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08 わんこな貴方は転生者!?

 はい、現在進行形で思考停止ちうのお嬢様ことネミアでございます。いろいろぶっちぎりすぎて運ばれるままになっていますが、馬車改め狼車なこの状況に物申したい。


 なぁーんでぼくは危険生物に引かれた馬車に運ばれてるのかなぁー!?


「そこはそれ、そちらの彼とあれこれ決めましてこうなりました」

「そのあれこれの部分にぼくまったく関与できてないんだけど!?」

「ぐぅあ……」


 何故ぼくはプレデターウルフに哀れみの視線を向けられているのでしょうか。




 しかし今更ながら目の前の彼に目を向けると……でけー!? プレデターウルフなんて生で見る機会なんてない(あったらとうに死んでるよ)のですが、ぼくなんか一口でマルカジリなのでは!?

 あと毛色が聞いてたのと全然違います。確か濃い茶に白いラインだったかと思っていたのですが思い違いだったんでしょうか。


それよりも何よりも今一番気になっているのが、常にぼくの前で左右にふりふりされるふさふさのしっぽ。見た目からしてふわっふわそうなその毛並みに視線は釘づけです。それがたまーにふわっと持ち上がって目の前を通るのですが……さわりてぇ……!


「ガイ氏、お嬢様が尻尾を御所望です」

「がうん」


 おーちゃんの指示に即座に反応したプレデターウルフは、前進する歩を進めつつもぼくの前にしっぽを差し出すように持ち上げた。手の届く位置まで差し出されたしっぼに恐る恐る触れると……


 うわぁ……やわらかぁい……うわぁぁ……


「お嬢様の幸せオーラが天に立ち上る勢いですね、保存保存と」

「がう……」


 …


「はぁあ堪能したぁこんなん反則だよぉもう離したくないよぉ」

「お嬢様が満足したようで何よりです」

「くぅん……」


 なんかやたらげんなりしたプレデターウルフに対して喜色満面なぼくたち。しかし本当にコレ危険指定された生き物なの? 人慣れしすぎた街中の動物みたいなんだけど。


「そこに関しましては彼自身に直接お聞きしてみますか? 《オープンチャンネル》」


 おーちゃんがそう言った矢先、ジッ、というわずかなノイズが耳に流れてくる。それと共にプレデターウルフが足を止め、こちらへと向き直る。


『今更だがは初めましてだ。プレデターウルフ亜種のガイ、旧名獅子倉 刈(ししくら がい)。いわゆる転生者ってやつらしい。よろしくな』


 ……は!?


「おおおおーちゃんどどどーいう事な」

「落ち着いて下さいお嬢様」『落ち着けぃ』


 錯乱しかけた所におーちゃんとガイさんから両頬をぷにぷにされる。はぅう肉球がぁ癒され……はっ


「いやいやそうじゃない、転生とかどーいう事なんですかなんでわんこなのですか!?」

『そこはそれ、なんか最近の流行りらしいぞ人外転生。もっともホントに前世なんてモンがあったのかなんて定かじゃないけどな』

「なんとも言えないところですね。精神体のエネルギー構造をいじくり回すのが趣味の高次元存在の話は枚挙にいとまがありませんので」

『まあそこはいいとしてもよ、せめて人型か意思疎通可な(しゃべれる)ようにしてくれよと……』


 なにやらガイさんも結構な苦労をなされてきたご様子。ともあれぼくは、なんであの時ぼくたちの所に来たのか聞いて見ることに。すると返ってきたお返事は


『だってあの格好明らかに転生者ホイホイだろ、あんだけあからさまなオーバーテクノロジー(ファンタジーガン無視)着こなしてたら絶対何かしらのチート系持ちだと思うわな』


 とのこと。しかしチート(イカサマ)とか酷い言われようである。……まったくもって否定できないですが。


「お嬢様、彼らの認識ではチート、という単語は優遇措置的な使われ方をしているご様子」

『あ、そういう事か。俺達の世代じゃチートはユニークスキルと並んで主人公(えこひいき)の代名詞みたいなもんだからな』

「うわぁ」


 そんなんがゴロゴロいてたまるか、そんな奴らばっかじゃ物語として破綻するのが目に見えるよ。


「お嬢様、人事ではありませんからね?」

『ああ、お前も間違いなくチート主人公だろうが』

「こんなヒョロ娘になんという言い草、いいでしょう是非君らも巻き込んであげましょう」

『「いいえ、私は遠慮しておきます」』




 ーーー ◆ ーーー




 はてさて町の入り口がようやく見えてきた訳ですが。ちなみに移動方法が馬車からガイさん直乗りにかわりました。その方が速かったしなにより乗り心地がですねうへへへへ……


「お嬢様お顔が大惨事でございます」


 おっといけない平常心平常心……と心を落ち着けていると今度はぐー、とお腹が鳴るわけで。


『だめだ、隙だらけすぎてとてもじゃないが放っておけんぞこいつ』

「それがいいのですよ」

『従者の姉ちゃんの欲望が駄々漏れな件について』


 まあ以前のどん底農奴生活から比べると、全力でガード下がりきってるのは自覚してるけど……二人の前だからだよ?

 《オープンチャンネル》の精神通話がいつでも本音トーク状態なせいか、思ったことは口に出さずともストレートに伝わるのです。……なんでぼくの独白がおーちゃんにいつも筒抜けなのとかずっと疑問に思ってたのだが、おーちゃんと常にこれで繋がっていたならそりゃあ筒抜けも当然ですよねぇー。ちょっと考えてみればコレすぐわかりそうなもんだよなぁ、と自分の間抜けさ加減にしょぼーん。

 んでガイさんとも道中おしゃべりしながら進んで来たわけなんだけど、ホント裏表のない人(?)だったのですよね。むしろ初対面なのにぼくの事気にかけてくれてたりして、なんかガイさん見てるとこれがお父さんなのかなあ、と思ったり……あ、ちょっと目から水分が……


「お嬢様、こちらをどうぞ」

『……なんかむずがいぃな、ったくよ』


 あ、おーちゃんハンカチナイスタイミング。ガイさんもしっぽで背中さすさすしないで泣きそう。くすん

 なんか周りからもびみょーに暖かい視線で迎えられながら、僕たちは町の入口、検問所へと歩を進めるのでした。

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