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それぞれの明日

 無事、村に迎え入れてもらうことができた俺たちは、カイルの家で家族のごとく団欒としながら同じ時間を過ごす。


 昨晩もレアシオン家のおもてなしに甘んじていたわけだが、高貴すぎるが故の息苦しさというものを感じていた。


 そんなこんなで俺はいま、身内だけの環境で久々に深く息をついて心の底から身を休めている。


 みんなでゆったりとした時間を過ごしていると、唐突にリオンが話題を切り出した。




「なぁ、ところでよ、これからどうするつもりなんだ?」


「とりあえず、しばらくはユウガとこの村で過ごそうかと思ってる」




 そのことについては俺も考えていないわけではない。


 だが、実際問題としてユウガの存在があまり浸透していない今、考えなしに出歩いても混乱に見舞われるのが目に見えている。


 そして、不要な混乱を避けようと思うのであれば、俺たちが行動できる範囲は必然的に狭くなってしまう。


 となれば、時間をかけて少しずつ行動範囲を広げていく他に方法が思いつかない。




「それって、冒険はこれで終わりにするってことか?」




 俺が今時点の考えを答えると、リオンの表情がどこか晴れない顔つきへと変わっていく。




「――ううん。そんなつもりはないよ? ただ、ユウガのことをみんなに知ってもらうためには時間が要ると思うんだ。ごめん」




 正直言って、カイルやリオンと一緒にいた時間はすごく楽しかった。できることならば、今の関係を俺は手放したくなどない。


 だが、せっかく生まれ変わったのだから、そんな冒険の楽しさをユウガにも知ってもらいたい。


 そして、今度こそ……、生きることに楽しさを感じてほしい。




「そうだよな。――それじゃ、いつか4人で遊びまわれる日を信じて俺も力を貸すとするぜ。これからもよろしくな!」


「えっ、本当に!? こちらこそ、改めてよろしくね!」




 リオンはニカッと笑いながら、俺たちと一緒にこの村に留まることを決めた。







 詰まる話が終わると、少し早い気もするが夕食の準備を始めるため、俺は勢いよく立ち上がった。


 同じタイミングでカイルも立ち上がり、カイルは外に出て家の裏側に向かって歩いた。きっと、お風呂の準備を始めるのだろう。


 何だか、俺とカイルが初めて出会った日のことを思い出してしまう。




 俺たち4人は夕食を済ませ、我先にとお風呂へと向かっていく。


 順繰りに薪の量を調節しながら、最初にカイル、次にリオンと順々に湯船に浸かっていく。


 そして、ユウガが湯船に浸かっているところで、俺は待ちきれずにユウガが入っている湯船に身体を入れた。


 湯船に張ったお湯がザブーンと音を立てながら溢れ出ていった。




「ごめんユウガ、もう待ちきれなかったわ」


「はは……」




 ユウガは微笑みながらも、半分ほどのスペースを空けてくれた。




「はぁー、気持ち良い……」


「うん、風も心地良いし最高だよ」




 足を伸ばせる広いお風呂も捨てがたい。だが、やっぱりここで入るお風呂が風情があって俺は一番好きだ。




「お前たち、ホント気持ち良さそうに入るよな」


「それな。こんな気持ち良さそうに風呂に入ってるヤツは初めて見たぜ」




 俺たち湯船に浸かっている様子を呆れ果てた眼差しで見ながらカイルとリオンがそれぞれ呟いた。


 そうは言われても、気持ち良いのだから仕方がない。


 こればっかりは日本という国で生きてきた人間の性だよな。間違いなく。







 心行くまで入浴を堪能した俺たちは、陽が沈み切ったところでカイルの家の中へと戻った。


 これで今日も残すところは寝るだけとなり、2枚ある布団をみんなで手分けして床に敷いていく。


 布団の上に4人並んで寝転がり、他愛のない話をしながら夜の時間を過ごす。


 夜はこれからだと思っていたが、疲れが取り切れていないのか眠気がドッと押し寄せ始めた。




「じゃあ、みんなおやすみ」




 俺は眠気に抗うことを諦め、色の濃い一日に終わりを告げるよう眠りに就いた。


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