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対決!ゴブリンキング

「なぁツバサ。どうして、あんな奴らを助けるんだ?」




 悲鳴が聞こえた場所に向かう途中、リオンが渋い顔で聞いてきた。


 今しがた、俺たちに喧嘩を売って来た奴らの助けに向かってるんだから、疑問に思うのも当然か。


 本来であれば、きちんと話したいところだが、一刻を争う事態を目前に込み入った話をする余裕はない。


 そんな訳で、これでリオンが納得するかは分からないが、俺が想っていることを簡潔に答える。




「ここで見て見ぬ振りをして、万が一にも取り返しのつかないことになったなら、きっと後悔が残るから。例え――、それが気に入らない奴だったとしてもね」




 俺が助けに向かうと決めた理由は極めて単純で、これが全て。


 と言うのも、生前に一度だけ、俺の心の弱さが招いた事態によって失意のどん底に叩きつけられたことがあった。


 だから、俺はもう見て見ぬ振りだけはしないと心から誓っている。


 もう二度と――、あのときの後悔を繰り返さないためにも。




「ふーん……。そんなもんなのかなぁ」


「昼前も話したけど、ホントにこういう奴なんだよ。ツバサは」




 リオンは俺の行動に反対こそしていないが案の定、俺の思いまでは分かっていない様子をしていた。


 だが、それも無理はない。普通であれば、そんな出来事などそうそう起こり得ないはずだから。


 もっとも、こんな気持ちは、知らないに越したことはないが。







 この道をしばらく駆け抜けていくと、やがて、大きな図体をした1匹のモンスターとイヴァンたちの姿が見え始める。


 既に疲弊しているのか動きが鈍く見えるイヴァンたちに対し、大きなモンスターは腕を振り上げ、次なる攻撃の姿勢に入っていた。


 それが見えた瞬間、俺は棒を深く握り込みつつ、両脇を締めて体勢を整える。


 そして、身体強化の魔法の出力を上げるとともに地面を強く蹴り上げ、そのモンスターを目掛けて一直線に突撃する。




「えいやーっ!」




 モンスターは俺の掛け声に気が付くと、振り上げた腕を防御のためか即座に下ろし始める。


 ――が、防御の体勢には間に合わず、俺の放った突きは、途中で勢いを落とすことのないまま当たった。


 流石の巨体もこれには耐えられなかったか、そのモンスターは勢いに押されて仰向けに倒れ込んだ。


 それから間もなくして到着したカイルとリオンが、モンスターが倒れている間にイヴァンたちの介抱を始める。




「なっ……どうして」


「感謝だったら、俺じゃなくてツバサにするんだな」




 俺たちが助太刀に入ったことに困惑するイヴァンを、リオンは適当にあしらう。


 そして、イヴァンたちの介抱を進めている間に、倒れていたモンスターも身を起こした。


 そのモンスターは俺の方を見るや否や、激しい怒り声を上げて激昂した様子を露わにする。




「ツバサ、大丈夫か?」


「アイツらは大丈夫そうだし、俺たちも加勢するぜ」




 俺が再び棒を構えていると、加勢に入ったリオンとカイルもそれぞれ武器を構えた。


 ただ、当のゴブリンキングは、俺のことしか目に見えていない様子だが……。


 ところで、パッと見た感じではゴブリンの一種に思えるが、さっき見たオークキングとも似ている気がする。


 大きさについても、オークキングと比べると僅かだがこちらの方が小さく見える。まぁ、それでも十分に大きいのだが……。




「うん、ありがと。――それより、このモンスターって何?」


「こいつは多分、ゴブリンキングだ」




 イヴァンが呟くように答えた。


 オークキングとゴブリンキングの違いがイマイチ分からないが、どっちもそれなりに強いモンスターってことは恐らく変わらない。


 そうこう考えていると、ゴブリンキングが俺を目掛けて殴りかかって来た。




 ゴブリンキングの攻撃をかわしつつ、ゴブリンキングの背後を取るとそのまま棒で叩きつける。


 俺の攻撃はしっかりと当たったが、力が足りておらずペチンというような虚しい音が微かに響いた。


 さっきの攻撃は、ありったけの助走があったから通用したが、流石に助走なしでは身体の重量差を覆すのは無理みたいだ。


 うーん、これは困ったな……。


 取り敢えず、俺はバックステップでゴブリンキングから距離を取って、守りの体勢に入る。




 ゴブリンキングは相変わらず俺に殴りかって来ているが、通常サイズのゴブリンと同様でその攻撃には知性が感じられず、単調なものが多い。


 故にほとんどの攻撃が読みやすく、回避自体は割と容易いのが救い。


 唯一、問題としているこちら側の攻撃手段だが、魔法攻撃を中心に仕掛けてみるのはどうだろうか?


 これであれば、重量差は問題にならないはず。やってみる価値は大いにありそうだ。







「何でゴブリンキングが……。君たちは無事か?」




 俺たちが防戦を強いられている中、駆けつけたエリックが驚いている素振りを見せる。


 イヴァンたちはともかく、俺たちは今のところ無事。


 むしろ、マークの状況の方が気になって仕方ないくらいだ。




「はいっ! 僕らなら大丈夫です」


「良かった。こいつはBランク程度の実力はないと危ない相手だ。ここからは俺が引き取るから、君たちは早く逃げなさい!」




 イヴァンの言ってた通り、こいつはゴブリンキングで間違いないらしい。


 ただ、Bランクで戦える程度ってことは、少なくともオークキングよりは格下ってことになるよな。


 もし、そうだとするなら、オークキングに一人で立ち向かっているマークの方が危険な気がしてならない。


 たしかに、俺たちも危険かもしれないが、俺たちは人数で優位な分、戦略に幅を利かせることができる。


 そう考えた俺は、エリックに一つの提案を投げ掛ける。




「――エリックさん。向こうで現れたオークキングをマークさんが一人で足止めしています」


「何っ!? それは本当か?」


「はい、本当です。ですので、ここは俺たちで何とか凌ぐんで、エリックさんはマークさんに加勢してあげてください!」




 俺が戦力の分散について提案を出すと、エリックもマークと同じように苦渋の表情で考え始める。


 エリックが悩むことは承知の上だが、これ以外の案が俺にはどうにも思い付かなかった。




「――仕方ないか……。ただし、君たちも無理だけは絶対にしないこと! わかったね?」




 どうやら、エリックもゴブリンキングとオークキングに対する打開策は、何も思い付かなかったらしい。


 最後、エリックはそう言い残すと、申し訳なさそうな表情をしながら、俺が指さす方にダッシュで向かった。


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