06 悪ノリは用法用量をお守り下さい
ひとまずの目的地に北の村を設定、そちらを目指して移動を開始した訳なのですが……個人的な理由でさっそく問題が発生。
「うおぁぉぁぁあ早い速いちょ待って止めてぇぇぃい!?」
『おや、瞬間最高速はお気に召しませんでしたか?』
「未経験者にいきなり最高速とかイジメにも程があるよ!?」
いやね知識ではどういう理論でどんな飛び方してるかはわかるんだよ?
でもね、知識と実体験は別物なんだよ! しかもぼくこれ初体験なの! わかる!? 危うく三度目の臨死体験するかと思ったよ!?
『ネミアの初体験ごちそうさました。あ、そろそろ目的地ですので着地いたしましょうか。お召し物も替える必要がおありでしょうから。おや、下履きもですか、フフフ……』
ちくしょうおぼえてやがれ。うぅ
「とりあえず慣れるまではスプリントなんとかでの飛行禁止で」
『わかりました。それでは次回は陸路をゆっくりと参りましょうか』
「頼むからトンでもチョイスな移動方法は勘弁してね?」
『……さすがに地上を歩くのにはっちゃけるのは難しいかと』
実はおーちゃんってサポートAIのふりした別の何かなんじゃないのかなぁ……中に誰かいるって言われても納得のイジリっぷりなんだけど。
まぁいいです。それはまたの機会に考えるとして、今は着替えとおーちゃんの偽装だ。
…
『あ、わたくしはこの随伴用ガードロイドをこちらの惑星文化風に着せ替えますか。こんな感じで行きますので承認お願いします』
「これ一式も結構いいクレジットになるのですね……必要経費と割り切りましょう、ぽちぽち」
ほう、先ほどのぼくの衣装チョイスはそれ込みなのね。というのも先ほど着陸後、前任者の間に合わせ衣類から着替えるためおーちゃんに他の衣類があるか確認した時に
『ネミアの機体適合率がわずかながら上昇しておりますね、現在の機体適合率ですとクレジットでの低価値変換型データショップが使用可能になります』
とのなんともイカサマめいた返答をいただいたため、衣類の調達……作成? をお願いしたわけですが。表示されたホログラフィックに表示されたぼく(デコレーション済み)を見、てびみょーに引き攣る顔が戻せないのです、はい。
『フフフ……、作業の合間に行っていたスタイルチェックが火を噴きますよ』
「着せ替えに火を噴くってどうなの? しかし……うん、これどこのお貴族様? 絶対誤解されてトラブるに鉄貨5枚」
『かわいいは正義、と申します故致し方なしです。というか賭け金があまりに出し渋りすぎませんか』
うっさい、長年蓄積された貧乏根性が染み出して来るのはもう習性なのです、仕方ないでしょう。
おーちゃんのコーディネートした衣装もぽちぽちして出来上がるのを待つことしばし。……上6桁くらいがまったく動かないから気にしませんでしたが、クレジットって一種のお金なのですよね?
あれ?
お金…、おかね……お、か、ね? お金!?
ちょっと待つのです、何ですがこの出鱈目な桁の数字は!? こんな無茶苦茶な資産持ってたのですかあのヒトトカゲさん!? しかもそれをなんの躊躇もなくポンとくれるとか……うへ、うへへへへ……
『ネミア、お顔がとんでもない事になっておりますよ?』
「……はうっ!?」
おーちゃんにぼくの顔面崩壊を指摘され、つい我に返ったタイミングで衣装の完成を知らせる音がなるのであった。ちーん
『衣装も出来上がったみたいですのでさっそくお着替えと参りましょうどうぞこちらにお入り下さい上から下まですべて私にお任せ下されば何も問題はありませんフフフ……』
「なんか必死すぎて危機感しか感じないのです」
いくら念話とはいえノンブレスでまくし立てられるて無用な不安がわいてくるのは仕方ないと思うのですがどうですか。とはいえいつまでもこうしてる訳にも行かないので意を決して《ウォードレス》の両手で囲った簡易着替え場所に入る。
そこに待ち構えていたのはおーちゃん操る女性型ガードロイド、それが衣装を……待て下履きをうにうに伸ばしながら近寄ってこないでなんかこわいから!
『さあぁネミア私に全てを委ねて下さぁいなぁにすぐに終わりますからねぇぇ』
「不安煽るような口調やめて!?」
…
なんとかかんとか着せ替えが終わりましたが、もう変わりすぎて何がおかしいのか自分では判別不能な程です。っておーちゃん前の下履きとかどこ持ってったの!? ……いいや、もう気にすまい
それはともかくはい、ここでぼくの現在の姿を確認しましょう。ででん
まず超短髪により寂しげだった頭部には地毛の色に合わせたさらさらロング&前髪さらりなウィッグをどさり。むぅ、なかなか重量感ありますねコレ。
さらに薔薇的な花とレース飾りのコサージュなんかを側頭部にトッピング。でもコサージュって胸元とかにつけるもんじゃ……?
もみあげには赤が映えるエクステを装着済み。胸元まで下がる髪は首を振るとふりふりと揺れ動きます。これで髪ブラみたいな真似も……いや、よそう、空しいだけだ。
続きまして首元には黒が基調のなか赤で紋様が刺繍されたチョーカー。農奴時代の首輪の跡がまだ取れないので隠すにもびったりです。
んでここからさらに悪乗りが加速。ワンピースは薄紅色で華やかなのですが、刺繍はともかくなんでラメ入りにしたのか。フリルもマシマシで明らかに文明レベルガン無視です。
さらにチラリと見えるおみ足に見えるは黒ストですよ。しかもこれ全体にドット柄が入っていて明らかにオーバーテクノロジーの産物、って雰囲気がひしひしと漂っております。
で、トドメが黒革のショートブーツ。つやつや光る革素材、それに加えゴム材と低反発素材によるストライプ複合靴底が隠れた異彩を放っております。
ついでにガリムキぼでーを極力隠蔽するためか、長手袋 (こちらもレースましまし)や、やけに肌触りのいい胸部インナーには乙女の屈辱がもりもり盛り込まれております。ガッデム
だ れ が こ こ ま で や れ と い っ た (呆)
……まぁぼくも着飾ってた直後は思わずはしゃいじゃったのは勘弁してほしい。だって女の子だもん。てへ
そして正気に戻ってからは事態の混迷ぶりに頭抱えてます。最初に見てたホロ画像は何だったのか……もしかして騙された!?
『かわいいは正義、と申します故致し方なしかと』