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第102話聖女のお誘い

 フランが転校してから一ヶ月後。季節は冬になり時々雪も降り始めたある日。リラーシア学院はあるイベントが行われた。


「一学期のときもおもったけど、どうしてこんなに学院長の話ってながいんだろう」


「まあ、しかたないよ。学院長ってこういう時しか話ができないし」


「それもそうだよね。たぶん話せる相手がいなくてさびしいんだよ」


「二人とも、まだ終業式中なのに、すごい失礼ですよ」


 この日リラーシア学院は二学期のカリキュラムを全て終え、終業式を迎えた。明日から冬休みということもあり皆が浮き足立つ中で、ユイがこんな提案をしてきた。


「お母さんがセフィちゃんとアリエッテちゃんにお話がしたいらしくて、あしたから聖夜祭まで聖女教会に泊まっていかないかって提案してきたんです」


「あたし達に」


「お話?」


「はい。具体的なないようは聞いていないのですが、大事な話みたいで」


(このタイミングで大事な話って、どう考えても聖夜祭関連の話だと思うけど、それだけの為にわざわざ聖女教会に泊まらせる理由がないよな)


 何よりユイの雰囲気からして、明るい話題には見えない。


「あたしにも話があるってどういうことなんだろう。こういう話って大体はセフィだけが呼ばれるパターンだと思っていたんだけど」


「それがお母さんはアリエッテちゃんも指名してきたんです。そのりゆうも話してくれませんでしたが、二人に対してのだいじな話なのはまちがいないです」


「なるほど......とりあえずおとうさんに相談してみる」


「あたしもいちおう聞いてみるね」


 俺はその話を家に帰った後にユシスに話してみた。


「ユリエル様が、セフィに?」


「うん。正確にはもう一人いるけど、たぶん大事な話だって」


「それって......いや、まさかな」


「なにか心当たりがあるの? おとうさん」


「いや、たぶん気のせいだとおもう。とりあえず行ってくるのはいいが、一人じゃ危険だから彼女と一緒に行ってくれ」


 そうユシスが指名した彼女は、スイカさんの事だと思ったが、すっかり忘れていたもう一人の人物だった。


「さいきん見かけないって思っていたけど、どこに行っていたの? フィア」


「私は天使だから普段は見えなくていい。ちゃんとセフィを護る仕事はしていた」


「しごとはしていたって......」


 なら運動会での襲撃はどう説明をしてくれるだろうか。突然現れた反聖女教会という存在。セフィはそれに危うく命を奪われかけた。


(もし彼女達があの時本気だったら......)


 そう考えると背筋が凍りさえする。


「反聖女教会との話は聞いている。本当だったら真っ先に可能性を考えるべき存在だった。だから」


 フィアはそこまで言うと、突然地面に足と手をつき、頭を下げてきた。


 いわゆる土下座。


 彼女は自分の失敗を土下座という形で、何歳も年下のセフィに対して謝罪してきたのだ。


「言い訳はしない。この件は完全に私の落ち度だった。守護天使なんて名前ばかりで、肝心なときになにもできなかった」


「フィア、あたまをあげてよ。わたしは貴女に謝罪なんてなにも望んでない」


「でもここまでしないと、私の気が済まない。だからこれからは、ソフィとの約束を守るためにも、貴女の側から離れない、絶対」


 フィアの強い意志に俺は言葉を失う。それだけに彼女にとっての守護天使という役目は、もしかしたら命より大事なものなのかもしれない。


(いや、かもじゃなくて本気でそう思っているかもしれないな)


「まあこんいう状態だから、今回は彼女と一緒に聖女教会に行ってくれないか? 彼女ならいつでもセフィを護れるだろ?」


「まあ、そうかもしれないけど。わたしはフィアがそこまで責任を感じる必要はないとおもうんだけどなぁ」


 そこまでしないと彼女の気が済まないらしいので、今回はフィアと一緒に聖女教会へと向かうことになったのだった。


 2

 二日後。


「お久しぶりです、ユリエル様。本日はお招きいただきありがとうございます」


「ありがとうございます」


「そんなに堅くならなくていいんですよ、二人とも。私が招待したのですから」


 今年三度目の聖女様との接見。分かってはいたが、相手は聖女なのでどうしてもお堅い挨拶になってしまう。


「ユイとも相変わらず仲良くしてくれているらしいので、本当に嬉しいです」


「ユイは私にとって大切な友だちですから、あたりまえですよ」


「あたしも同じです」


「本当母親として嬉しいことを言ってくれますね。ユイを学院に進学させて正解でした」


 その後軽い会話を挟み、ユリエル様はセフィ達を招待した理由を話した。


「二日後、ここで聖夜祭があるのは既にご存じですよね?」


「はい。私は去年参加させてもらいました」


「毎年この時期に聖女教会にて行われる神聖なイベントですが、今年は少し事情が変わってしまいました」


「事情が」


「変わった?」


 セフィとアリエッテの言葉が重なる。


「今年の聖夜祭ですが、ある組織が私の命を狙うと犯行声明を出してきたんです」


「はんこうせいめい?!」


「そ、その組織ってまさか」


「反聖女教会、セフィちゃんを襲撃した組織、そのものです」

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