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13 ネミアの痕、メティスの意思

『ヌゥゥ……ヤハリマダコノ姿ニハ魔ガ足リヌゥ……』

「色がついただけでしょうか? どうおーちゃん?」

『いけませんね、理屈は不明ですがマローダーの体表に運動エネルギーを阻害する力場が形成されています』


 ちょっと待っておーちゃん、《ウォードレス》の武装ってどっかの誰かさんの趣味のせいでほぼ物理なんだけど!?


「従者さん、私にもわかるようにお願い」

『物理攻撃……現在の《ウォードレス》の兵装のほぼ九割が通用しません』

「おーちゃん、ちなみに残りの一割って……」

『《ウンディズ》搭載のエネルギー兵装となります』

「うわぁ……めんどくさぁい帰りたい」

『ソノヨウナ物ハモハヤ通用セヌワ……オトナシク我ガ糧トナルコトヲ喜ブガイイ……』


 やだよ、と思わず言いそうになったのは必然だと思うのです。というか微妙に聞き取りづらくなったのですがそれやめてさっきくらいの滑舌で喋ってくれませんかね?

 試しに今持ってたRLで撃ってみる……あ、やっぱり駄目っぽい。表面で威力がほぼ遮断されてる、発生した爆炎からの輻射熱くらい通ってないかな?


『フフハハハハ……今度ハコチラノ番ダナ、我ニ全テヲ捧ゲヨ……!』

「やだよ気持ち悪い」


 あ、つい言ってしまいました。ってうわわさっきの触手がまた伸びてきました回避回避!

 幸い伸びてきた触手部分にはチート(イカサマ)能力はないようですので、両手に実体剣を現出させて触手を刻みながら飛び回りつつ緊急会議です。


「おーちゃんなんか使えそうな武器とかないの!? これじゃ手詰まりでクレジットが勿体ないのです!!」

『重要なのはそこですかお嬢様、しかし現段階ではまだ有効な手段はなきに等しいですね』

「そこでまだ、って言うのは何かあるのね? むしろその表現でさっきからやってた大量の『文字(データ)化した魔法』の入力に合点がいったわ」

『はい、先ほどから進行中の[Type-Mアップデート]がそれにあたります』


 なんと、ここでお義姉様を機体に連れ込んだ事が解決策になろうとは。ところで[Type-Mアップデート]はいつ頃終わるの? そろそろ触手の相手がしんどくなってきたんだけどうわ何か火とか汁吐いてきた!? 避け避け!?


『グフォファファ……チカラノ一端ヲ見セタ程度テ手モ足モ出ヌカ、所詮ハ定命ノ存在ヨ……』

『その定命の存在とやらにフルボッコにされて、顔真っ赤にして本気(マジ)になっちゃった上位存在を僭称する方がいらっしゃるようなのですが』

「字面にすると酷いわね、従者さんあまり煽らないであげて?」

「いつものことなの……ですっ! ふぬりゃ!」

『フム……マダソンナ減ラズ口ヲ叩ク余裕ガアルカ。ナラバホレ、コレモクレテヤロウ』


 何度も押し寄せる触手、それに加え先の魔方陣からの光弾や熱線、さらには目玉から翼や腕が生えた謎生物まで飛んで来る始末。ちょっとこれ大人げなさすぎじゃないでしょうか?

 おーちゃん左ARお願い、せめて謎生物排除していかないと物量に押し潰されそうです。


『承知、ちなみにあと116カウントでアップデート完了です』

「はいです、そことそこ! あとお前も砕けるのです!」

「何もできないのは歯痒いわね……何か出来る事はないのかしら」

『後ほど多忙になるかと思われるのでアップデート後までしばしお寛ぎ下さい』

『ホレドウシタ、モット踊ランカ我ニ歯向カイシ愚カ者ヨ』


 あぁいちいち言い回しが偉そうなのです、っ! ああもう視線が気持ち悪い、こっち見るななのです!


『シカシ汚染ノ通リガ些カ……ホウ、ソウイウコトカ。ナラバコウイウノハドウダ?』

「また目玉が増えた……ってネミアちゃん!?」


 う…このっ……、どの目玉もぼくを凝視してるのです……っ、っぐ気持ち悪いって言って……るのにっ! あぁもう……ギョロギョロ動くな、ぼくをそんな…気色悪い目で……見るな…あぁっ!

 あぁぁぁ……見るな、見るな、嫌だ嫌だ嫌だぁあぁぁぁあ!!




 ーーー ◆ ーーー




「ちょっと従者さんネミアちゃんが!」

『ふむ、まさか旧世代の手法(催眠術)で精神干渉してくるとは思いませんでしたね』


 なんなの急にネミアちゃんが怯え出してうずくまっちゃってるし従者さんは平然としてるし! あぁもうシート邪魔ね!

 私は眼前のシートをひょいと乗り越えうずくまるネミアちゃんを抱きかかえる。……この怯え方、以前街中の広場でもあったわね。


『お嬢様は殿方の視線、とりわけ野卑な意思のこもった視線には過敏ですので』

「以前言ってた心の傷ってこのこと?」

『はい、現在は外部からの視覚情報はカットしておりますが立ち直るまではしばしかかるかと』


 従者さんは淡々と答えるけど本当に大丈夫なの!? 鎧……機体と言った方がいいのかしら、従者さんが操作を変わったのか再び動き出した機体。……うっ、ネミアちゃんの時と違って動きが無茶苦茶すぎて気持ち悪くなりそう。


『ん、これは失礼を。もう少しマイルドな回避を心掛けます』

「助かるわ、これでは慣れる前に伸びてしまうわ」

『現状選択肢はふたつ、お嬢様が復帰されるまで粘るか退避するか、ですか』

「もうひとつ追加よ、[Type-M]ってので私が戦うか、ね」

『……』

「こんな危険な奴ほっとけない……けどそれ以上なねネミアちゃん一人にだけ無理させたくないのよ! 今もこんなになってるのに!」

『……了解しました、準備自体は先ほど完了しておりますので[Type-M]へ移行します。シート両脇の魔力伝達ユニットに手を乗せて下さい』

「……ありがとう。ええと、これでいいかしら」


 まだ震えて丸まっているネミアちゃんを膝上に乗せたまま、シートに深く座り込み両脇に伸びてきた銀の球体へ手を乗せる。HMD内の表示が増えて視界に貼りついてるような見え方になったわね。


『機体制御はこちらで行います、メティス様は隙を見て魔法の発動を。先ほどの入力で言語の圧縮化は済んでおりますので発動用のコマンドワードを呼称して下さい』

「わかったわ、やってちょうだい!」

『《ウォードレス》[Type-M]コンバート、準備開始』


 ……どんな理由があれ、私の家族を害するなら私は全力で立ち向かうわ。従者さん、貴女と私でネミアちゃんを守るために……あいつを倒しましょう!


『……承知。メティス=アイアンをサブパイロットへ正式登録しました』

読了ありがとうございました。次も見てくだされば幸いです。


次回は5/10更新予定です。

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