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18 少女はもまれながらも癒される

 ……んー、ようやくあの虹色空間から戻ってこれたみたいです。なんか久しぶりな感じもしますが……ん? か……体が……固いし重おぉぉい!? なにこの体中に重しつけられたような地味なだるさ!?


「三日近くも意識を放り出して横たわっていた弊害ですね」

「なぁによくある事じゃて、血行が戻ればじきによくなるわい。それまで無理に動くでない」


 あ、二人ともいつの間にかガードロイドに入ってすぐ横に立っていました。おーちゃんがいつもの女性型、少佐さんの方が男性型な訳ですが……少佐さんは顔に三本ラインの入ったバイザーゴーグルを装着しています。

 あ、おーちゃんがマッサージを始めてくれました。あうぅ、なんかジンジンしてきましたよ、感覚が戻ってきたのでしょうがむずがゆいのです。


「オーガスト、そっちは任せるぞぃ。儂はあちらさんへの説明があるでの」

「任されました、というか譲る気は一切ありませんが」


 そう言いながら少佐さんは扉に体を向ける。それとほぼ同時に、部屋の扉が凄まじい勢いでバァーーン! と音を立てる。だいたい予想は付くけどいったい誰でしょうか。


「ネミアちゃん気がついたぁーっ!? よかったぁぁぁ!!」

「おぐっ!?」


 案の定お義姉様でした。おーちゃんはこの事態を予測していたのかお義姉様とぼくの直線上からすっと逃れる。うん、ぼくだってそーする。

 その結果、お義姉様のダイビングタックルがぼくに突き刺さります。うおぉがんばれぼくの腹筋!

 そこまではまだ耐えられましたがお義姉様はすぐさまフロントヘッドロックという名のハグに移行、ふおぉぉ暴力的な感触が!? それはガード不可なのですよ勘弁してください!? 

 あとさっきからなんかピリピリというかパチパチというか……何か微妙な感覚がついて回るのですが。


「お、お義姉様落ち着いて、起きるので一旦はなしてぇ」

「あ、あらごめんなさい。ちょっと慌てちゃってたわね」


 ぼくはお義姉様の背中をタップしながらそう伝え、たゆんホールドから解放される。ひとます上半身を起こしましょう、よっと……ん? なんでしょう、どことなくお義姉様に違和感が……?

 ん!? なんですか今の光は!? ……今、お義姉様から電気みたいなの見えませんでしたか!?

 それによく見れば髪も微妙に重力にケンカ売ってるかのように横に広がってますし、さらに言えば瞳の色が黄色…いや金色!? とにかく色々とおかしいのですよ!?


「おおお義姉様!? 一体なんがどうなんてれう!?」

「落ち着いてネミアちゃん、ちゃんと説明するからっ」


 で、お義姉様とおーちゃんに端的に説明されましたが……サブパイロット登録した時に、お義姉様の精神領域の魔法を司る箇所をいじくり回した結果の副作用らしいとのこと。


 おーちゃんなにやってるの!?


「事情が事情だけに私も怒るに怒れないのよね……いやね、戦闘能力的には全然ありなんだけどちょっと見た目がね?」

「おーちゃん、さすがにこれは色々とまずくないですか?」

「そうは申されますが[Type-M]の有効利用にはなかば必須でしたので。それに深層域には触れませんでしたのでギリギリセーフかと」

「全力でアウトじゃ馬鹿もん、これもう戻しようがない奴じゃろが」

「……ところで、そこの男性はどちらさま? しれっとうちの敷地内にいるけど貴方のような人物通した覚えなんかないわよ?」


 あ、少佐さん紹介しないとめっちゃ不審者扱いなのです。そしておーちゃんしれっとマッサージ再開してないでお義姉様に説明をうにうにうにぃー


 …


「はぁ……貴方もあの機体の関係者なのね?」

「うむ、『元』所有者じゃて。今は完全にネミア嬢に権限を渡しておるがの」

「あーもぅまたお父様に報告しなおしになったわ。従者さん、ネミアちゃんはすぐに動けそう?」

「まだ自力歩行には不安がありますね。ではこうしましょうか」


 おーちゃんはそう言いつつぼくの眼前にある品物を表示する。なるほど、ほい承認っと。


 …


「娘っこよ、そうやって黙って運ばれとるとほんに令嬢に見えおるのぅ」

「ふぅ、うっかり気を抜いたら連れ去りたくなる衝動に負けそうだわ」

「……お義姉様、目がすでに衝動に負けてるのですよ?」

「現在のメティス様にはハンドルをお渡しできかねますね」


 はい、今ぼくは車椅子でコロコロと運ばれお義父様の書斎に移動中なのです。おめめぐるぐる興奮状態な状態のお義姉様をなんとか宥めつつ、館内を運ばれていきますが……さすがはおーちゃん、と褒めたくなる丁寧な車椅子捌きについうとうとしそうに。あぅ、いけないいけない。


「少佐ハンドルをお願いします今のお嬢様のご尊顔を是非記録に残さなければ」

「ンなノンブレスでまくし立てるでないわ、ほれ」

「従者さん、後で私にも見せてくださいな」

「承知」

「娘っこは楽にしとれ、着いたら起こしてやるでの」


 うー、みんなの気遣いが身に染みるのです……少佐さんもおーちゃんと同様になめらかな車椅子操作です。先のマッサージの効果か、睡魔の波状攻撃が苛烈なのです。それではちょっと失礼して。……くぅ




 ーーー ◆ ーーー




「ふむ、詳細は理解できた。できてはいるのだが……実物を見せられるとさすがに圧巻だね?」


 はい、お義父様への説明が口頭だけでは理解しづらいかと思い、ぼくは中庭のベランダ庭園から見える位置に《ウォードレス》を呼び出しました。

 驚いた、とは口にしていますがそれを感じさせないのは為政者としての矜持でしょうか。


「実を言うと以前のリオンからの報告にも巨大な鎧の事は多少ながらあがってきていたんでね。それに加えメティスの報告とこの変化もあったからね」

「あぅ、お義父様それはその」

「ああ、別にネミア君が気に病む必要は皆無だよ。メティス自ら受け入れてるようだし長年のコンプレックスも解し「お父様ぁ!?」だしね?」

「ふぇ?」


 後に説明されましたが、お義姉様は幼少の頃からその強大な魔力量と反比例したのか魔法の才能が開花せず、その事を度々中傷されていたのだとか。

 ……許せませんね、(《ウォードレス》で)蹴散らしますか。


「そんな事よりネミアちゃんの事です! つい先日まではネミアちゃんを早く我が家の人間と周知させようと思っていましたが、今回の件でむしろ隠し通すべきか判断しませんといけませんわ」

「うーん、そこは難しいねぇ。今回の件で我が家がこんな出鱈目な武力を所持してるのを知れ渡ったからね。もしかすると国家が取り込みに来かねないんだよね」

「そこはそれ、お嬢様を害するというのであれば全て粉さ」

「馬鹿もん、無駄に事を荒立てようとするでないわ。……こういうのはな、軽く牽制するか、むしろ懐に飛び込んだ方が打開しやすいでのぅ」

「うん、それに私の方でも既に策は動かしててね。あれはメティスの力の権現として領内に触れ回ってるよ」

「……聞いてませんわよ?」

「うん、今言ったからね」


 あ、お義姉様が頭抱えてます。……それもそうでしょう、まさかいきなりぼくの身代わりにされて領内外に告知されるとか。どうしましょう、やっぱり世間から離れるべきなんでしょうか。


「またそういう顔している。ネミア君はもう少し周囲に甘えていいんだよ?」

「うぅ、でもみんなに……お義姉様に迷惑が」

「大丈夫よネミアちゃん、みんな貴女の味方なんだから気にしないで」

「こういう場面でネガティブに走るのはお嬢様の悪い癖ですね、今更見捨てるような人物はここにはいらっしゃいませんよ」

「うむ、むしろもっとふてぶてしくなるくらいがちょうどいいわぃ」


 みんな優しすぎやしませんか、うぅ……こんなの我慢できるわけないじゃないですか。あぁもういつからぼくはこんな泣き虫になったんでしょう。

 いつの間にかみんながぼくの頭に手を乗せてます。その事に気づいた時にはもうダメでした、ぼくの目からは止めどなく涙があふれわんわんと泣く事しかできず、そのまま泣き疲れて寝入ってしまったのでした。

読了ありがとうございました。


次回は……閑話をちこっと挟みつつ次話の準備をするため間が開くかもしれません。

なるべく早く隔日更新に戻したいなー、とは思っております。

もしよろしければ今後もネミアの物語にお付き合いいただければ幸いです。


それでは。

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