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手違い転生〜男の俺が聖女として人生を歩む〜  作者: りょう
間章 追ってやってきた少女
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第14話(裏)サバイバルピクニック

 日本でいう五月、皐の月に入って一週間ちょっとが過ぎた頃。

 私はシオンを引き連れてクラリス山を登山をしていた


「ノゾミ、私もう疲れたー」


「疲れたって、まだ一時間も登ってないわよ?」


「それでも疲れたの。休憩!」


「だから止めとけばよかったのに......」


 しかし言い出しっぺの本人が一時間も満たずに根を上げ、登山と呼ぶにはほど遠い感じになりつつあって、私はため息をついた。


(こんな事になるなら、家で休んでおけばよかったなぁ)


「もう、みなさんの事なんて知りませんわ!」


 すっかりやる気をなくしたシオンを見て、今日の事を後悔しているとどこからか独り言が聞こえる。


「ねえシオン、今誰かの声しなかった?」


「うん。しかもまだ幼い子供の声聞こえた」


「こんな山の中で? もし一人なら危ないよ」


「危ないって、どうするつもりなの?」


「私達が保護してあげなきゃ」


「あ、ちょっと待ってよノゾミ!」


 私はシオンが止める間もなく、さっきの声と音を頼りに探してみる。声はかなり近いところから聞こえた。ならすぐに発見できるかもしれない。


(こんな山のなかで女の子が一人きりなんて、一体誰がそんなことをさせるのよ)


 探し続けて数分、私とシオンは金髪の女の子を見つける。年齢は見た目からして六歳ほど。女の子はどこかの学校の制服を着ていた。


「貴女大丈夫? こんな山の中で一人きりなんて、お母さんやお父さんは?」


「な、なんですのいきなり。わ、わたくしは今えんそく中でいそがしいんですのよ」


「遠足で忙しいってどういうことよそれ」


「ねえノゾミ、この子の制服って確か聖リラーシアのやつじゃない? ほら、この山で遠足するとか言っていた」


「聖リラーシア学院?!」


 ここに来てまさかの単語が出てきて私はおどろいたこえをあげる。聖リラーシア学院は勿論、光が通っている(可能性が高い)聖女育成の教育校だ。制服は何度か見かけたことはあっても、どこの制服かは知らなかったので、私は心の中で歓喜の声を上げた。


(や、やっと見つけたー!)


 苦節五年。ようやく光に繋がる(かもしれない)道が見つかった。その嬉しさに心の中で喜んでいるせいか、シオン達には完全にヤバい人に見えているらしく......。


「ど、どうしたのノゾミ、なんか興奮してない?」


「べ、別に興奮なんかしてない! はぁはぁ」


「......今のノゾミすごく怖いよ?」


「おねえさん、わたくしから離れてくれませんか?」


「本当に何でもないってば!」


 これ以上は本当に犯罪者と間違われそうなので、一旦落ち着くことにした。


「すぅ......はぁ......」


 閑話休題。


「じゃあフランちゃんは、お友達と喧嘩してはぐれちゃったってこと?」


「だ、だってお二人とも全くやる気がかんじられませんでしたの.....。はじめてのの学校行事負けたくありませんのに」


 女の子、フランちゃんの名前と事情を聞いた私が話をまとめると、フランちゃんは少し涙目になりながらそう答える。



「ところでさっきも気になったんだけど、ただの遠足なのにどうして勝負とかの話になっているの?」


「もしかしてお姉さん、なにも知りませんの? わたくしたちのがっこうのえんそくは......」


 フランちゃんがご丁寧に遠足について説明してくれる。それを聞いた私はただただ愕然とした。


「な、何よそれ。小学一年生がやる行事じゃないでしょ!」


「ひっ」


「お、落ちついてノゾミ。フランちゃんに言っても仕方ないでしょ?」


「何でシオンはそんなに冷静なの? もしかして知ってたの?」


「う、うん。話には聞いたことがある、かな」


 何故か歯切れが悪いシオン。

 もし光がこの学院に通っていたら、今この瞬間も彼はフランちゃんと同じように、遠足と言う名の地獄を味わっていることになる。


(いくら育成校でもこれはやりすぎよ)


 小学生と言ってもまだ小さな子供。その子達を山の中に放置して、順位を競わせるなんて普通の人がやることではない。


「ノゾミの気持ちは分かるけど、私達がここで何を言っても意味ないよ。それよりフランちゃんを何とかするんでしょ?」


「そ、そうだけど......」


「わたくしは助けてもらうつもりはありませんわよ。えんそくに大人の手出しは禁止されていますもの」


「それならどうするの? 一人で行動するの?」


「ええ。わたくしは一人で大丈夫ですから」


 フランちゃんはそう言うと、私達を置いてその場から離れる。確かにそれが規則なら私達に出来ることはない。ここで何かをすれば彼女に迷惑をかけてしまう。


 だからせめて、私は彼女に聞きたい。


「待ってフランちゃん」


「まだ何か?」


「おかしなことを聞くかもしれないけど、フランちゃんのクラスにセフィっていう女の子はいる?」


「セフィ? あの子のことなら知っていますわよ」


「本当?!」


 セフィが......光がリラーシアに通っていて、今日の遠足にも参加している。


(会える、もうすぐ会える。光に)


「彼女はわたくしのライバルになる存在です。先日は少々ひどいことを言ってしまいましたが......」


「教えてくれてありがとう、フランちゃん!」


「ちょっとノゾミ!? また一人で......ごめんねフランちゃん、遠足気を付けてね」


 私はいてもたってもいられずに駆け出していた。


「な、なんだったんですの、あの二人は......。それにしてもシオンと言う名前、どこかで聞いたことがあるある気がしますわね」


 ■□■□■□

「待ってってノゾミ! さっきからさっきから様子が変だよ!」


 駆け出すこと数分。シオンに呼び止められるまで走った私は、呼吸を落ち着かせながらシオンの方に振り返った。


「ごめんねシオン。迷惑かけて」


「め、迷惑じゃないけど、フランちゃんに会ってから誰かを探しているみたいだけど」


「ちょっと、ね。どうしても会いたい子がいるの」


「それってさっき聞いたセフィって女の子?」


「うん」


 正確にはその子に転生した光だけど、シオンにはその辺りの話しはしていないので、あくまでセフィに会いたい事にした。


「今までろくに街から出てないし、昼間は寝ているのにどうしてその女の子のことを知っているの?」


「す、少し前に縁があって、ね。べ、別になにか特別なことがあるわけじゃないよ?」


「それにしてはさっきの様子は変だったけど......」


「き、気のせいよ、気のせい」


「怪しい......」


「ははっ」


 ごまかし笑いをする私。シオンもリラーシアのことでなにか隠していた様子だったし、お互い様だ。


「でも今日はその子に会うのは諦めた方がいいと思うよ?」


「どうして?」


「フランちゃんも言っていたけど、リラーシアの遠足って今後の学院生活に大きく影響するの。それを邪魔するのはよくないと思うよ」


「それは......そうかもしれないけど」


 光が遠足に参加しているなら、きっと学校でテストをするのと同じくらい大事な行事なのかもしれない。それを邪魔するのは彼にかえって迷惑をかけることになる。それは私も不本意だけど......。


(心配だなぁ......光)


 それでも今はグッと堪える以外の選択肢はなかった。

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