200n+7年、成人の日
200n+7年1月8日、大学が冬季連休と言うこともあり、僕は故郷に帰ってきた。
お袋との適当な会話も済ませ、明日の成人式に、今日の旧友との飲み会に備え、事前準備作業に没頭していた。
「ったく、陽当たりの悪い部屋だからって、こうも物置がわりに使われると、悲しいもんだな。」
東北の大学に進学してからメインユーザーのおらぬ部屋は倉庫になっていた。
高校三年の時のまま、時を刻むのを止めた、薄黄色のカレンダーの下にある、キャビネットを開き、中にあるバインダーを探す。
バインダーは年度単位で保管されているため、必要としている、200n年は直ぐに見つかった。
「『直ぐに出てこないのは無いのと同じ。整理整頓と放り込むのは違う』親父あんたの言う通りだよ。当時はよくわからんかったが、感謝しまーす。できればもっと話がしたかったけどね。」そう、一人ごちて死んだ親父に感謝した。
親父は200n-1年に心臓関係の病気で急死した。お袋が薬剤師で手に職があったため、何とか大学まで行けている。
伊藤家は《手に職》という概念を、盲信とも呼べる程、重きを置いている。
なので、その年代には相応しくない特技を身に付けさせられた。
小六で簿記とは、今思い出しても、頭がおかしいと思いながら、バインダーの中にある、縦82mm、横140mmのリフィルの1ページ目を眺める。
「伊藤善友、得意教科:算数、社会 苦手教科:理科、体育 特技:簿記」
これはこれはご丁寧にどうもと七年前の自分に挨拶する。
部活をやりバイトもし、様々な世界と触れ合っている今、昔を思うと可愛いことで悩んでいたなと思うが、
当時はあれが世界のすべてだった。その中で二人の友人と供に、何とかしのぎきった、自分にとっての《神話》をページをめくりながら思い出していた。




