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防具の調達

 手続きが終わって冒険者ギルドを出るなり、俺はカイルに一つの提案をする。


「ねぇ、鉱山に向かう前にアルフレッドさんが言ってたお店に行ってみない?」

「そうだな。防具のことは俺も気になったし、少しだけど金もあるし行ってみようか」


 アルフレッドさんから聞いた店に行くことを決めると、俺たちは店があるらしい街の東側に向かって歩き出した。


 目的の武器屋を探しながら、多くの人が行き交う街中をキョロキョロと周りを見ながら歩く。そうしていると、小路に入ったところで一件の武器屋が目に入り込んだ。




「いらっしゃい。――おぉ、こりゃまた随分と若いお客さんだな」


 武具屋に入ると、ひとりの厳つい顔をした店主が俺たちを迎え入れた。


「すみません、冒険者ギルドのアルフレッドさんからこの店のことを聞いて来ました」

「ほぉ、アイツから聞いたのか。――ってことは、お前らも冒険者なのか?」

「はい。まだDランクになったばかりですけど……」

「いやいや、その年で冒険者ってだけでも大した話だぞ? お前らみたいな若いお客さんなんて滅多に来ないからな」


 アルフレッドさんの名前を出すと、途端に先ほどまで厳ついと感じた店主の表情がわずかに和らいだ。




「それで、お前たちは何が欲しくてうちに来たんだ?」


 少しの世間話の後、店主の方から本題である俺たちが探している物について問いかけられた。


 軽く店内を見まわしてみたが、並んでいる防具はどれも大人向けのもので俺たちの身体には合いそうにないものばかり。ひとまず、俺たちでも装備できそうな防具について尋ねてみよう。


「防具を見に来たんですが、俺たちでも装備できそうな防具って何かありますか?」

「なるほど……お前たちでも装備できそうな防具かぁ……。少しだが店の奥にあった気がするな。探してくるからちょっとだけ待ってな」


 俺たちが装備できる防具の有無を問うと、店主はあごに手を当てながら在庫確認のため店の奥に姿を消した。





「待たせたな。お前たちに合いそうな防具だが、すぐに用意できるものだとこれくらいだな」

「ありがとうございます」


 しばらくして店の奥から店主が戻ってくると、俺たちの前に六つの防具が並べられた。それらの防具は皮でできた身軽そうなものから金属でできた少し重そうなものと様々であり、正直、自分に合う防具の選び方がわからない。


「どうした? 何か悩んでいるのか?」

「えーと、自分たちに合う防具の選び方がわからなくて……」

「なるほどな。――そういうことなら、お前たちの武器や戦闘スタイルを教えてくれないか?」


 防具選びに困っていると、そんな俺たちを見かねたのか店主から救いの手が差し伸べられた。


「基本的には、この棒で相手との間合いを保ちながら隙を見つけて攻める感じで戦ってます。あとは――、場合によって魔法攻撃を織り交ぜることもあります」


 俺はアイテムボックスからいつもの棒を取り出し、それを見せながら自分の戦闘スタイルについて答えた。


「ほぉ、棒とはまた珍しいな。――で、そっちのお前は?」

「俺の武器は剣だが、同じように相手の隙を突いて仕留める戦い方がほとんどだな」


 俺に続いてカイルも剣を見せながら店主の質問に答えると、店主は少考して俺たちに合いそうな三つの防具を見繕ってくれた。


「今の話を聞いた感じだと、二人とも身軽で動きやすい防具の方が良さそうだな。――となると、皮や鱗をベースとしたこれらがいいだろうな」

「皮や鱗……ですか?」

「あぁ、そうだ。二人とも敏捷性を生かして戦うスタイルみたいだからな。金属のものと比べると防御性能は劣るが、これなら敏捷性への影響はそれほど出ないはずだ」


 なるほど……。防具と聞いて防御性能ばかりを見ていたが、たしかに敏捷性が損なわれるのは厳しい。これまで自分が使用する目線で防具について考えたことが全然なかったこともあり、そこまで考えが届いていなかったな。


 さて、まずは三つの防具に絞れはしたが、ここからどうやって一つの防具を選ぼうか。最終的には俺たちの好みになるのだろうが、これら防具の違いがわからないことには決めようもない。


「すみません、これらの防具の違いがあれば教えてくれないでしょうか?」


 店主に残った防具のちがいを聞くと、店主はその一つ一つを手に取りながら防具の説明をはじめた。




「まず一つ目だが、これはブラックボアの毛皮から作った防具だ。防御性能はいたって平凡でこれといった特徴も特にない。その分、売値は安めで2400ギルだ」


 へぇ……ここ最近で散々お目にしてきたあのブラックボアの毛皮で作られた防具か。性能は平凡で特徴もない分、安く買える。ロールプレイングゲームだと最初の方の街で買えるような防具ってイメージで良いのかな。


 特筆するような情報もなかったし、ひとまず次の防具の説明も聞いてみよう。


「次に二つ目が、このリザードナイトの鱗から作った防具だ。コイツの売値は5800ギルでさっき紹介したブラックボアの毛皮から作った防具よりは高いが、その分防御性能も高いんだ」


 防具に触れてみると、こちらの方がブラックボアの毛皮から作った防具に比べて明らかに硬く、それでいて重さもほとんど変わらない。一つ目の防具と同様にシンプルではあるが、この値段の違いも頷ける。俺としては有力候補だが、きっとカイルも同じことを思っていそうだな。


 そんな風に考えていた中、店主は三つ目の防具の説明をはじめた。


「そして、最後のこれがマナラットの毛皮から作った防具だ。コイツは少し癖があってそのままだと防御性能はそこまで高くないんだが、魔力を使うことで硬化する性質があるんだ」

「魔力を……ですか?」

「あぁ、そうだ。ただ、魔力で硬化させたときの防御性能ならこの中では随一と言ってもいい。売値は使用者を選ぶ分、さっきの防具より少し安い5200ギルだ」


 つまり、ピーキーな性能というわけか。安定性には欠けるが、それでも魔力を使うことでリザードナイトの防具よりも硬さを発揮するのは魅力的だな。これはまた、少しばかり悩ましい性能の防具が出てきたな……。


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