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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
第2章邂逅そして夏の幕開け
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第18話聖女教会 前編

 アリエッテが一度落ち着くのを待った後、改めて四人で遠足の後のことから振り返っていった。


「もうあまり思い出したくないですわよね......」


「それについては同感。あのあとせんせいたちにずっと怒られていたもんね」


「でもあれは、わ、わたしたちが自分を守るためにしたことだし......」


「それでもあたしたちは火事を起こしちゃったわけだし」


「せんせいがたも頭が固いですわ。きけばわたくしたちの学年でていがくというのは初めてらしいですわね」


「それほどのことだった、ってことかな」


 セフィの言葉に三人が沈黙する。皆自分達がしたことの重大さは何となくだが理解している。ただまだそn本当の意味を理解するのには幼すぎる。多分彼女達は停学という言葉の重さも分かっていないのだろう。だからアリエッテやユイは自分の親から教えられてしまった。


 自分の心が折れそうになるほどに。


「せんせい、あたしたちに冷たかったよね。やっぱり怒っているのかな」


「なんで怒られなきゃいけませんの? このえんそくはそういうものじゃなかったんですの?!」


「怒っているというより、多分わたしたちを避けているんだとおもう。アリエッテへの重要な手紙を渡しそびれるくらいに」


「そ、そういえばアリエッテちゃんへの手紙ってどんな内容なんだろ」


「ここにあるけど、見てみる?」


 そう言うとアリエッテは先程渡した封筒を机の上に置く。先生は両親に見せてとかそんなことは言っていなかったし、どちらかと言えばアリエッテ自身に見てほしいような言い方をしていた。


(普通こういうやつって親に渡すものなのに、どうして)


 俺の中でそれだけがずっと引っ掛かっていたが、封筒から出て一枚の紙によってその答えは明かされた。


「これ......この前の身体測定のけっか?」


「そういえばアリエッテが休んでるあいだに渡されたよねわたしたち」


「そういえばそうでしたわ。なんか拍子抜け、ですわね」


 わざわざ厳重にして渡すほどの物ではないし、別に明日渡せばよかったものではないかと思ったが、その紙をアリエッテは何やら真剣な目で見ていた。


「やっぱりそういうこと、だったんだ」


「どうしたのアリエッテ? 何か書いてあった?」


「あ、ううん、なんでもない。確かにこれは今日もらっておいてよかったのかも」


「わたくしたちにはイマイチ分かりませんわよ」


「大丈夫。しんぱいするような事はなにもないから」


 明らかに何かを隠しているアリエッテだが、さっきの件とは違って口を開いてくれそうにない。


(身体測定の結果で分かるようなことなんて、あるのか?)


 セフィ自身も特殊な人間ではあるので、後でちゃんと読んでみようと俺は思うのだった。


 ■□■□■□

 謎は多く残ってしまったものの、とりあえずアリエッテも少しは元気になったので、暗くなる前に解散することになった。


 その帰り道。


「結果的にわたくしたちが行って、せいかいでしたわね。ただ気になることが増えてしまいましたが」


 フランがそんな言葉を洩らす。


「あ、アリエッテちゃんが受け取った紙って、べつにとくべつなことは書いてないかったよね?」


「うん。でもそこにはアリエッテにしかわからない何かが書いてあったんだと思う」


「それをわたくしたちが知る必要は」


「多分ないし、アリエッテも教えてくれないと思う」


 人には誰にも話せない秘密が誰にだってある。転生者である俺がそれを隠すように、アリエッテにも隠したい事はあるのだろう。ただそれを踏み込めるのは大人になってから。


 今の自分達に出来ることはない。



「それではわたくしはこちらなので」


「わ、わたしもこっち」


「じゃあまた明日ね、二人とも」


 そんな会話をしているうちに二人とも別れ、一人きりの帰り道になる.


(長居したつもりはなかったけど、もう夜だな......)


 立ち止まってすっかり暗くなった空を眺める。


(フランが言っていた事が本当なら、希も同じ空を見てるってことだよな)


 つい最近までまでそんなこと考えもしなかった。けど今は希も同じ世界にいて、同じ空を見ている。今彼女はどこで何をしているのだろうか。


(会えるなら会いたい。けど会って、何を話せばいいんだ)


 姿も声も違う俺に対して、希はどう思うのだろうか。


「貴女がセフィ·カリステラちゃん、よね」


 不意にどこからかセフィの名前を呼ぶ声が聞こえる。振り替えると、長身の白いロープを着た女性が、同じ格好をした人間を引き連れ、こちらを見ていた。


(な、何だ、不審者か?)


 明らかに異質な彼女らに、俺は身構える。


「あ、そんなに身構えなくて大丈夫よ。誘拐しにきたとかそういうのじゃないから」


「誰がどう見てもあやしいんだけど......」


「私たちは貴女と話をしにきただけ」


「私は話すことなんてない」


 俺は謎の集団から逃げるように背を向けて歩き出す。どこからどう見ても怪しい宗教団体にしか見えないし、そんな集団に話があると言われてはいそうですか、何て言うわけない。


 しかし次に女性が発した言葉に俺は足を止めた。


「聖者転生計画」


「え?」


「やはり聞き覚えがありますよね。貴女の強力な魔力を持った人間は、そう簡単には生まれません」


「どうして、それを」


「ようやく私の話を聞いてくれる気になりましたね」


「......」


 警戒が解けたわけではない。むしろそれを知っていることに対して、不信感が強くなった。


(何者なんだ、こいつら)


「私達は『聖女教会』。貴女のお母さんも所属していた団体です」


「お母さんが?」


「是非私達とお話、していただけませんか? 新たな聖女の子、セフィ·カリステラ様」


 ■□■□■□

「今日はやたら帰りが遅いと思って心配してたら、まさかナインちゃんが一緒だなんびっくりしたよ」


「お久しぶりです、ユシス様」


 夜道は危険ということでそのまま聖女教会の方々を連れて帰宅。ユシスには怒られるかと思いきや、彼女達と面識があるらしく大歓迎で彼女達を出迎えた。


「こうして直接会うのは五年ぶりか?」


「そうですね。最後にお会いしたのは、あの日以来ですから」


「早いもの、だな」


 五年前といえばちょうどお母さんが亡くなった年。改めて考えると時間の経過はあっという間だった。セフィも、その周りの人間も、五年という月日のなかで大きく変わった。


 あの時言葉を話せなかった俺は言葉と知識を得て、

 父ユシスも片親ながらセフィのことをしっかり育ててくれた。


(本当にあっという間、だったな......)


「それ今日はどうしたんだ? 娘に用事があるみたいだが」


「はい。セフィ様の事でユシス様に話しておきたいことがありまして」


「話しておきたいこと? というかセフィ、“様“?」


「今現在セフィ様はリラーシア学院に通学されていますよね?」


「ああ」


「リラーシアに通学しながらでいいんです。セフィ様に今からでも聖女としての仕事をさせてもらえませんか?」


「「え?」」


 セフィとユシスの声が重なった。

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