真のスキル
「僕のレベルが何故上がらないのか? 僕のスキルが何故役立たずなのか? 《エターナル・ワン》とは何なのか? 教えてほしい」
今一度、ここへ来た目的を確かな意思をもって言葉にする。
正面から僕の意思と視線を受け止めるティファは聖母のような笑みを滲ませ、口を開いた。
「《エターナル・ワン》とは人の身で神の領域へ届きうる可能性を秘める者、いずれ神殺しへ至る存在。それが《エターナル・ワン》。シフォン、あなたのことです」
「……え?」
「私たち落ちた神々だけでなく、創造神すら殺しうる力の塊。可能性の宝庫であるがためにお父様も容易にはその力を目覚めさせたくないのです。それゆえの封印。加護を与えるさいにレベルの上昇を止め、強すぎるスキルの性能を制限しています。シフォンが今も持ち続け、役立たずだというそのスキルはあなた本来の力ではないのですよ。シフォン、これがあなたが知りたがっていた《エターナル・ワン》の実態です」
「……そう、なんだ」
続く言葉が出てこなかった。
神殺し、力の封印、本来のスキル。
《エターナル・ワン》の真実。
そのどれも突拍子のない話で、少しずつしか呑み込めない。
少しずつしか理解できずにいた。
だけど、それでも確かなことがある。
「……悔しいなぁ。あぁ、ちくしょう……。それでも僕は、ただの《エターナル・ワン》だなんて、悔しいなぁ……」
神殺しに至る可能性があろうと、本来は強力なスキルを持っていようと、創造神の意向で僕の手元にはない。
それが本当に、あり得ないくらい歯がゆい。
結局は憧れの人に、リタには追いつけない事実が判明しただけ。
どうしようもない現実に俯く僕。
しかし、諦めるには早いと言うようにティファの柔らかな声が届く。
「……ですが、それはお父様の加護を与えられた者だから破れない封印なのです。同じ神、例えば私の加護で上書きすればレベルは上がらなくともシフォン本来のスキルを得られるはずです」
顔を勢いよく上げる。
変わらずティファは微笑んでいた。
「どうですかシフォン? それだけではあなたの希望になりませんか?」
「っ! ……なるよ。希望になるよぉ! だから、お願いだティファ! 僕に君の加護をください!」
「はい、喜んで」
レベルは上がらずとも本来のスキルを得たい。
憧れの背を、リタの背を追いかけたい。
もちろん、それもある。
だけど今の僕は、僕の元に現れた女神様の加護を純粋に与えてほしいと願っていたんだ。
誰よりも僕自身がそれを望んでいる。
「……あなたは私にとって初めての人。初めて加護を与える人です。ですが、気負う必要はありません。シフォンはシフォンの夢を、憧れの人を第一に追いかけてくださいね」
「……うん、約束するよ。僕はもう──立ち止まらない」
女神様の前で膝をつき、目を閉じる。
目の前にいるだろうティファの気配が近づき、その息遣いを間近に感じる。
うるさくなる鼓動を無理矢理落ち着かせると、額に柔らかく優しいくちづけをされた。
発熱する頭の奥に新たなステータスが浮かぶ。
《名前》シフォン・ユレイ
《レベル》1
《種族》人族
《主神》ティファ
筋力13
耐久9
魔力8
敏捷17
器用12
幸運4
《保有スキル》
【経験値増加・付与】
魔物を倒したさいの取得経験値増大。
なお、取得経験値をステータスパラメーターへ割り振れる。
《総取得経験値》597124987
新たな加護が宿り、新たな力が目覚める。
それが僕に囁く。
憧れを追いかけろと。




