12 つよくてにゅうげいむ?
はい、ふぁんたじぃな世界観ぶち壊しなガチロボで問題の山脈が一望できる上空からお送りしております。
間もなく問題の地域に到着いたしますが、すでに何匹かが飛び上がってきていますね。
『操作説明は必要ですか?』
「……なんかどっかのシミュレーターみたいなんだけど」
『気のせいでしょう、それではチュートリアルを開始します』
「やっぱそのテのノリじゃないですか!?」
『右スティックを外側に倒すと右に移動し「思念操作だよ! スティックなんてないよ!?」』
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さて、唐突ですがここでウォードレスの機体スペック等をご紹介しましょう。ででん
全体高12mの機体重量25t。人型のずんぐりむっくりな重装鎧、頭部がフルフェイスメットに横一線のラインモニターアイが特徴的でカラーリングは青を基調に所々に赤や黄の配色となっております。
動力は従来型のリアクターと異なり、「搭乗者の生命エナジー」を変換、蓄積するといった通称「キューブ」と呼ばれているものを搭載。ぶっちゃけ使えてこそいますが原理はさっぱりです。
ウォードレスの元になってる『ファッションドール』シリーズは基部フレーム以外は割と自由に換装できるのがウリとのことなので、フルプレート騎士から棒人間みたいなデザインまで千差万別です。ワンオフ機のこれがどこまでいじれるかは不明ですが。
武装は主だったものは異空間格納庫から随時取り出して使う仕様なのですが、やたらと実弾に偏ってるのは前任者のこだわりでしょうか。
『さて、敵性生物をドレイクと呼称します。対象が間もなく戦闘空域に入りますので照準・射撃操作の練習を開始いたしましょう』
「はいです、今の装備はっと……」
一覧を改めて見るとちょっと引くくらい実体弾兵装だらけ。突撃用バトルライフルから始まり重機関砲にマガジン式ロングライフル、近接防衛用の指向性フロートマイン、機体追随型ロケットランチャーやら果ては広範囲殲滅用ミサイルコンテナなんてものまで。
他にもあれこれとありましたがここでは割愛、まずは試しとロングライフルを取り出します。空間に波紋のようなモノが拡がり、そこからにょきっとライフルが姿を現しました。それを掴み構え、
『基本的に照準対象の選択、発砲タイミングはお嬢様の意思で行えます。エイミングや着弾補正、誘導型兵装の追尾管理等はわたくしにお任せください』
まずは一番狙いやすそうな一体に照準、視界に投影されたAR表示にロックオンマーカーが追加されました。ぴぴっと
『一般的な攻撃手段は思念操作となりますので特殊な操作は不要です。例外として一部の兵装や攻撃手段は音声入力、またはトリガースイッチが必要になります』
「それじゃあさっそく…(発射)」
マーカーのついたドレイクへ攻撃の意思を念じると、機体は砲身だけを動かし砲撃。飛び出した砲弾は狙い違わずドレイクにヒット、胴撃ちだったのにも関わらず一撃だった模様。
『では次は狙撃モード、対象の狙いたい場所を思い浮かべてから攻撃してください』
そう言われたら当然狙うのは頭だよねぇ。新たにマーカーのついたドレイクをじっと見ると別窓が開いて拡大された標的が見える。そいつの頭を狙って…(撃て)
『良好です。慣れて来ればもっと素早く動作できるようになるでしょう』
あわれ首無しトカゲと化した対象を見送りつつ周囲を確認する。それを見たからか、緊急時なのが群れに伝わったのか次々と飛び上がって来るドレイクたち。
『次はマルチロックについて説明します。武装を機体追随型の空対空ミサイルランチャーに変更します』
そういうとライフルはすっと消え、代わりに肩の後ろ辺りに一対の四角いミサイルランチャーが姿を表す。
『微誘導式なのでただ撃つのでは当たってはいただけないでしょう。視界に有効範囲が表示されますので適当にそちらの枠の中にドレイクを入れて攻撃してください』
またアバウトな、と思わなくもないがとりあえず実行。ロック範囲を示すボックスカーソルを確認、視界内のドレイクをおさめるようにし発射。
ぱしゅぱしゅぱしゅ、とちょっと拍子抜けしそうな音と共にランチャーから次々と発射される弾頭。くねくねと弾道が蛇行しながらもドレイクたちへと飛翔、目標に到達した弾頭から順に炸裂し破壊と暴力が巻き起こる。
望まぬギフトを押し付けられたドレイクたちは力無く地表へと逆戻りしていきました。合掌
『お見事。今ので戦闘空域内のドレイクは15から5に減少』
一斉射18で撃破10か、相手も高速飛翔体だしこんなもんかな?
『多少カンのいい個体がいるようですが許容範囲内かと。ではリロードして再攻撃と参りましょう、お嬢様、リロードと念じて見てください』
おそらくリロードも……うん出来た。でも視界端のクレジット表示がびみょーに減ったような……
『多くの弾薬系のリロードにはクレジットが使われます。といってもほとんどの弾薬は微々たる消費なので問題ないかと』
……ん? 弾薬もクレジットで買うのか……これは無駄撃ち厳禁なのです! というか《引き継ぎ》されたのに妙に知らないこと多過ぎないでしょうか?
『クレジットの詳細に関しては後ほどご説明します。知識の偏りについては意図的にロックがかけられている疑いがあります。おそらく特定の環境下、または必要に迫られた場合にアンロックされる等の条件が設定されているかと思われます』
なにそのめんどくさい仕様!? はじめっからオープンにしてくれたっていいじゃん!! やったのあのヒトトカゲさんか!?
……ええぃドレイクじゃま! 考え事してるんだから火とか飛ばしてくんな!! 回避っ!!
『検索……確認……、いえ、これは機体設定から紐づけされています。機体作成者か…、…の割り…ザッ…お…様…』
えっ、おーちゃんちょっとどうしたの!
『ハァイ新人さんこんにちは、この映像が流れてるって事は適合率10%未満で戦闘してるって事よね。私はこの機体とサポートAIの製作者オウガ・スドウよ』
なんかいきなりおーちゃんを押しのけて映像が割り込んできた! って製作者って……ごめんおーちゃん、こっちに集中したいからできるならちょっと操縦任せた。
『いろいろ聞きたいだろうけど忙しそうだから要点だけ。今あなたに装着されている逆鱗との適合率が低いせいで機能の大半がロックされてる状態よ。詳しくはヘルプをアンロックするから無事生き残れたら確認してね』
っちょなんですかそれ、そんないらん機能つけないで下さいよ誰が得するんですか。
……割り込んできた映像の向こうではおーちゃんが実体剣を抜きはなって近接戦闘を開始しているのが見えています。うわぁさっくさくです。
『録画映像なんでクレームはカンベンね。適合率が低いうちに多重武装一斉射や質量残留式連携格闘みたいな迂闊に使うと精神が焼き切れる可能性があるのがぼちぼち乗っかってるから仕方ないのよ』
こわっ、そんなら先にマニュアルみたいなの……ってあっこれか。まあ見る暇もなく始まったしアンロックされたの今だから仕方ないよねっ、てへ
『そーいう訳だからさっさと適合率上げてね、むしろその前に死なないでね? んじゃ映像終わりー』
『……っ、やっとお嬢様との通話リンクが回復しました。なんという非常識な存在ですかアレは』
……おーちゃんもどっこいどっこいだと思うよ? っと操縦がもどってきた。残ってたドレイクはおーちゃんが全部斬り捨てたのか、周囲に飛んでるドレイクはいなくなっていた。




