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11 巻き込まれ属性もガン積みです

「ところでだ潔癖子息さんや、ちょうどいい機会なんでな。あんたにゃ言いたいことがたらふくあるんだわ」

「な、なんだねウルフ君」


 やっと渋面から解放されたリオン氏の元へ、ガイさんがすこぶる機嫌の悪そうな顔で近寄っていきます。狼なのに表情が一目わかるとか表情筋どうなってるのでしょうか?

 そしてリオン氏まだ完全に割り切れてないのか、微妙に及び腰なんだけど。


「アンタがあちこちでやらかしてる害獣退治のせいで向こうの山脈がヤバい事になってんだがそのこと知ってんのか?」

「なんっ!? どういうことだ!」

「あんたがやってたのは退治ってぇ名前の生態系破壊なんだよ。今まではある程度強い獣がそれなり、強い獣が少々、俺みたいな頂点が数匹いたからバランスが取れてたんだがな、アンタがそれなりの層を根こそぎ駆逐しちまったせいで下層の被補食層が増えすぎた。ここまではいいか?」

「う、うむ……だが被補食層ならば我々の糧にもなる、増えた分は取ればいいではないか」

「それはあんたらだけの勘定だろうが。あの山の向こうでも生存競争はやってんだぜ?」

「あの山の向こう? 確かにあちら側の生物たちは一筋縄ではいかない奴らだが、それがどうしたのだ?」

「推測するにあちらで生存競争から脱落した生物がこちら側に逃げ込んだか住み着いた、といったところでしょうか?」

「はい従者さん正解、今あの山はファイアドレイクがわんさか居座ってるぜ」

「な、なんだと!?」


 リオン氏が慌てるのも当然である。ファイアドレイクって言えばプレデターウルフと同様に危険指定害獣となっている。群れるしでかいし火を噴くしと迷惑な要素は数あれど、一番の問題は『すぐ増える』事に尽きるのです。

 こいつらある程度の栄養をその身に貯め込むとすぐに繁殖行動を起こすという習性を持っている。食ってすぐサカるとかまさに畜生なのだ。


「以前確認した時にゃまだ山の裏側に60かそこらが住んでる程度だったんだが、その時点でももう俺じゃ手が出せなかったね。さすがに二桁同時にアレ相手になんかしたら間違いなく死んじまうわ」

「……!!そんな馬鹿な……、山向こうはドレイクたちが勝手に増減してたし何より……」

「ああ、あちらさんな、主が入れ代わったんだわ。ドレイクを食わねぇ奴に。なんでも捕食対象が被ったからか大戦争やらかしたみたいでよ。んで結果がさっきの従者さんの言った内容だな」


 あ、リオン氏が崩れ落ちた。まあそりゃあ近いうちに国軍総動員レベルの大惨事が確約された訳だし。

 ……現状リオン氏が打てる手はこの情報を領主様通じて国に報告するくらいしかない。

 しかもその間奴らはガンガン増える。十中八九迎撃体制が整う前に山向こうから人肉パーティー開催の通知が来ることでしょう。

 コレすでにどうしようもなくない? こうなると周辺のエサが尽きるまで近隣の町や村を放棄させるくらいしか手がないのです。

 あいつらなんでかエサがないと動かなくなって一定数まで勝手に餓死したり共食いするから。


「本来なら町の代官辺り乗っけて惨状見させるつもりだったんだがある意味ラッキーだった。お嬢らがいて助かったぜ」

「しかしこれどうするんですか、完全に手詰まりなのですよ?」


 ぼくはそうはっきりと言ってしまった。それを聞いたリオン氏は、許容量オーバーしたのか病弱な令嬢の如く羽根のようにくたっ、と地面に横になった。

 それを見たガイさんが耳元で「 (もうだめだぁ) (おしまいだぁ)……」とかつぶやいてますね。リオン氏がビクンビクンしてますけど大丈夫なのでしょうか。


(あ、でもこの流れって……)


「正解ですお嬢様、正解者に拍手~」


 あぁもぅまた漏れてるし! くっそ考えるんじゃなかったです!?




ーーー ◆ ーーー




『オイコラ聞いてねーよ巨大ロボとかありかよチート主人公サマよー』

「言ってませんし、あとチート(イカサマ)言わないで下さいです」

『とはいえほぼ事実ですから』


 亜空間ハンガーに格納していた《ウォードレス》を展開、周囲があぜんとしているうちにぼくとおーちゃんはさっと乗り込む。まぁおーちゃんはガードロイドから本体(ウォードレス)に戻っただけですが。

 外からはいち早く立ち直ったガイさんのからかうような冷やかすような、そんな一言が聞こえてきますがぼくはしれっと返す。そしておーちゃんそこは否定してよう。


「チートって言えばガイさんもさっきなんか使ってたけどそれは」

『あーあー聞こえなーい』

『双方似たり寄ったりというものですね』


 そこのおーちゃん、自分だけ外そうとしない。ぶっちぎりで1番チート(イカサマ)くさい存在でしょうに。


『さてそれではお嬢様のうれし恥ずかし初体験パート2、はりきってイってみましょう』

『露骨な話題そらし乙』

「……あからさますぎて突っ込む気にすらならないのです」

『なんと、殿方はお気に召さないと?』

「はい出発ー」

『従者さんや、そろそろアウト判定入るぜ?』


 ……出かける前から味方のせい(フレンドリーファイア)で精神的疲労がヒドイ事になっているのは気のせいなのでしょうか。

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