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開戦

 最後尾に位置していた俺たちが乗るスカイバードも、同乗メンバと会話を続けているうちにイレナルム鉱山に到着した。


 早速、俺たちもスカイバードから降り、先に到着している冒険者たちに合流する。それから程なくして、一緒にいたマークさんから集合の声がかかった。


「さて、みんないるね? ――それじゃ、これからクエストを開始するにあたってわかっていることの情報を共有しますのでよく聞いてください。」


 マークさんの発する声に呼応するように、ここに集まる冒険者の全員が目線をマークさんの方に向けた。


「今回、問題となっているゴブリンの村についてギルドでも調査を進めていますが、その正確な規模まではわかっていません。――ただ、ギルドがここ数日の間に受けた目撃報告の数から、それなりの規模であることが推測されます。ですので、敵がゴブリンとはいえ、決して油断はしないでください」


 ふむふむ――、ギルドの見解としては、ゴブリンの村の規模はそこそこ大き目と見ているわけか……。とはいえ、厄介なのはその数であって、ゴブリン個々は大して強くない。故に手数を確保する意味合いで、俺たちのような低ランクの冒険者を可能な限りで招集したというわけか。


「次に今回のクエストで倒したゴブリンの残骸ですが、こちらは後日にギルドで対応する手筈になっていますので放置で構いません」


 こんな話が出る理由も、ゴブリンの残骸の売れる部位がほとんどないからだろう。ゴブリンから抽出される脂は辛うじて売れるらしいが、それも大した金になるわけではない。先日、ゴブリンを倒したあとのカイルの悪戦苦闘を知っている身としては、持ち込む手間を踏まえるとプラスと言えるのかが疑問なまである。


 今回のクエストでは、倒したあとの残骸の後処理はギルドが担ってくれるとのこと。もっとも、ギルドの都合で集められた上、手間のかかる残骸の後処理まで各自で……なんて話の方がおかしい気もするが。


「あっ――もちろんですが、お持ち帰りしたい人がいれば好きに持って帰っていただいても構いません」

「絶っ対にいらねぇ……」


 最後、マークさんが補足を入れると、カイルが小声で私怨を感じさせる反応を見せた。まぁ、あのときのカイルは本当にすごかったからなぁ……。


「僕からの話はこれで以上です。最後に――エリックから何か一言はある?」

「そうだな――、滅多にあることではないが、万が一の場合は何よりもまずは生還することを最優先に考えて行動すること。ターゲットはゴブリンの村だが外での活動である以上、何があるかはわからない――ということは絶対に忘れるな。俺からも以上だ」

「それじゃ、我々からの話はこれで以上です。では――、これよりゴブリン掃討を開始します!」


 マークさんがクエスト開始を高らかに宣言すると、多くの冒険者たちが我先にと飛び出していった。


「よっしゃ! ゴブリンは俺が倒しまくってやるぜ!」

「俺だって負けねえぞ!」


 積極的なのはよいことと思うが、マークさんやエリックさんの話した内容がちゃんと届いているのか心配になるな……。そんなことを思いながらも、俺はアイテムボックスからいつもの棒を取り出した。


「おっ、それがツバサの武器か? 本当に棒なんだな」

「そりゃあ、俺にとってはこれが一番使い慣れてる武器からね。――それじゃ、俺たちも行こっか」


 他の冒険者たちより一足遅れたが、俺たちも戦場となるゴブリンの村に向かった。





 鉱山の麓に広がる森に入ると、他の冒険者たちによる攻撃がすでに始まっていた。突然の襲撃にも関わらず、ゴブリンたちが次々と迎撃に出てきて、俺たち冒険者との攻防戦を繰り広げている。そんな中、瞬く間に俺たちもゴブリンの迎撃対象となり、複数のゴブリンたちに取り囲まれた。


「カイル、リオン。準備はいい?」

「あぁ、いつでもいいぜ」

「俺もだ」


 俺たちはすぐさま背中を合わせるように立ち、各々が得意とする武器を構える。そして、体勢を整えるやいなや、こちらへ武器を向けながらじりじりと迫ってくるゴブリンを迎え撃った。


 当然のことながら、今さらゴブリン程度に苦戦する要素もなく、何事もないまま撃破に至る。それはカイルやリオンも同じで、俺たちを取り囲んでいたゴブリンたちは一匹残らず残骸と化した。


「おっ? ツバサもカイルも中々やるじゃん」

「へへっ、そういうリオンもね?」


 俺たちの戦闘を直に見たリオンが称賛の言葉を口にした。俺の方もカイルの剣術は言わずもがな、リオンの放つ槍術も思っていた以上のものだと感じている。そもそも、カイルやリオンの強さはまさしくこの世界を生き抜くために身につけた強さであり、俺なんかの強さとはわけが違う。




「おい、そんな雑魚を少し倒した程度で粋がってんじゃねーよ」

「「そうだそうだ!」」


 俺たちが互いに称え合う中、突如、一組の冒険者グループが割って入ってきた。


「何だおま……」

「待って――僕たちに何か用ですか?」


 先に反応したリオンを制止し、割って入って来た冒険者グループの人たちに鋭い視線を向ける。


「何だよその目……、生意気なヤツだなぁ。――どうやって、ギルマスたちを認めさせたのかは知らないけど、ガキはガキらしくしてろよ」


 は? 生意気だって? ケンカを売ってきたのはそちらの方だろうに何を言っているんだ?


 ただ、俺たちのことが気に入らない連中ということだけははっきりわかる。許されるのであれば今すぐにでも叩き伏せたいところだが、グッと拳を握って何とか耐える。


「おーい、どうしたんだい君たち!」


 俺たちと不良グループで一触即発する中、マークさんが救世主の如く姿を見せた。


「チッ……、おい、行くぞお前ら」

「「は……、はい!」」


 マークさんの登場で都合が悪くなったのか、不良グループは逃げるようにこの場を去っていった。


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