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気分爽快!空の旅

Merry Xmas!

「すげぇ……、こんな景色、初めて見たかもしれない」


 俺たちを乗せたスカイバードはある程度の高さに到達したところで羽ばたきを止めた。下を覗き込んでみると、ついさっきまで自分の足で歩いていたポロッサの街並みが遠く感じるほどになっていた。生前にも一度、都内にあった高層ビルの最上階から景色を一望する機会があったが、それともまた違った迫力がある。


「どうだ? こんな絶景、中々見れるものじゃないだろ?」

「そうですね」


 思っていたことが声に出てしまっていたのか、御者がこれを売りの一つと言わんばかりに推してきた。実際、高層ビルのような極端に高い建造物がないこの街だと、この景色は気軽に楽しめるものではないだろうから当然か。カイルでさえも目の前に広がる景色に見惚れているくらいだからな。


 しばしの眺望タイムのあと、御者の命令によって俺たちを乗せるスカイバードはイレナルム鉱山の方面が前に向くよう、その場でゆっくりと旋回をはじめる。そして、すべての準備が整うとイレナルム鉱山に向かって飛行がはじまった。




「ところで、イレナルム鉱山まではどのくらいかかるんですか?」

「そうだな……、天候次第だが今は風向きも悪くないし、このペースなら夕方を迎える前には着けると思うぞ」


 スカイバードは依然として、風をも切ることができそうな速度で飛行を続けている。俺は自分の身体が空中に放り出されないよう、前に座るカイルの腰に回していた手にぐっと力を加えた。


 そういえば……カイルって結構、腹筋あるな。ひょんなことから少年に密着する正当な理由ができてしまったが、あくまでこれは不可抗力というもの。これを絶好の機会だなんていう卑しい思いは――、ほんのちょっとしかないぞ!





「おい、見えるか? あれがイレナルム鉱山だ。もうすぐ目的地に着くぞ!」


 ほんの少しの卑しい思いを頭に思い浮かべているうちに、イレナルム鉱山がすぐそこまで近づいていた。御者の言葉で下を覗き見ると、ここが魔法が存在する世界だということすら忘れさせてしまうような炭鉱が広がっていた。


「着地はあの辺りでいいか?」

「はい、大丈夫です」


 適当な広場に着地してもらい俺たちがスカイバードから降りると、御者は来た経路を戻るようにスカイバードで飛び去って行った。


「それじゃ、依頼主さんのいる場所を探しに行こっか」

「あぁ、そうだな」


 俺は座りっぱなしで凝り固まった身体を大きく伸ばしながらカイルに声をかけると、カイルも同じように身体を伸ばしながら答えた。依頼主を探すため、まずはスカイバードから見下ろしたときに見えた集落に向かって歩きはじめる。




「すみません。俺たち、こちらの炭鉱の依頼を見てポロッサの冒険者ギルドから来た者なのですが……」

「おぉ、君たちがそうか。案内するから付いてきて」


 集落に入り適当な人を捉まえて依頼主の居場所について尋ねてみると、待っていましたと言わんばかりの反応で早くも依頼主のもとに案内してもらうこととなった。


「グレンさん、依頼を受けてくれる冒険者の人が来ました!」

「おぉ、来てくれたのか! 俺がここの集落長でクエストの依頼をしたグレンだ。よろしくな」


 俺たちは案内された先で、今回のクエストの依頼主であるグレンさんという屈強な見た目をした人に出迎えられた。グレンさんの挨拶につづけて俺たちも簡単に挨拶を済ませると、一息つく暇もないまま本題に突入した。


 グレンさんの話によると、どうやら最近になってここから近くにある坑道の一つがゴブリンの集団に占拠されたとのことで、そのゴブリンたちを追い払って坑道を取り返したいというのが今回の依頼だった。それ自体は単純明快な内容だし、今のところは容易に達成できそうと思っているが……。


「依頼の内容はわかったのですが……気になったことがあるので、失礼を承知でお聞きしてもいいですか?」

「ん? 何だ?」


 気になったことというのはグレンさんをはじめ、この集落で見える人のほとんどが大柄で屈強な身体をしているように見えたこと。俺もまだ図鑑でしか見たことはないが、ゴブリン程度であれば集落の人たちだけでも十分に対応できそうにも思える。人を見た目だけで判断するのが失礼なのは承知だが、この程度の内容にクエスト報酬のような予算をかける必要性に疑問を感じた。


「なるほどな。何かと思ったがそんなことか。そりゃ、俺たちは採掘に関しちゃプロだが、モンスターとの戦闘は素人も同然。戦闘で怪我でもして、採掘ができなくなれば本末転倒だ。であれば、戦闘は戦闘のプロに任せる。何もおかしなことはないだろ?」

「たしかにそうですね。変なことを聞いちゃいましたね」


 グレンさんは笑いながら俺の疑問に答えた。実際、グレンさんの言うとおりで、たかがゴブリンとはいえ万が一の可能性が付きまとうのも事実。自分を基準に考えすぎているのは反省しなきゃだな。


「まぁ、何にせよだ。その坑道にいるゴブリンどもは君たちに任せるぜ。ゴブリンの数とか分からんから期間も君たちに任せるが、俺たちとしては早い方が嬉しいな」

「はい、たしかに引き受けました」


 グレンさんとの話が終わるなり、早速、俺とカイルの二人で問題となっている坑道の近くまで下見に行ってみることにした。


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