているユリエル。彼女は新たな聖女がこの地にやって来ること、そして娘との再会に胸を踊らせていた。


「二週間後、わたくしが直接彼女とお話をします。丁度娘にも会えそうですし」


「もしかしてそちらが本当の目的ではありませんか?」


「野暮なことは聞かないでください」


「野暮なこと、なんですね」


「コホン。ともかく二週間後が待ち遠しいですね」


「同感です。恐らく大きな分岐点になると思いますから」


「そう、ですね」


 この二週間後、セフィは予定通りこの地を訪れる。そして彼女はユリエルから伝えられることになる。


「それでも貴女にこの世界の聖女として生きる覚悟はありますか?」


 ここから語られるのは覚悟の話。


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