表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/35

最強の一撃

「今ですリタ様! 決めちゃってくださいっ!」


 銀色の鎖に拘束されたままの魔物の姿に安堵したクロエは、後方を振り返ってそう叫んだ。


 彼女の視線の先にいるのはリタだ。


 クロエが魔物の動きを止め、リタがとどめの一撃を放つ。


 それが二人の最善の策であり、現在進行形で進む作戦の概要でもあった。


「ふぅ……」


 とどめの一撃を任されたリタは剣を大地に突き刺して、吐息をこぼす。


 瞬間、彼女の足下に広がったのは精緻な魔法陣。


 今までのどれよりも大きく、強い光を振り撒くそれはリタの足下と魔物の足下に、それぞれ展開されていた。


 足下に広がる魔法陣を突き刺すように大地に刺さったままの剣をさらに深く押し込んで、リタは叫ぶ。


「凍え震え、泣き叫びなさい、【氷結世界】」


「グオオォッ……!?」


 魔物の足下に広がる魔法陣がカッっとまばゆい光を放つと同時に、暴力的な威力を秘めた吹雪が下から突き上げるようにのぼり立つ。


 魔法陣の内側だけ極寒の世界が訪れたように、雪と冷気が荒れ狂う。


 数秒の後、それらがおさまると魔法陣の内側には氷の柱がそそり立っていた。


 激しい温度差に空気は白く染まり、リタ達の方にも冷気が押し寄せる。


 強力な魔法を使ったからか、リタは激しく呼吸を乱しながらも真っ直ぐ氷の柱だけを見据える。


 氷柱の内部には、時を止めたように佇む魔物がいた。


 赤色の魔物は凍りついていたのだ。


「やった、のよね……?」


 自信の無い呟きがリタの口から漏れる。


 これで本当に終わったのか、という思考がこびりついて心から勝利を喜べずにいるのだ。


「リタ様! リタ様! リタ様っ!」


 言い様の無い不安に捕らわれるリタの心中など知らず、彼女の名前を連呼しながら駆け寄って来るのはクロエだった。


 だが、それはクロエだけでなく新人冒険者も自分達の命を救ってくれたリタの名前を叫び、各々が勝利の雄叫びを上げている。


 その様子に戸惑うリタであったが、ややあってクロエを受け入れるように両の腕を広げる。


 そこに、押し倒す勢いで飛び込むクロエは勢いよくリタに抱き付いた。


 無論、そのまま押し倒されないようにリタは全力で両の足に力を入れるが。


「さすがリタ様。まさしく最強の一撃でした。多少苦戦しましたが、この魔物もリタ様の敵ではありませんでしたね。あははっ! それでリタ様はいつ団長になるのですか?」


「団長はアルスでしょ……」


「アルス? 誰ですかその人は?」


「もう、ばか言わないの。こう見えても私それなりに疲れてるんだから」


「疲れる? リタ様が? あははっ、そんなことあり得ませんよ!」


「はいはいそうですね」


 笑みを浮かべて楽しげに語るクロエに、リタは呆れた様子でため息を吐き出す。


 いつものやり取りとはいえ、強力な魔物を倒した後では返す言葉も適当なものになってしまう。


 だが、そうはいってもリタの表情にも小さいながらも笑みが浮かんでいた。


(これで私もまた一つ強くなれたのかしら?)


 声に出さず、自らに問い掛けるような呟きを胸の内に溢して、リタは微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ