スキル・ルール
白刃が閃く。
銀の線は弧を描き、正確な軌道でゴブリンの右腕を付け根から斬り落とした。
棍棒を握り締めたままの緑色の腕が宙を舞う。
何が起こったのかまだ理解できていないゴブリンは、呆けた表情でそれを見上げていた。
刹那、ゴブリンの顔が驚愕に歪められる前に。
僕は返す刃で魔物の首を跳ねた。
噴水の如く勢いよく噴出する鮮血をその身に浴びて、次の相手へ疾駆する。
ここはガレヴァン大森林。
目の前にはゴブリンの集団、総数四体。
今、一体倒したから残り三体か。
対するこちらの戦力は、僕とティファの二人だけ。
近接戦闘を得意とする僕が前に出て、後方に控えるティファは守護星の聖杖を構え、介入する機会を窺っていた。
神であるティファは魔物を攻撃しないと言っていた。
自分達が生み出したものを傷付けたくないとも言っていた。
その気持ちは分かるし、ティファにはティファの戦い方というものがある。
それを僕はもう何度も体験していた。
身に纏った返り血が光の粒に変化し、空へ舞い上がる中。
静観していたティファが動く。
「【光鎖】」
守護星の聖杖を掲げるティファが透明感溢れる声を響かせれば、ゴブリン達の足元が光輝く。
構築された魔法陣から宙へ伸びるのは光の鎖だ。
幾重もの光の尾を引き、光鎖が魔物へ襲い掛かる。
手足に巻き付き、ゴブリン達の動きを阻害させた。
もがく魔物を前に、僕はさらに身体を前へ押し出す。
「せいやぁっ!」
瞬時に距離を詰めて、横一線に剣を振り抜く。
ステータスにものを言わせた剣戟は次々とゴブリンの首を跳ねていき、戦闘は終わりを迎えた。
息を吐き出し、一息つく僕。
そこで身体に違和感を覚えた。
より正確にいうのならステータスにだ。
「あれ?」
「どうしました?」
「……強化した分のステータスパラメーターが消えてるんだ。元々のものに戻ってる……」
戦闘終了後の確認でステータスを見てみれば、パラメーターは初期のものになっていた。
強化した分はどこへいったのだろうかと若干困惑する僕の隣で、ティファが囁く。
「……隠されたスキル説明。シフォンのスキルは時間制限があるのですね」
「時間制限かぁ……」
なんとなく残念な気持ちになってしまう。
ステータスの上昇は永久的なものだと思っていたから。
でも、それでもこのスキルが強力なことに変わりは無いよね。
他にも何かないかもっと良くスキルを調べないと。
それから数度、魔物と戦ったことでスキルに関していくつか分かったことがある。
まず、ステータスの上昇は一時的なもの。
効果時間は大体十分。
だけど、少しでも経験値を再び割り振れば延長が可能だ。
その延長時間も十分。
つまり十分に満たない間にもう一度経験値を割り振ればさらに十分追加され、スキルの効果を延長できるのだ。
経験値の割り振り、スキル効果の延長も僕の頭の中で出来るので、戦闘中でも素早くステータスを強化できるのはありがたい。
以上が今回分かったことの全てだ。
回収した魔石も大量で、換金するのが今から楽しみだ。
一人の時とは比べものにならないほどの成果を手に、僕達は一度トヴァレへ戻ることにした。




