表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/47

031_結婚式に出るといいなって思う

※※※




「では、このままお外に」


 ひとしきり感動してもらったところで、エリザベスが二人を次の行動に促す。

 来たときと同じように手を取り合って、礼拝堂の出口へ向かう。

 身廊の中央、いわゆるバージンロードを歩く二人の後ろから、そっとエリザベスもついて行く。


 長いベールがどこかに引っかかってしまわないように、汚れてしまわないように、端をそっと掴むと、マートに渡す。

 バージンロードは二人だけのもので、許されるのは子供だけ。

 だから、あくまでもエリザベスはそっと二人の後を見守る。


「どうぞ、はなよめさん」


 扉の前まで来ると、今度はフェルシーがブーケを手渡した。

 そして、ヒルデとルシンダが左右から礼拝堂の扉を開ける。

 すぐに外から「わああっ!」という祝福の声が聞こえた。


「わぁ、こんなにたくさん……」


 ロゼッタが見たのは、二人を祝福する村人達だった。

 村パックプランではないけれど、リニューアル後の初めての駆け落ち婚ということで、知り合いの村の人に応援を頼んでいたのだけれど……。

 こんなにたくさん来てくれるなんて思わなかった。

 頼んだ村人がさらに他の人も誘ってくれたらしい。


「ありがとー、ありがとうございます!」


 左右から「おめでとう!」と言われ、ロゼッタとコラードが笑顔で答える。

 そして、二人に六色の雨が降り注いだ。


 フラワーシャワーの代用は、保管のできる大麦で、いわゆるライスシャワー。

 天然の着色料でコーティングしてある。

 クチナシの実とベニバナの華やかな色味、緑のアオサ色は塩味に、飴色は焦がしたほろ苦い砂糖のカラメル、レモン汁の白いアイシングと、プレーンの合計六色。


 投げてしまうのに、味がついているのは……。


「みてみて、リスや鳥もきてくれたー! 小さな証人、カワイイ~」


 ――――はい、本日二度目のカワイイいただきました。


 ロゼッタが見つけて、きゃっきゃっと喜ぶ。

 地面に落ちた大麦を、動物たちが食べに集まるというわけ。

 しかも掃除をする必要がなくなって、一石三鳥。

 あとは――――。


「ロゼッタ姫、次の花嫁にブーケをお願いします!」

「はーい!」


 一通り、祝福する村人達の列を過ぎたところで、エリザベスが声をかける。

 女性達がいるあの辺りに、と指で示すと、ロゼッタが頷く。

 彼女は後ろを向くと、ブーケを空高く投げた。


 ――――現代、日本から逆輸入の幸せのおすそ分けは、予定どおり。


 祝福の輪の一部にいる女性に向けて、投げてもらったはずだったけれど……。


「えっ!?」


 誰が取るのか、わくわくしながら見ていたエリザベスの手に、いきなり何かがばさっと落ちてきた。

 びっくりして思わず目をつぶる。


 ――――な、なに!?


 恐る恐る瞼を開けると、そこには一纏めにされた花束が。


 ――――えっ! ブーケ!? どうして?


 投げるように指示したのは、エリザベスがいるのとはまるで別の方向。

 ロゼッタを見ると、てへっと笑った。


「エリザベスにあげたかったの。今までごめんなさい、今日はありがとう」

「う、うん……?」


 エリザベスは苦笑いするしかなかった。

 最後の最後で、逆にこんなサプライズをされるなんて。


 ――――本当、どこまでもヒロインだなー。


 やっぱり、ロゼッタには敵わない。


「ロゼッタ姫、お幸せに。ううん、今の時点でとっても幸せそうです」

「エリザベスもぜったい、幸せ掴んでね。応援してる」


 軽く抱き合うと、見ていた周りの村人達から「わああっ」と歓声が上がった。




※※※




 礼拝堂の屋根裏部屋で、レオニードは結婚式の様子を見守っていた。


「……終わったのか?」


 外から出てきたロゼッタとコラードが、村人達に祝福されている。

 今日の宿へ向かうのだろう、馬車が待機しているので、それに乗り込めば、式は終わりだろう。

 しかし、なかなか二人は馬車へと向かわない。


「何をしているんだ? まだ何かあるのか?」


 焦れているのは、やはり距離があるからだった。

 何かあればすぐに駆けつけるが、たとえばロゼッタがナイフでエリザベスを刺そうとすれば、間に合わない。


 ただ、エリザベスの表情には、緊張が見られなかった。

 とても嬉しそうだし、優しそうな笑顔で、美しい。

 自分へと向けられたものでないのが、残念でならない。


 ――――な、なにを思っている。


 レオニードは、戒めに自分の胸をごふっと叩いた。

 少し力が入りすぎたが、どうということはない。


「んっ?」


 現場に変化があって、レオニードは再び神経を集中させた。

 ロゼッタが皆へ不自然に後ろを向く。


 ――――あの女、何かする! エリザベス!


 ガタッと立ち上がり、駆けつけようとしたけれど、遅かった。

 ロゼッタが後ろを向いて投げたものは、エリザベスの手へまっすぐに落ちた。


 ――――毒か? 散布型の睡眠薬か? いずれにしろ、まずい!


 しかし、次にレオニードの視界に入ったエリザベスの表情に、足を止めた。

 照れていて、とても嬉しそうで、幸せそうだ。


「――――」


 エリザベスはたしかにシスター服を着ているのに、ブーケを持つ彼女がウェディングドレス姿に見えた。

 ごしごしと目を擦る。


「……っ! 錯覚か……俺はな、何を勘違いして」


 激しく動揺した。

 エリザベスのウェディングドレス姿を見たからだった。

 まるでそれは自分の願望のようだった。


「それは……いくら何でもまだ早いぞっ!」


 今度は全力で自らの頬をグーで殴って、気合いを入れた。

 想像して頬が赤くなったのを隠すためでは、決してない。


「団長、なにやってんの? 新しい遊び?」


 声がしてハッとすると、屋根裏部屋の入り口にトニの姿があった。

 いつも一緒のマートとフェルシーもいる。

 どうやら動揺するあまり、気づかなかったらしい。


 ――――不覚……だ。

「少し鍛えていただけだ……」


 言い訳を口にすると、子供達は首を傾げたけれど、すぐに手に持っていた皿を思い出して、レオニードに差し出してきた。


「騎士様~、シスターエリザベスが、ちょっと焦げたけどこれ食べてって。遅れてごめんなさいって」

「なんでも、失敗作はスタッフがおいしくんだって~」


 マートからパイの皿を、トニから水筒を受け取る。


「うわぁ、ここよく見えるぜ」


 そのまま、戻ると思っていた子供達は、なぜかレオニードの横に来て、窓から式の様子を見た。

 背の低い子供には、主役達が大人達に囲まれてしまうと、よく見えないのだろう。


「おひめさま、きれいだね」

「…………」


 フェルシーが同意を求めてきたけれど、レオニードは答えなかった。

 ロゼッタについては、その挙動には気をつけていたが容姿や服装についてはまったく見ていない。

 そもそも見ても何とも思わない。


「レオさま知ってる? あのブーケ、次にもらったらはなよめになるんだって」

「……なんだと?」


 フェルシーの言葉にくわっと目を見開く。

 つまりは次に結婚式を挙げるのは、エリザベスということだ。


 ――――相手は誰だ! んっ?


 一瞬、また邪念が生まれ、レオニードは首を振った。


「ばっか! 神父さまは、きこんでもいいけど、シスターはかみさまとけっこんするから、けっこんできないんだぞ」

「なっ!?」


 トニの言葉で、レオニードはさらなる衝撃を受けた。


「かみさまって、めがみさまのことでしょ? めがみさまって、おとこだったの? シスターはおんなのひととけっこんできるの?」

「いわれてみれば……そうだよなぁ。じゃあ、シスターでもけっこんできるのか?」


 フェルシーの指摘に、トニだけでなく、レオニードも一緒に首を傾げた。


 ――――どっちか、はっきりしてくれ!


「ぼくしってるよ。シスターみならいは、いいんだよ。としごろまであずかってる、れいじょうはいいんだって」

「そっか、そうだよな! マートものしりー」


 うんうんと、レオニードはトニと一緒になって頷いた。

 どうやら、エリザベスは結婚できるということで落ち着いたようだ。

 ほっとして外を見ると、いつの間にか式は終わっていた。




※※※




 翌日――――。


 エリザベスは、他のシスター達とロゼッタとコラードを見送っていた。

 伯爵邸に宿泊し、朝、用意された馬車でまた別の土地へ去って行く。

 結婚しても、駆け落ちは継続中だ。


「じゃあ、元気でね、みんな!」

「ロゼッタ姫も」


 窓越しに短い挨拶を交わすと、馬車が走り出す。


「困ったことがあったら、また来てくださいねー!」

「ありがと――――!」


 追っ手の影もなく、無事に結婚証明書も手に入れたロゼッタ姫とコラード王子は、幸せが満載の馬車で去って行った。


 エンド後の未来はわからない。

 だって、二人にとって結婚式や暁の告白は終わりではないから。

 そこからも物語は続く。

 ただ、今ある二人の幸せな光景は本物だ。

 願わくば、ずっとそうであってほしい。


 ――――さて、次のカップルのために今回のことで気づいた改善案を……。


「そのまえに……レオニード、もう出てきてもいいですよ」


 馬車が見えなくなったのを見計らって、エリザベスは大きな声を出す。

 どこにいるかはわからないけれど、彼が見守ってくれているのはわかっていた。


「…………」


 案の定、ぬっと木の陰からレオニードが出てくる。


「んっ? たまたまクリストハルトに用があって、通りかかっただけだ」


 そう言い訳するも、伯爵邸に入っていこうとはしない。


 ――――まったく、素直なんだか、頑固なんだか……。


「行ったか?」

「はい、幸せをふりまいて。羨ましい限りです」


 馬車が見えなくなった方を見るエリザベスの隣に、レオニードが並ぶ。


「お、お前も……」

「……?」

「なんでもない! 村まで見回りに行ってくる!」

「い、いってらっしゃい」


 ずかずかと大股でレオニードが離れていく。

 彼が何を言おうとしたのか、なぜかとても気になってきた。


「あっ! 私も村に用事があったので一緒に行きます」


 歩く速度を緩めてくれたレオニードに追いつくと、エリザベスは隣を歩き始めた。


★2021/4/2 新作の投稿を開始しました。よろしければこちらもお読みください。


【悪役令嬢に転生失敗して勝ちヒロインになってしまいました ~悪役令嬢の兄との家族エンドを諦めて恋人エンドを目指します~】

https://ncode.syosetu.com/n7332gw/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ