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04 夢であってほしいと切に願う瞬間

 ……んー、おかしいのです。確か寝入ったのは藁置場のはずなのですが何ですかこの精神にガツンときそうな七色空間は。


『幾日かぶりだのう、娘っこや』


「あれ、ヒトトカゲさん?」


『誰がヒトトカゲじゃ誰が、ってこのくだりは前もやったの』


「だって名前知りませんので」


『そういえばそうだったのぅ、まぁそれはいいとして……』


「いいんだ……そーいえば上書きがどうの、って言ってたけど結局どうなったのですか?」


 うん、《引き継ぎ》によればヒトトカゲさんの精神領域部分にぼくの精神が上書きされて今の状態になってるはず。なのに何でヒトトカゲさんいるのでしょうか?


『それはあれじゃ、なんというか……うん、娘っこの使用領域が思った以上に小さくての、空き領域でだいたい収まってしもうたのじゃ。故に儂の精神領域がほぼ残ってしもうたのじゃよ』


「……ぼく外見だけじゃなく中身まで軽いのですか」


 ヒトトカゲさんに明かされた事実に、ぼくはさらなるダメージを受ける。失意の獣ヨーツンヴァインの構え、再び。


『ありゃりゃしもた、なんか勝手に凹んでしてしもうた…… (ホントは違うんじゃが)


 …


『で、そろそろいいかの?』


「はいです、なんとか。でも何で今まで出てこなかったのです?」


『そこはそれ、まだ娘っこの領域再構築が最優先じゃったからの、邪魔せんように端っこに寄ってたのじゃよ。ついでに儂の方も不要データの整理しとったのじゃが……』


「じゃが?」


『どうも儂が残っておるせいか、色々と不具合が見つかっての。それの修復や改善も平行して行っておったのじゃ』


「……ちなみにどんな不具合ですか?」


『例に上げると、パーソナルデータの一部アップデート障害……平たく言うと今の体が一切成長せ』


「んがあぁぁ!! それ早く直すのです今すぐ可及的速やかにぃ!!!」


『落ち着けぃ娘っこ、すでに終わっておるから安心せい。とはいえ……』


「とはいえ?」


『DNAデータを参照するに、成長の目はなきに等しいのじゃがな』


「……そん……なぁ……」ぱた


『あ、しもた。ついまたポロリしてしもうたわ。……仕方あるまい、続きはまたの機会に、というやつかの。娘っこよ、儂はここでひっそりと見守っておるでの~』


 ………


 ……


 …




 ーーー ◆ ーーー




「……う、……うわぁぁぁん!?」

「あらお嬢様、お早いお目覚めですね」

「あんまりだょぅ……ってあれ、おーちゃんがいる。……ヒトトカゲさんどっか行った?」

「ヒトトカゲさん? ああ、前任者の事ですか? 彼ならもう上書き処理され……てないのですか。あまつさえお嬢様の中に居座るとは……許せませんね」

「うん、ぼくも思うところはあるけどひとまず待って?」

 

 しかしあのヒトトカゲさん、わざとポロリしてないですかね? 全力でぼく(の心)を折りに来てるようにしか思えません。

 その悪魔の所行には是非仕返しせねば、次回までにDNAなんとかしてなかったらウロコはぎ取りの刑なのです。(無茶言わんでくれ)

 ん、なんか聞こえた気がしますがまぁいいや。

 ところでここは……寝具? ぼく藁に突っ込んでたはずなんですが。おーちゃんに聞いてみましょう。


「やけにフカフカな寝具……ベッド? なのですがここは?」

「お嬢様に割り振られている部屋ですね。私がお姫様の如く運んでおきました。お嬢様の寝顔をばっちり至近距離で保存できるいい機会でしたので」


 あう、なに恥ずかしい事してるのですかおーちゃん。ってまさかヨダレとかたれてなかったですよね?

 しかし妙に落ち着かないのですよ。あまりにもふかふかしすぎてて不安になるのですが。


「……なんか価値を考えると逆に落ち着かなくなるのです、これ使って寝れるかちょっと心配?」

「それでしたら就寝時だけでも《ウォードレス》内でお休みになりますか? エナジー充填にもなりますし」

「うーん、夜に横になってダメだったらそうするのです」

「承知しました。それでは……」


 そんなふうにおーちゃんと話していたら扉から、コンコン、と小さくノック音が。はーい


「どうぞお入り下さい」

「……失礼します」

「あ、リーン(覗き魔)さん」

「誰ですかリーンさんて、というか響きになんか不名誉な雰囲気がするんですが……」

「お気になさらず、だいたい物語冒頭で殺人現場を覗き見て真っ先に殺されそうな使用人のシァルさん」

「なんですかその具体的な死に様は!? というか覗き前提!?」

「第一印象って大事なのです」

「お嬢様、それお嬢様にもブーメランですからね?」

「あ゛」


 …


「それでは失礼致します、入浴が終わりましたらベランダ庭園にお越しください」

「はいです」


 どうやらシァルさんはお風呂の支度ができたのを知らせるためにきたようです、そのせいでめっちゃいじられる羽目になってますが。

 ともあれ、広間に呼ばれてますので水洗いは早々に切り上げて向かうとしましょう。……ん?


「ねえおーちゃん、今入浴って言ってましたよね」

「はい、しっかり『入浴』と申しておりましたよ」

「ぼくの気が確かなら『入浴』ってお湯で体を洗うんですよね?」

「そうですが……なるほど、これは洗い甲斐がありそうですね」


 ねぇおーちゃん、腕まくりはまだわかるんだけどその指の動きやめない! 無駄に不安だけが増すんだけど!? ちょっとぉ!?

読了ありがとうございました。次も見てくだされば幸いです。

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