幼馴染みのヒトリゴト
私はシフォンを見捨てた。
一緒に冒険者になってダンジョンを攻略しようと約束してトヴァレまで来たのに、結局私は自分だけの夢を抱えて彼を置いていった。
だって仕方ない。
シフォンは冒険者としての器だけでなく、スキルすらまともではなかったのだから。
レベルは上がらない、頼みのスキルもエターナル・ワンでは何の役にも立たない。
昇華の儀を受けるために寄った神殿で、この世の終わりかのように絶望するシフォンに私は声を掛けられなかった。
私自身その時は困惑したし、動揺したのだ。
信じられない。
何でシフォンが。
こんな現実を受け入れたくないと。
でも、結局シフォンがエターナル・ワンなのは変わらない。
私やシフォンがどんなに否定しようとも。
それからの私達は暫くの間、ガレヴァン大森林でその日の生活に必要なお金を得るためだけに戦った。
受け入れられない現実から目を逸らすように、魔物と戦った。
レベルが上の私が前に出て、魔物を倒す。
シフォンが怪我をするよりも早く、ほふっていった。
その時のシフォンがどんな思いでいたか、あの頃の私はまだ知らない。
ただただ守らなくてはと、必死だったから。
考えもしなかった。
あぁ、馬鹿だなぁ……。
だけど、そんな日々も長くは続かなかった。
ある日、シフォンがパーティを解消しようと言ってきた。
私は「何で?」と訊いたけど、シフォンは俯いたまま両の拳を握り締めて、暫く黙っていた。
沈黙の果てにシフォンが訊かせてくれた言葉はどれも私を思う優しいものだったのに、私には何故か拒絶されているように思えた。
離れてくれ、近くに居たくない。
そんな風に聞こえたの。
事実シフォンからすれば、私の存在は見たくもない現実を無理矢理見せているように感じられただろう。
私だけが変わっていく、私だけが強くなっていく。
なのに自分だけ変わらず、そのままなのは苦しいよね。
だから、私はシフォンの言う通りにパーティを解消した。
彼のためだと自分を納得させて、私はシフォンを置いていったのだ。
それからの私は、ひたすら魔物と戦い続けた。
シフォン以外の誰かとパーティを組む気にはなれなかったから、いつも一人で未踏領域へ行っていた。
戦って、レベルを上げて、強くならないと。
シフォンを見捨てた意味がない。
そうでないと、私は許してもらえない。
シフォンに嫌われたまま、終わってしまう。
そんなのは嫌だ。
だったら戦わないと、ちゃんと強くならないと。
いつ壊れてもおかしくない装備で、スキル頼みの膨大な魔力が尽きるまで、傷だらけになるまで私はその想いを抱えて戦い続けた。
たぶん周囲の冒険者からは死にたがっているように見えていたかも。
いつもぎりぎりの勝負をしていたから。




