レアシオン家
しばらくの間、スカイバードに乗って風を感じていると、ポロッサが比にならないほどに栄える大きな街が見え始めた。
やがて、俺たちを乗せたスカイバードは王都の門番のもとで着陸し、俺たちはスカイバードを下車した。
門番に手紙を掲示しながらレアシオン家への訪問を伝えると、思っていたよりもトントン拍子に話が進み、無事、レアシオン家の中に通してもらうことができた。
「お待たせしたね。私がレアシオン家当主のウルフだ。君たちは?」
「初めまして、ツバサと申します。本日はポロッサの冒険者ギルドにいるアルフレッドさんから紹介で参りました」
使用人に案内された部屋の椅子に腰をかけて少し経ったところで、レアシオン家当主と思われる人物が姿を見せた。
俺はすぐさま立ち上がって挨拶をし、同時にアルフレッドから受け取っていた手紙を差し出す。
「何々、アルからか……」
ウルフは手紙を受け取ると早速、手紙を開いて読み始めた。
「――そういうことね。じゃあ、早速だけど話を聞かせてもらっても良いかな?」
しばらくしてウルフが手紙を読み終えると、
俺はアルフレッドに話したときと同様にアンガレイジで起こった出来事についてを話す。
「なるほどね、話は大体わかった。――スティーグ、そっちはどうだい?」
俺が話を終えると、ウルフは相槌を打ちながら俺たちの後ろに目線を向ける。
その瞬間、背中に猛烈な気配を感じ、俺たちはバッと後ろを振り向いた。
すると、青く光り輝く水晶玉を手に持ったスティーグが俺たちのすぐ後ろに立っており、ウルフの問いかけに口を開く。
「はい、この方々に嘘や偽りといったものは見られません。信用されて良いお話かと思われます」
スティーグの言葉を聞いてピンときた。
どうやら、あの手にある水晶玉で俺たちの素性を確認していたようだ。
水晶玉が青く光っていることから身の潔白は証明できているようで、俺はホッとして胸を撫で下ろす。
たしかに、その気になれば手紙程度であれば捏造は可能だ。街に認可されたスカイバードを利用して来たといっても、それが身の潔白の証明になるわけでもない。
そう考えると、彼らの行動に理解や納得ができないわけではない。
「そうか、ありがとう。今のアンガレイジの件だけど至急、綿密な調査を頼む」
「かしこまりました。では、早急に行って参ります」
スティーグによって俺たちの身の潔白が認められるやいなや、ウルフはアンガレイジの調査をスティーグに命じ、スティーグもすぐさま行動に移す。
そして、スティーグの姿が再び見えなくなると、ウルフは唐突に深々と頭を下げた。
「このような真似をしてしまった非礼を詫びさせてほしい。――そして、貴重な情報をありがとう。感謝する」
「い、いえ、と、とんでもないです。頭をお上げください」
あまりにも唐突なウルフの行動に、俺は言葉を選ぶ余裕もないままその場しのぎで言葉を返す。
俺の言葉が届いたか、ウルフは下げていた頭を徐々に上げ始める。
その姿に少しずつ俺も落ち着きを取り戻し、本題であったユウガの件についての見解を促す。
「あの……、それよりもユウガの件なんですが……」
「そうだったね。僕なら全然構わないよ?
先のアンガレイジの一件が効いたからかは不明だが、ウルフはユウガの受け入れに賛成を示してくれている。
その答えを聞いた瞬間、俺たちは礼儀も忘れて喜びの声を上げてしまった。
「ただ……」
「ただ?」
俺たちが喜び合っている中、ウルフが気にしていることがある様子で言葉を続ける。
俺たちは歓喜の声を止めてウルフに聞き返す。
「僕は良いと思っているけど、やっぱり抵抗がある人が多いということも事実だと思うんだ。それで、住む場所に宛てはあるのかい?」
「それは……」
ウルフが気にしていたことは、全くもってその通りというほかないことだった。
いくら国の当主の許しを得たとは言え、人々の魔族に対する抵抗がなくなるわけではない。むしろ、反対派がいて当然なことだ。
そんな中、俺たちが安全に住める場所を探すのが大変ということなど想像に容易い。
ただ、仮に住めそうな場所が見つからなかったとして、俺が住んでいた森であれば他人と接触することもないし問題はない。
「――だったら、俺が住んでる村なんてどうだ?」
ウルフの疑問に明確な回答を出せずにだんまりしていると、カイルが村での生活を提案した。




